第30話 地下での戦い4

ノペルはゼパードを追って洞窟内を進んでいた。


 しばらく進んでいるとまたさっきよりも広い空間に出た。


「広い……地下にこんな広い場所があるなんて…」


 空間のさらに先には段差があり、盛り上がった場所に何か気配をノペルは感じた。


「そこにいるのは……?ゼパードさん……ではないですね。」


 ヒタヒタと足音がし、出てきたのは灰色のフードを被った身長が少し低い生き物だった。


「………お前は!?」


「よく、ここまで来たな。」


「お前を……知っている。お前を知っているぞ!あの時……村に来たやつ…まさか、また会えるなんて…」


「んん?村…だと?」


「コボルト様!!」

 聞き覚えのある声の方にノペルか振り向くとそこにはゼパードがいた。


「どうしたゼパード?」コボルトと呼ばれた者が答えた。


「その人間は……昔私がいた村で逃げ延びた者です!」


「ほぅ……。ガムの村か?お前以外に生き残りがいたとはな。よくもまあ、あの状態で生き残りがいたもんだ。」


「……あの状況?僕は途中で村から逃げ出した。ゼパードさん、僕はあなたがまだ生きていると知り、聞きたかった。僕がいなくなった後、村がどうなったのか……。」


「ん?お前あの時逃げたのか?…ククク。そうかそうか。ゼパード、教えてやれよ。あの村がどういう最後を迎えたのか。」

コボルトが言うとゼパードは青ざめた顔なのに口元は少しニヤつきながら答えた。


「……ひっひひ。あの村の最後だって?そんなに…知りたいなら教えてやるよ。7日目を迎えた日の夜……あぁ……忘れられないあの光景…」

 ゼパードは頭を抱えながら叫んだ。


「…村の者全員で殺しあったんだ!!」


 ノペルは自分が村を脱出した時の最後の村の景色を思い出した。

 それは血と暴力、そして母の姿。


「ひひひっ!あんなに村人全員仲がよかったあの村が!最後は疑心暗鬼によって殺しあったんだ!!あぁ、あの時俺は怖くて怖くて震えたさ…!!」


「………。」


「ノペル……お前も死んだと思ってた。あの時急に姿が見えなくなったからな。だか、まだ生きていたとは驚いたよ。お前の母親は……」


「あの時…」

ノペルは怒りで爆発しそうになっているのを堪えた。


「あの時、あなたがみんなを先導して戦っていれば……」


「俺が先導だって?バカを言うな!俺が先導したところで村に残っていたのは老人や女や子供だ!何ができた?お前のじいさんだって魔法が使えても役に立たなかったじゃないか!!」


「わかっている……だけど……だけど僕は。あなたのあんな姿見たくなかった。…あなたに憧れていたんだ!!俺はあなたに戦ってほしかった!!」


「…クックック」コボルトが不気味に笑っていた。


「やはり人間同士の争いは見てて飽きない。本当に人間は楽しませてくれる。ほら小僧、ゼパードを恨んでいるんじゃないのか?ゼパードを殺さなくていいのか?クックック。」


ゼパードは怯えた顔をしながら剣を握った。


「さあ!やれよ!醜い人間の争いを見せてくれ!俺を楽しませろ!!」


「ゼパードさん……あなたはあれからこいつの言いなりになって人間を騙し、こいつらに貢いで来たのですか?」


「…そうだ。唯一生き残った俺には他に道はなかった。こいつらの言いなりになっていれば生きていける。……簡単なことだ。バカな人間をただ連れてくるだけだからな!」


「そうですか…。」ノペルは杖を地面に置いた。


「お、お、ゼパードと戦うのか?ほれほれ見せてみろ!お前が勝てばお前を家来にしてやるぞ!」


「……いや、俺が戦うのは……あんただ!!」

ノペルがコボルトに向かっていった。


 

 

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