第13話 精霊を我が家へご招待
-side オーウェン-
目の前の精霊達--シルフとその部下達は森を作ったと言っていた。精霊は伝説的な存在なので、出来ても不思議ではないとは思ったが、一旦、話を聞いてみる事にする。
「森を作った?」
『おう!俺たち、お前魔力を受け取った時にな!力がありあまって、つい……な?』
『仕方ないのですわ。貴方が、音とともに強力で、美味しい魔力を私達にぶつけるものですから』
「音?それに、魔力なんて、使っていなかったぞ?」
『多分、無意識に魔力を放出しているんだろうな。天性の才能を持っている奴にはそういう事が起こりやすい』
『剣士や魔法使いが、威圧などを放つ時も無意識に魔力を放出しているのですの。それと似たようなものなのですわ〜!』
「なるほど。少しは、迫力ある演奏を出来ていたって事か。それが、お前達にも伝わったと」
『そうそう、そういうこった!それにしても、心地のいい美しいヴァイオリンの音色だったな!あの音に、お前の魔力をもらいすぎて、俺は魔力を上手く制御出来なかったんだ!』
『ここのあたりの森の木々も、成長速度が通常よりもかなり、早い。お前が、入ってきた時よりも、成長しているだろう?普通はそんなにハイペースでは、森の植物は育たない。おそらく、ここの森も作ったのはここにいる2匹だが、ここまで広がったのは確実にお前の魔力が原因だ。とてつもない力だと思うよ』
シルフに指摘されて、あたりを見回してみると、確かに入ってきたよりも、木々や葉っぱが大きくなっているのを感じる。しかし、このままでは俺の敷地外にも森が広がってしまうかもしれない。それは困る。
『ああ、それだったら、大丈夫だ。精霊が力を行使できる範囲は、この敷地内だけだからな。この屋敷は上級光属性の魔法の効果があり、聖域化する条件が整っていたけれど、他の場所にはないからね。』
ふむ。どうやら、俺が先日かけた浄化の魔法の影響もあるらしい。それにしても、聖域--教会などから神聖視される特別な地域は、いるだけで、心身共に回復すると言われている場所だ。それが家の中に出来ていたとは……喜ぶべきなのか、厄介事が増えたと困るべきなのか。
とりあえず、冒険者ギルドに報告してから判断しよう。
「なあ、とりあえず、俺の家に来ないか?
お茶くらいは出せるからさ」
『ふむ。我らは主人の護衛と護衛の護衛。主人が行きそうな場所は、把握しておきたい』
「お、おう」
いつの間に、護衛になったんだ……。
まあ、良いか。こういうのも、悪くない。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ここが、我が家だ」
『ほおーー!中々、住み心地が良さそうな屋敷じゃねえか!』
『ふむ。建物は質素だが、空気が澄んでいて中々良いな。木もそこまで傷んではないが、大分昔に建ててあると分かるから、全体的に品よく見える』
『森の中にある分、隠れ家な雰囲気もありますわね』
森はさっき出来たところだが、確かに今住んでいるところは、お伽話とかに出てくる森の賢者が住んでいるような、隠れ家風のお屋敷になっているような気もする。
どうせなら、隠蔽の結界魔法でもかけておこうか。それっぽい雰囲気になるだろう。
「さあ、こっちがティールームだ」
『『『おお〜!!』』』
ティールームとは、家でお茶を飲む場所のことを指す。家具などは基本的に全て、アンティークな部屋である場合が多い。
昔ながらのお屋敷にはみんなで集まれる場所として、ミーティングルーム、パーティルーム、ティールーム、それに、娯楽などを行う場所であるリクリエーションルームなどがあり、用途によって、様々な楽しみが出来るのだ。
「今、お茶を作るから、それまでは自由にしててくれ」
『分かった!』
先ほど、森からとってきた薬草で、お茶を作ろう。今回はレモングラスをベースにしようかな。ベリー系の薬草も一緒にブレンドしよう。本当は茶葉を乾燥させたいところだが、時間もないし、茶葉も新鮮だし、今回はこのままで使うことにしよう。
それから、水魔法と火魔法の合成魔法を使って。湯を沸かし、そこに、おおよそ1ティースプーンの薬草を一杯分お湯に加える。薬草を入れたお湯を約5〜10分間、薬草の種類や好みに応じて蒸らし、薬草を取り除いたら美味しいお茶の完成だ。
「さて、出来たよ」
『むにゃむにゃ……』
『スースー……』
『スヤスヤ……』
読んでみると、精霊達はぐっすりと眠っていた。きっと疲れていたのだろう。
仕方ない。しばらく、精霊の寝顔を見守りながら、俺も休むとしよう。
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