第37話 精霊のお祭りに参加しよう!
-side オーウェン-
お祭り当日。風の精霊による美しい舞踏で、パーティが開始された。空気が澄んでいて、夜空の星々がキラキラと光っている。
シルフによると、最初の踊りは風の舞踏と呼ばれる伝統的な踊りらしい。精霊の存在が風と共鳴し、優雅な舞踏を通じて風の力を表現する踊りだそうだ。
風の舞踏を行っている最中に、ウィンドガイドとシルフによる空中アクロバットも披露された。シルフは飛行能力を持つから空中でのアクロバットが得意らしい。とても華やかで、アーティスティックなパフォーマンスが行われていた。
風の精霊が踊りを楽しんでもらうために、楽しそうに、一生懸命歌っている歌や踊りは風の力と共鳴するらしい。なんでも、風の領域の調子を整える効果があるのだとか。
それから、風の魔法を競い合う競技や競争が行われた。華やかさや美しさを競う芸術面でのコンテストだ。
一通りイベントが終わった後は、食事が振舞われた。
「美味しい!」
新鮮なお肉やお野菜をその場で焼いてもらって食べる。贅沢な時間だ。風の精霊なだけあって、お祭りの料理に風の要素を取り入れているようだ。風の力によって、蓋を開けると風が出てくる料理や料理がふわりと舞い上がる演出をしていた。映える。
『そろそろだぜ!』『よろしくですわ〜!』
食べ終わり、ゆっくりしていたところで、シルフの部下に声をかけられた。
そろそろ出番なようだ。
俺はヴァイオリンを弾く準備をしながら辺りを見回す。
本体に肩当てを、取り付ける。
弓のネジを回し、ちょうど良い張りに。
チューニングをする。
いつも通りのルーティンをこなしたところで、冷静になってくる。これだけの大人数の前で、ヴァイオリンを弾くのはいつ以来だろうか?最後に弾いたのはコンクール前で、限界まで追い込んでいた記憶がある。少なくとも、純粋に楽しんで弾くようなヴァイオリンではなかった。
結果を気にしなくても良い完璧を求めなくても良いヴァイオリン。そう思うと自然と、肩の力が抜けて、リラックスした気持ちになる。それから、周りが徐々に静まってきたところで、ゆっくりと演奏を始めた。
〜♪〜♪
俺が弾き始めたのは「愛の挨拶」という名曲である。世の中色々な愛があるが、俺がここで弾くのは友愛、家族愛的な意味だ。
シルフと精霊達の絆をイメージした。
あとは、シルフ達が暖かい空間へ帰って来れたという事を祝って……!
『わあーーー!』
『本物だーー!』
『すごいー!』
俺が楽しく弾いていると、あたりが騒がしくなる。演奏に集中して、閉じていた目を開くと、あたりにさっきまでなかったお花畑が広がっていた。
精霊達が発光しているのが、月の光と合間って幻想的な空間を演出している。
土地がさっきよりも力を取り戻しているのは一目瞭然だ。ここ数日、ヴァイオリンを練習していたと言うこともあり、最初の頃と比べるともはや別の空間に変化しつつある。
「綺麗さねえ」
「はい、この世の空間とは思えません……。良かったです……!」
エリーゼさんとロンさんは、領域全体を見て、感動している。
『あいつ……、やっぱりとんでもねえな』
『疑ってませんでしたが、まさかこれほどまでとは思いませんでした』
『ぶっ飛んでいますわ〜!』
『ふふっ!僕も認識を改めるべきだね。あれは、将来きっとすごい人物になるよ!』
そんな事をシルフが言っているのが、聞こえたところで、演奏が終えたのだった。
達成感とみんなとわいわい騒いでいるうちに時間は過ぎていった。人間である俺たちにとっては一生に一度経験出来ない確率の方が高い、貴重すぎる体験だったと思う。
この時の俺は未知の国へ来れた事で、
浮かれていた。だからその間、俺たちの事を眺めているシルフ達がどんな表情をしていたかは分からなかったんだ。
『良かったですわね……』
『そうだな!最高の1日だった……』
『ああ……。はあ……。あとは、ここに、君がいてくれたらな……、エアリス』
『シルフ様……』
『シルフ様……。あ?待て。もしかしてだが、主人ならあの条件を満たしていんじゃねえか!?』
『『……!?』』
『だったら、あの魔物退治もいけそうだ。』
『確かに、だったらあの杖も力を取り戻せそう!』
『そうなったら、あそこに屋敷を拠点に聖域を拡大させる事が出来ますわ〜!』
『お〜!これは、今のうちから色々作戦立てないとな!』
当然、まさかシルフ達があんな悩みを抱えている事も、勝手に色々な話を進められているなんて事も何も考えてなかった。
いやでも、これ、俺が悪いのか?歓迎会の隠している精霊の事情を察しろは、ハードモードすぎないか?無罪を主張させて頂こう。
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