第18話 魔道具は作れる
-side オーウェン-
1日目が終わった後、俺たちはご飯を作ろうとしていた。
先に、トムとレムがテントを張っていてくれたようなので、そこに入る。
テントとしては普通だが、3人がまあゆったり寝れるくらいのスペースしかない。
俺はこちらに来る時の荷物に実家で使っているテントを入れる事ができなかったからな。空間魔法がかかっている贅沢なテントの魔道具はリオンシュタットの家にはなかったみたいだ。
「まあ、なきゃないで作ればいいだけだ。[空間拡張]!」
俺がそう唱えるとテント内の空間が拡張され、屋敷で使う大部屋くらいの、大きさになる。そもそも、王都でも売れに売れた、空間拡張機能がついた贅沢な魔道具の発明者は俺なのだ。これくらい造作もない。
追放される前、俺は様々な魔道具を作り、財政面で実家に貢献をしていた。うちの領地は資源が豊富ではあったから、豊かだったが長期的にみると、いずれは無くなるだろうという事が明白だった。だから、収益源を多角化する必要があったのだ。
そこで、白羽の矢が立ったのが俺が当時学園の研究室で、研究していた魔道具製作だった。自画自賛ではないが、当時、売り物レベルで使える魔道具をたくさん製作していたから、特許を一部、実家に売ったのだ。
……まあ、売ったのは一部だけで充分だったので、大半はいまだに自分で持っている。親友であるユリウスがそこら辺のことを上手いこと処理してくれているので、しばらくしたら、俺のギルドカードに大量の収入がまた毎月入ってくるはずだ。
「わっ!な、なんですか!この空間!」
「レム。戻ったか。これは俺が空間拡張を行ったんだ。狭かったからな」
「空間拡張!?あの伝説の?」
「伝説……?いや、概念が難しいだけでイメージさえできれば、普通にみんな使えると思うが?」
『主人……ただの人間がそんな高度な魔法使えるわけがないだろ。どんな環境にいたの?まったく……』
さっきから、俺が魔法を使っていた最中も、難しい顔をして、黙っていたシルフがようやく口を開いた。
「環境……、別に普通だけど……、うちの研究室員も魔道具製作してくれる取引先の人もみんな使えたし……」
『主人、それ、まさかとは思うが、全員主人の弟子だったりしないか?』
「弟子を取った覚えはないが……、いや、ああ……、そういえば、魔法を教えて欲しいと放課後や帰った後に頼まれたことはあるかもしれない」
『やっぱりか』
「それ、誰も空間魔法を使えないから、教えて欲しいって事ですからね。もしかしたら、中にはオーウェン様の弟子になった気でいる方もいらっしゃるかもしれません。普通、このレベルの高度の魔法は師から弟子へ教えるのが慣例ですから」
「まさか、それはないだろう。……だが、確かに、やたら覚悟をして俺に教えを乞うてきた人もいた気がする。真剣なだけかと思っていたが……」
『やっぱりか』
シルフが呆れた様子でこちらを見てくる。
とはいえ、俺は高名な人の師匠なんて周りにいなかった。貴族には、師匠を持っている人も多いらしいが、自分とは無縁な存在だと思っていた。
ましてや、自分が師匠なんて、考えたこともなかった。俺の魔法は割と前世の物理化学の知識を生かした自己流な発動の仕方なので、この世界の人たちには、あまり、参考にならないと思うし、教えてくださいと言われても、説明するのが難しく、そこまで色々なことを、教えられなかった。
俺のことを師匠だと思っている人たちも、どうせなら、もっとまともな師匠に習うべきだっただろう。悪いことをした。王都戻る機会があったら、謝って、説明して、俺以外の師匠を見つけてもらおう。
「ああ……っと、驚きすぎて、ご飯の準備を忘れていました」
レムが慌てた様子を見せる。
そういえば、これからご飯の時間なんだった。トムがアイテムボックスのスキルを持っているから、家で作ったものを、取り出すのだそうだ。
『そういえば、さっきビッグボアを狩ったんだけどいる?』
シルフはそういうと、亜空間から、新鮮なお肉を取り出した。
「おお!新鮮なお肉ですね!ぜひ調理したいのですが……、その調理器具がないので、アイテムボックスの中なら劣化しないので、帰ってから食べましょう?」
『ああ、そうか、確かに』
シルフが亜空間にお肉を戻す。
どうやら、シルフもアイテムボックスのスキル持ちだそうだ。
「そういえば、調理場だったか。ここら辺に?作るのがいいかな?[ブロック]!」
『おおっ!いい感じだね!早速、調理しようか!』
「ああ……」
ブロックは土魔法の技で、土で作った硬いブロックを積み上げる魔法だ。
簡易的だが、キッチンができた。シンクを外と繋げるように土魔法で掘れば完成だ。
調理に使う火や水は魔法で出来るから、これだけでも充分である。我ながら上出来。
「この短時間で、ここまで、完璧な設備と食糧を……、ははっ……、もうやだこの2人……」
……と、思ったが、レムは頭を抱えてしまい、しばらく無言だった。どうしたんだろう?
『ほっとけ。僕も頭抱えたいから』
「……?」
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