第12話 エピソード⑫

ーーーー変死事件の、取りあえずのカタが一応ついた所で


「嘘つきぃ僕浮気しちゃうよーーー!!」


プンプンにブス膨れるベルギリウスと


ヒャッホー♪と今やすっかり過ごしやすい季節突入で、超ハイテンションのぶ厚い毛皮しょった銀狼イカロスと共に、私は愛車でうんと遠出をした



「おそぃぃいいいいい」

約束の1ヶ月過ぎてるし?!」


「まぁまぁ♡そんなに怒らないで〜?」


ウッフンと私は彼にウィンクをした




有名な観光地では無い、山奥にある秘境温泉


協会の福利厚生の一環で作られた、山の中のポツンと一軒家状態の、極小規模の特殊保養施設だ



関係者しか使用不可、しかも珍しい「ランプの宿」


極上のロマンを求めて宿泊客は日本中の支部から押し寄せるという、日本中にファンを持つ奇跡のような美しい素晴らしい温泉宿なのだ♡



幾らヴァンパイアにチューチュー生気を吸い取られても、特殊な看護体制も万全


専門の医療スタッフが素晴らしい、もっか大のお気に入りの場所だ



宿は一棟一棟、他の客とかち合わないように絶妙に設計されている為バッタリ会うという事は無い


それぞれに趣が違う日本庭園、四季折々の風雅な季節が感じられる繊細で美しい造園も良い


マッタリ過ごせる良質の湯泉~美肌の湯


で、何と言ってもご飯が美味しいこと美味しいこと!!


飛騨牛・特上のA5極上霜降り肉の食べ放題のすき焼き、焼肉、しゃぶしゃぶが、もぅ~~!


イカロスも、特別に湯通しした大きな牛骨のお相伴に預かりごっきげんの模様



ベルギリウスもココの湯は大好きで体がトロトロに蕩けそうな程、何度も入湯している


部屋にも当然小型の露天風呂はついてはいる、が、やはり広々とした方が折角だからいい

遠出した分、絶景の景色も素晴らしいし?


因みに本館にある、こちらもやっぱり貸し切り状態


私達だけしか利用者がいない様に宿がキチンと手配、上手く入浴可能な様に時間をずらしているから全然混浴でも構わないのだ



ぴちゃんーーーー……


行灯の仄かな光が薄暮の中、幽玄な輝きを見せる大露天風呂内


フワフワと気持ちの良い湯気が心地よく、心も体も癒やす


丁度良い外気の冷気が、肌の露出部分に気持ちがいい


私は宿専用だという、特別のひとえの浴衣型〜

真っ白の肌着を身にまとって湯に浸かっていた


それは何故かと言えば〜

今現在、広い湯船で抱きかかえられ腕を絡まらせている状態


いくら「ご褒美」だとしても

流石に素肌での交流は生体エネルギーを吸い取られる一方の、狩人の方に負担が大きすぎる為に許されている特例だった


のぼせやすい岩風呂内で、もしも倒れたら場合によっては生死に関わる


「大好き」

ベルギリウスは、露骨にもぅ幸せ~という風情


背後から髪をアップした私の首筋に顔を埋めて


たっぷり、ひと月以上待ち望んだエナジーを、もっか好き放題に唇で吸い取り中だ


まるでニアリーイコール


恋人と他人の境界線は?

信じられない程、曖昧


清潔なひとえの浴衣越しに、しっとり柔らかく皮膚を愛撫するような優しい唇の感触がドキドキと艶めかしい



温かな湯に浸かりながら思い出していた


あの黄昏時の修羅の戦闘を




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