第27話 地下での戦い

三人は地下に続く階段を歩いていた。

階段の壁には所々ランプが付いているため明るい。

「ねぇノペル、なんであの時大丈夫だって言ったの?」


「はい?あの時とは?」


「小屋の前にいた魔物と話す前!ノペルは大丈夫って言ったら本当に魔物と戦いにならないで入れたじゃない?」


「あぁ、あれですか。」


 階段は先頭にノペル、サト子、最後にニーナの順で降りている。

サト子はノペルが階段でコケたりしないか心配だったかそんな心配をよそにスタスタとノペルは降りていた。


「あれはですね……なんて言うか、あの魔物は大丈夫だと判断しました。」


「えぇー、なんで??」


「魔物にも色んな魔物がいるみたいでして……まあ、さっきの奴はそれほど危険じゃないみたいだったので。それに……」


「それに?」


「仮に戦いになっても僕は負けないので。」

 サト子はノペルの顔が見えなかったがきっといつものムカつくニコり顔をしているのだろうなと思った。


「おや、開けた場所に出たみたいですね。」


 ノペルの言葉でサト子も前方を見ると大きく開けた部屋に出たみたいだった。


「サト子さん、ニーナさん。」


「どうしたの?」

「…何?」


「今更ですがここから先は完全に僕の都合での戦いになります。お二人はここで待っているか、町に戻ってもらっていても構いません。どうしますか?」


サト子とニーナは顔を見合せた。


「本当に今更何言ってんの?今から帰るならここまで付いて来てないでしょ?それに私達はもう仲間じゃない?」とサト子が言うと、


「……私はサト子が行くなら一緒に行くだけ」とニーナも答えた。


「仲間……ですか。」ノペルはいつものムカつくニコり顔ではなく一瞬だけ別の表情をした。


 …ようにサト子は見えた。


「さあ行こうノペル、ニーナ。」三人は開けた場所を少し進んだ。


「あれ、少し霧が出てきたかな?」洞窟内は明るいが少し白いモヤモヤした物が見えた。


「……あ、サト子、先を見て」ニーナが指差した先を見ると三つの道があった。



「あぁ…道が別れてる。どうする?」


「そうですね…風の流れでは真ん中……いえ!ちょっと待ってください!!」


ノペルが急に身構えた。

「どうしたの!?」


「何か来ます!!」


 真ん中の道から足音がする。

 コツコツ。


 コツコツ。



「あっ!」


 出てきたのはゼパードだった。


「ゼパードさん!!」


「お前達……なんでここまで付いてきたんだ…もう終わりだよ。ノペル…お前達はここで死ぬ!」


 そう言うとゼパードは真ん中の穴に消えていった。


「待ってください!!」

 ノペルが向かおうとするとさらに両端の洞窟の奥から何かがでてきた。


「ぐへへへ!今日の獲物だぁぁ」


「今日はガキが二人もいるぜ!!」


 それは色んな見た目をした魔物達だった。

「魔物が………あんなたくさん!!」


 魔物は数十匹からドンドン増えていった。


「……サト子、これは逃げた方がいいと思う。」さすがのニーナも焦ってるようだった。


「ノペル!一旦引こう!さすがに多すぎる!」サト子が言ったがノペルには聞こえてないみたいだった。


「サト子さん!ニーナさん!」

 ノペルが叫んだ。


「何!?ノペル!」


「ここは任せました!」


「…………はぁぁぁぁぁ!!?」


 ノペルは大勢の魔物達の間をすり抜け真ん中の穴に走っていった。


「え!?え?ちょっと!?ノペル??」

 サト子とニーナは立ち尽くした。


「絶体絶命じゃないの……」


「サト子、とにかく逃げよう!」


「でもノペルが……」


「…ノペルには何か考えがあるんじゃないの?」


「おいおいー、一人行っちまったじゃねぇかぁ」魔物の一人、カッパのような見た目の奴が喋った。

 頭には皿、手には水掻きと鋭い爪が生えている。


「……カッパぁ!?」

この世界には妖怪もいるんだ……いや、妖怪型の魔物か。


「んあ?誰がカッパだ?!俺にはテングと言うイカした名前があるんだ!」


「テング!?あんたどう見てもカッパでしょうが!」


「俺はカッパなんて変な名前じゃねぇ!!」


「自分の名前を変なんて言うな!」


「だからカッパじゃねぇっての!カッペと似たような名前にするな!」


「カッペをバカにすんなカッパ!」


「サト子、ボケてる場合じゃないわ。」ニーナが熱くなったサト子を正気に戻した。


「……ご、ごめんニーナ。」


「そんなことよりサト子、気になることがあるの」


「どうしたのニーナ?」

魔物の群れはジリジリと二人に迫ってきている。

 

「さっきノペルが真ん中の道に走って行った時、なんだか魔物をすり抜けて行ったように見えた。」


「すり抜けて…。確かにさっき変な感じがしたよね?ノペルがこんなやばい状況で私達を放置して行くのも妙だし」

それにこんなに大勢の魔物がいるのに息づかいがあまり聞こえない……

 

「さぁて、どっちから食ってやるかなぁぁ」とさっきのカッパのような奴が言った。


「ニーナ、一回試してみたいんだけど…」


「……そうね。私も。」


 二人は顔を見合せて頷いた。


「さあ、覚悟は決めたかぁぁ?」カッパが迫ってきた。


「今だ!!走って!!」


 二人は一斉に魔物の群れの中へ走った。


 サト子は最初目を瞑り手を前に出して走っていたが一向に魔物にぶつかることもなかった。


「うわぁぁ!…やっぱり!ニーナ!魔物を透けていくよ!!」


「サト子!そっちじゃない!」


 サト子は手を前にしながら走っていたため間違えて右側の穴に走って行ってしまった。


「あ!間違えた!今戻っ………痛っ!!」

サト子は何かにぶつかって転んだ。


「痛たたた…なによ…」


「まさか自分から食われに来るとはなぁ…」サト子の目の前にはゴツゴツした岩のような顔で体格もガッシリした魔物が立っていた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」サト子は驚いて穴の奥へ走って行ってしまった。


「サト子!」


「おいおい、お前ら…よく魔物達が本物ではないとわかったな」

先程のカッパ似の魔物、テングはニーナを睨みながら言った。

「おいコボルト!もう魔法を使わなくていいぜ!どーせガキだけだ!」

テングが大声で言うと霧が晴れ、大勢の魔物達はシューっと消えていった。


「…やっぱり本物じゃなかったのね。」ニーナは小刀を構えた。

  


 

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