第6話 謎
アイザックに言われた通り、南へ向かうことにした。
…………南ってどっちだ?
地図もコンパスもない。
………詰んだ。
そういえば森を抜けた先の小さな村にアイザックは食料の調達をしていると言ってたな。
とにかくそこに行ってみるか!
私はアイザックが一度だけ村に向かうと言って進んだ方向に行くことにした。
幸い森の中を抜けるようではないようだ。
小道がずっと続いている。
私はしばらくその道を休憩しながら一時間ほどで見晴らしのいい平原に出ることに成功した。
遠い……歩き疲れた。。。
あら?
少し先の方に二階建ての木造の家を見つけた。
近くに寄って見るとそこは農家のような場所で家の周りには畑や、なんと家畜(牛や豚だ!)までいた。
この世界にも普通の動物がいたことに感激しながらも家の住人に話を聞いてみることにした。
コンコン。
………。
コンコン。「すいませーん!」
「はーいはい。」中からは中年のおじさんのような図太い声が返ってきた。
ドアが開けられるとそこにはなんと……中年のおじさんがいかにも農作業をしますよというような格好でたたずんでいたのだ。
「あの……」
「な、な、モンスター!!?」
中年おじさんは私のことをモンスターだと思ったようだ。
「ち、違います!人間です失礼な!」
「人間……そんなバカな……いや、こりゃ失礼。顔があまりにも……」
中年おじさんはどうやら嘘がつけないタイプのようだ。
「いや、……何かようかな?お嬢……お嬢………お嬢さん…。」無理するな。
「ここにアイザックと言う人が来ていましたか?」
「おお、アイザックさんならたまに来てたよ。最近ならここ3日、4日前かな?君はアイザックさんの知り合いかい?」
「はい。知り合いと言うかなんと言うか……」
私はアイザックが死んだことを言うまいか悩んだが結局言うことにした。
「…………そんなことがあったのか。…いやとても残念でならないよ。」
私はアイザックの知り合いでたまたま小屋に行った際に瀕死のアイザックを発見したと言うことにした。
「…アイザックさんはね、いつも一人だったよ。君みたいな知り合いがいるなんてね…他にアイザックさんの知り合いなんて見たこともないし。たまにうちで肉や卵を買って行ってね、人が苦手なのか無口な人でね、会話したことなんてほとんどなかったよ…まあ悪い人ではなさそうだったがね。」
私はあれ?と思った。
アイザックさんは私といる時はよく話したり笑ったりしていた。イメージと合わないな。
……アイザックさんは目立たないよう人目をさけていた?
「まあでも、本当に残念だ。君はわざわざそれを教えに来てくれたのかい?」
「いえ、実は城に用がありまして……行き方を教えて頂きたいのですが……」
「城?クルス王の?それならここから南の方角にまっすぐだよ。」
「……南とはどっちですか?」
「ああ、君はこの辺りの人じゃないんだね。こっちの方向だよ。」
そう言って中年おじさんは指をさしてくれた。
私はありがとうとお礼を行って農家を後にしようとすると
「あ、そう言えば…」とおじさんが思い出したように切り出した。
「つい最近一人の若者がアイザックさんを探していたな。写真を見せてきてこの人を知らないか?って言われたよ。」
「え!?その人は誰だったんですか?」
「いや、誰かはわからないな…ちょうど牛の世話で忙しくてね。さわやかで男前な若者だったよ。森の奥にいるよーって言ったらありがとうと言ってすぐ帰っちまった。一瞬のことだから忘れてたよ。」
「それはいつのことでした?」
「一昨日の夕方だったかな?」
アイザックさんが襲われた前日?
いったい何者なんだろう。
農家から城への道をひたすら歩いていると前方に二手に別れた道が見えてきた。
あれ?道が別れてるなんて聞いてないけど……
どうしようか考えていると右の道から人が歩いてくるのが見えた。
その人は杖をついているようだったので老人かと思った。
あの人に道を聞いてみよう。
そう思ってサト子が近づくと、老人ではなくまだ20代前半の青年だった。
彼は杖をつくと言うより、杖で自分の歩く前の地面を叩いたり左右に払ったりしてるようだ。
この人……目が見えないんだ…。
目が見えない人に聞いてもわからないかなと思い聞くのを躊躇っていると、その青年は「おや?」とサト子の方を向いて言った。
気づかれた……!
「あ……驚かせてすいません。道を聞きたいのですが…」青年の顔を見ると青年は目を瞑ったままで不思議な表情をしていた。
あれ?耳も聞こえないのかな?
「あの、すいません。」
「あ、どうも。どうかしましたか?」
「??………えっーと道を聞きたいんですけど」
「あー、道をですか。すいませんボーっとしてしまい…」
変わった人だなと思った。
でも、目が見えない分状況を把握するのに時間がかかるのかな?
「あの、城に行きたいのですがどの道を行けばいいのでしょう?」
目の見えない人にこの聞き方で大丈夫かな?と思ったが青年はすぐに答えてくれた。
「それなら僕が来た道をまっすぐですよ。」
「ありがとうございます!」
そう言ってサト子は青年の横を通りすぎた。
そう言えばなぜ、青年は私が声をかける前に私に気づいたんだろう……
青年は固く目を瞑り薄目も開けている気配はなかった。
…………まさか!
私は体の臭いを嗅いでみた。
くっっっさ!
恥ずかし!
城についたらお風呂を探そうと思った。
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