第28話 地下での戦い2

「はぁはぁっ……やばい!ニーナとはぐれた」


 サト子は一人、洞窟の奥へと来てしまった。


「でも何匹かはやっぱり偽物だった……」


「なぜわかった?」後ろから先程の岩のような魔物がサト子を追ってきた。


「ぎゃぁぁぁ!顔怖いから急に出てくるの止めて!!」


「なぜ、わかったんだ?あの数がすべて偽物だと」


「……私の仲間が最初に走って行った時、魔物がすり抜けているように見えた。それに、大勢の魔物がいるのに息づかいがそこまで聞こえなかった。そして何より…」


 サト子は夜光を構える。


「ノペルがあの状態で私達を置いて行くわけがない!」


「……あぁ、そうかい。まあバレたら仕方ないな。大体あんな脅しをしなくても貴様らなんぞ俺達だけで充分だ。」


(だけど想定外だったのは本物の魔物があのカッパだけじゃなかったってことね…ニーナ大丈夫かな?……いや、ノペルは私達に任せると言ったんだ。つまり、ここは私達でも充分乗り切れるとノペルは判断した。…私はノペルを信じる!)


「ノペルが私達を信じてくれたように!」サト子は夜光を構えて岩の魔物に向かって行った。


「必殺!脳天かち割り!!」


 ガチィィ!


 魔物の頭にクリーンヒットした……しかし、

「効かねえなぁ」


「なんで!?夜光で殴ったのに!」


 魔物が腕を大きく振ってサト子を弾き飛ばした。


「きゃっ………痛たた。あいつ、頭固ぎ…」


「俺の名はブゥーブゥードゥー。岩頭のブゥーブゥードゥーとは俺のことだぁ!貴様にこの頭は砕けないだろう?ガハハッ!」


「ぶぅぶぅどぅ?変な名前!!」(全国のブゥーブゥードゥーさんすいません。)


「変だと?」ブゥーブゥードゥーの顔が赤くなってきた。


「貴様!俺をバカにするのは許さん!」

 そう言ってブゥーブゥードゥーは飛び上がり、サト子に頭を向けて飛び込んできた。


「くらえぇぇ!メテオシュートぉぉ!!」


「ひぃぃ!危なっ!!」

 サト子は後ろに避けた。


 ズゴォッ!!と鈍い音がしてブゥーブゥードゥーは地面に突き刺さっていた。


「当たってたら潰されていた……」


「……………!」


「ん?」


「………………!」


「何か聞こえる………地面の中?」

サト子は地面に耳を当てて見た。


「………せ!」


「せ?」


「……早く出せ!!」

 ブゥーブゥードゥーが地面に刺さった状態で叫んでいた。


「…まさか、抜けないの?……ハハッ。ハーハッハッハ!!私の勝ちだ!!」サト子は高笑いしてやった。


「早く出さんか!!」


「ふっふっふ。そんな偉そうにしていいのかしらね。」サト子の顔が悪い顔をしている!


「今だっ!!」

サト子は地面から見えているブゥーブゥードゥーの体の部分を夜光でボコスカ殴った。


「くらえ!くらえ!くらえいぃぃ!」 


「いてっ!いてっ!ちょっ!やめっ……止めろって!」

サト子がボコスカしばらく殴ると最初はジタバタしていたブゥーブゥードゥーの体は動かなくなった。


「はぁはぁ……やった。また一人で倒せた。なんて狂暴な魔物だったんだ……。」

サト子が攻撃を止めて息を切らしていると急に地面が盛り上がった。


「ぐばぁぁぁぁぁぁ!!」


「ッ!!?」

 

ブゥーブゥードゥーが勢いよく飛び出してきた。


「痛いだろうがぁぁぁぁ!」


「ひぃぃぃ!!」


「てめぇ!!ボコスカ殴りやがって!もう許さねぇ!」


「こいつ!自分で出れたの!?てかまだ全然元気じゃない!?」


ブゥーブゥードゥーの顔が怒りで真っ赤になっている。


「くそっ!どうやって倒したら……いっ!」


 急にサト子に腹痛が襲った。

「かっはっ……」お腹に何かが……

ふと足元を見ると拳ほどの岩が落ちていた。


 ……岩?


 ブゥーブゥードゥーが口をモゴモゴさせて急にフッと何かを飛ばした。


 それはサト子の肩に当たった。

「いったっ!!!!」

衝撃で後ろに倒れたサト子の肩から血がダラダラと流れている。


 これは……岩だ。岩を口から飛ばしてるっ!!


「う、うう……」


 すごく痛い。痛みで気分が悪くなってきた……


「人間が……魔物に勝てると思うな!」


 ブゥーブゥードゥーが向かってくる。


「やばい……立って…戦わなきゃ…」

サト子はフラフラになりながらも立った。 


「……あれ?夜光がない!」


夜光はサト子から数メートルの距離に落ちていた。

 (さっきの衝撃で夜光を落としちゃったんだ!)


「貴様はもう終わりだ!!」


 サト子は夜光の元へ走った。

 後ろからブゥーブゥードゥーも追ってくる。


 (だめだ!!間に合わない!)


「捕まえたぁぁぁ!!」

 ブゥーブゥードゥーがサト子の襟を掴んだ!


「………夜光ぉぉぉ!!!」

 サト子が夜光に向かって手を伸ばす。



 その時、謎の光が夜光を包んだ。

「なんだ!?」


「え!?」


 光輝いた夜光はカタカタと独りでに動き、サト子の手の中に飛んできた。


「夜光!!」


「なっ!?刀が勝手に!?」


サト子が力強く夜光を握りしめる。

「うわぁぁぁぁぁ、必殺!!脳天滅多打ち!!」

光り輝いた夜光は軽く、ものすごい速さでブゥーブゥードゥーの頭上から何度も振り下ろされた。


「グッ……ハァッ!!」

ブゥーブゥードゥーはそのまま倒れた。


「はぁ……はぁ。今度こそ…やった?」

 夜光の光がシーンと消えていく。


「……いったい、なんだったの今の…」


 サト子は元の真っ黒い刀に戻った夜光をしばらく呆然と見つめていた。

 

 

  


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る