第12話 強制的な初めまして
-side ???-
『寝てますわね』
『寝てるな』
『寝てる。俺も寝ようかな?
--って起きた!?』
オーウェンが何かの気配を察知して、目覚めると、そこには神々しい光を放った玉が3つあった。
「光の玉が、喋ってるな……、もしかして、寝ぼけてるのか?俺?」
『寝ぼけてないぞ!!』
「そうか、やっぱり寝ぼけているのか。二度寝しよ」
『え?--って、おいっ--!!おい!おーい』
スースー。オーウェンは疲れていたので、再びそのまま深い眠りに着いたのだった。そんな状況に精霊たちは焦る。
『ま、ま、ま……まじで寝やがりましたわ〜!このお方』
『シルフ様を前になんて失礼な!』
『しかし、困ったね。この結界、中々に高精度すぎて、今の我々では、壊す事ができない。これでは、何かを対価に、力をもらう事ができないよ』
『そ、それも、そうですわね。しっかたないですわね。今日のところは多めに見てやりますわ〜。これで、失礼しますわ〜』
『いや、待て』
『……??』
『結界に弾かれるない魔法で、この凄腕魔法使いから、力を貰う方法がある』
『……??まさか、シルフ様!!それは、おやめください!』
『は、は、は、早まるなですわ〜。きっと、他の方法もあるはずですわ〜!』
『いや、此奴はこれまで見てきた中でも、トップクラスに力を持っている人間だ。此奴以上に力を分けてくれる人など、探してもほとんどいないだろう。……精霊王国のためだ。やってやろう!こんなチャンス2度とないかもしれない!眠っている今がチャンスだ!
[従魔契約]!』
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
-side オーウェン-
「--??」
違和感を察知して、目覚める。
すると、さっきの光の玉が二つと黄緑色の髪と目に、白銀色の美しい王冠を被った少年がいた。一気に現実に引き戻されたような感覚がして、目の前にいる少年に声をかける。
「……もしかして、さっきのは夢ではなかったのか?というか、君は?」
寝ぼけた頭を必死にフル回転させながら、明らかにイレギュラーな今の状況に対応しようとする。
『僕の名前はシルフ。風の精霊王さ。
今は君の従魔でもある』
「はあ?」
思わず、素っ頓狂な声をあげてしまう。
寝起きだからだろうか?言ってることの全てが、意味が分からない。
「精霊王、従魔?なんの事だ?」
『そのまんまだよ。そのまんま』
やはり、全く話の通じない相手だと思ったので、ひとまず、現状の自分の状態--ステータスを確認する事にした。
すると、確かに[従魔]の欄に風の精霊シルフという記載が追加されていた。
待て待て。いつの間に俺は従魔にしたんだ?契約なんて、した覚えないぞ?風の精霊シルフ!確かに御伽話で有名な精霊王の名前だけれども!
『ふふっ……!驚くのも無理はないね。僕くらいになると、従魔契約をこちら側から強制的に出来るのさ』
「ええ……?」
そんなのありかよ?いや、実際にできていると言うことは、ありなんだろうな。
……………。
さ、流石魔境にいる住人。こういう、ぶっ飛んだことができる存在もいるらしい。
そもそも、精霊という存在の話は今まで、御伽話でしか聞いた事がない。人前に姿を表すことなどなく、その全てが伝説的な存在である。
昔、精霊同士が争ったことで、巨大な空き地ができ、その空いた土地に魔物が住み着いたことで魔境が出来たのだとか、そんな有名なお伽話がこの国には存在する。
今までは流石に嘘だと、思っていたが、この調子だと、本当なのかもしれない……これが異世界。
「そうか、分かった。ところで、そちらの2つの光の玉は?」
『ああ。こちらは我の部下だ』
『部下だぜ!』
『部下ですわ〜!』
「あ、ああ。よろしく。……そちらの2匹は従魔にならなかったのか?」
『従魔になる前に、君が起きてしまったんだ。まあ、でも、2人は俺が力を分け与えられるから、従魔になる必要もないけれどね。
そーれ!!』
シルフがそう唱えると、光の玉が小さな人間に羽のついた姿に変わる。
両方とも、パステルグリーンの髪と目だが、片方は騎士の格好をしていて、やんちゃそうな男の子、もう片方はワンピースを着ている女の子の姿になった。3匹が揃うと、とても可愛らしく、品が良い集団である。
「なるほど……、今までは力を失った状態だったから、光の玉だったけど、俺とシルフ様が契約をした事によって、シルフ様の力がシルフ様が力を分け与えた事によって、そっちの部下2匹が、本来の姿に変わったってとこかな?」
『ご名答だ。なかなか、察しが良くて助かる』
「それほどでもないよ……、ところで、この森が出現した理由を知ってるか?今、この森を調査している最中なんだけど?」
『ああ、……すまない。どうやら、この2匹が作ったみたいなんだ、すまない』
「えっ……!」
シルフの部下がこの森を作った……?
またまた、俺にとっては。信じられない事を、平然と言っているようだ。
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