第17話 戦闘のモチベーション

-side オーウェン-




 どのような物事でも、実践に勝る特訓はない。魔法でもそれは例外ではなく、魔物と戦っている人は、魔物と戦っておらず、的当てのような魔法の練習ばかりしている人よりも遥かに魔法の練度は高くなるだろう。



 理由は単純。練習は所詮、実践を想定して作られたシミュレーションシステムを行うにすぎない。完璧に実践に近づける練習システムを作るには、それだけ、練習システムにお金がかかるため、どうしても何かしらの要素を捨てる必要がある。大体そう言う要素は、直接的には戦闘には関係ないが、間接的には必要な場合が多いのだ。



 リオンシュタットに追放されるまでは、実際にがっつり冒険者になって、戦闘すると言うことを考えるもいなかったため、こんな事を考えてすらいなかったが、現状の俺の戦闘力を改めて見つめ直した結果、このような事実が分かった。



「オーウェン様。到着いたしました。ここが西の森です」

「ああ。お疲れ。馬車の運転、運転ありがとう」



 森の中は馬車では行けないので、森の入り口近くの馬車を止めれる場所に馬車を預ける。しばらく、歩くと森が見えてきた。

 西の森は木々の密度はそこまでではないので、見晴らしは悪くはないが魔物が多いため、ある程度強くないと入る事を推奨されない場所だ。特に管理している人がいるわけでもないので、自己責任ではあるが。



「とりあえず、魔物と戦うのは久しぶりだから、最初はスライムとかゴブリンとかが良いかな?それ以外でも出てきたら戦うが」

「かしこまりました。出来るだけ弱い魔物がいる所を中心に見ていきましょう」

「ああ……。後、欲を言えば肉がうまそうなのを頼む」

『主人……、お前も結局肉じゃねえか』



 そりゃそうだろう。狩のモチベと言えばほぼ100%食える肉がある事。強くなるという目的のために戦っていたら、戦うことが義務のようになってしまうからな。戦闘にも褒美が必要だろう。



「なるほど……。でしたら、朗報がありますね。基本的に魔物のランクが上がるにつれて、お肉が美味しくなります。ランクの低いスライムやゴブリンは、ほとんど食べれませんが、少し上の、ランクのオークからはお肉が美味しくなります。今回の目標である、ランニングボアなどは大変味が美味という事で非常に高く売れる魔物です」

「ほーー。それは良いこと聞いたかもしれない。早いところ、高ランクの魔物を倒せるといいな」

「そうですね。……とはいえ、油断は禁物です。スライムやゴブリンも低いとは言え、知能のある魔物ではあるので、予測の裏をかいた攻撃をしてきて、思わぬ事故に繋がる場合もあります」

「分かってる。気を引き締めていく」

「ええ。それと、今回は防具があるから基本は大丈夫でしょうが、訓練ですし、いつでも防具を身につけているとは限らないので、防具がない前提で動いてください」

「了解だ」



 そう話していると、早速スライムが出てきた。



「ファイアアロー!」



 スライムは核を攻撃すれば倒れるので、ファイアアローを使い、核へ攻撃する。

 見事に倒れ、核だけになった。



「お見事です。スライムの核は売れるので、取ってください」

「ああ。しかし、スライムの核なんて、何に使うんだ?」

「ちょうど良い大きさの、硬いボールなので、マッサージボールによく使われます。安いですし、色々な方に人気がありますよ」

「へー」



 俺も1個くらいは持っておこうか?

 その後、ゴブリンの村を発見した俺は、事前の想定通り楽々倒し、西の森に着いて初日はそこで、終了したのだった。



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