第9話 エピソード⑨

異様な異変に通常ならギャン泣きをするはずの子どもが忽然と、騒ぐこと無く何処ともなく煙のように消え失せている


所長室で水上所長から資料を見せられた際、ウーンと思考を過集中、ひと息に研ぎ澄まさせた



既に腕利きの調査員によって済まされていた、戸建て隣御近所への聞き込みデータによると

「普段夫婦で喧嘩ばかりしていたから、てっきり片方が蒸発したかと思っていた」



賃貸アパート、マンジョン管理人談

「いやね?やっと静かになって嬉しい、住民トラブルが減って喜んでいたんですけどねぇ〜」


だから冷酷な話だが、いっちゃなんだけれど


「静かになった日の前夜」~が変事のあった時


夫婦が殺害された時刻と読んで間違いがないだろう



事件発覚は。子ども達が預けられる当該保育施設からの所轄警察への通報〜

大多数を占めていた


この時代、登園が無いと必ず自宅への問い合わせが法的に義務とされている


複数回連絡してもコールが無いと言う事で、安全上、近所に在住の親族、いなければ児童相談所経由~


児相職員が場合によっては警察官を伴い自宅へ「家庭訪問」をする


彼等が事務的に鍵専門家の助力、もしくはスペアキーで開けてビックリ仰天!!


~~という

まるで判で押したが如くの一連の流れを辿っていた



取りあえず近所中に響き渡る程の、激しい喧嘩が恒常的な家庭環境だった


でーーー

児相職員と所轄警察が口ごもる「ここだけのはなし」


中央には決して上げていない㊙「コソコソこぼれ話」


表に出ることは無かったが、どうも虐待のおそれがあったという



個人的には怪異現象は「殺害」〜


被害者を死亡させた、ミイラ化原因はヴァンパイアで間違いが無いと思う


但し、ベルギリウスとのそれなりの短くもないソコソコ長い付き合いで、事件に大きな矛盾も感じる


フリーズドライにまでーーー


獲物と見定めた対象の生気を、一度に吸いきるだなんて事が無いのはよく知っている


「する時は狡猾にチビリチビリ生かさず殺さずよねぇ〜」


ええ絶対そう!!


「だって勿体ないでしょ~~?」

「一応、僕達だって好き嫌いの好みがあるんだからね」


多分ベルギリウスならヘラリとノンビリ、罪悪感も無くこんな風に言う筈だ


永らえる、狡猾な知能を持った彼等は意外に深淵だ


彼等の哲学に反する行為をするならば、何か決定的な事情がおそらくある筈だ



ーーーーじゃあ何故だろう


……プロファイリング


おそらくヴァンパイア化してまだ日が浅い、経験値が無いと言う意味で若い吸血鬼


で、そうせざるを得ない「何か」、逆撫でする事に強烈に引き寄せられた



尋常ならざる嗅覚と聴覚


ーーーー怒り


憎悪


〜まだ自身が人だった時代をフラッシュバックさせて、彼等は犯すべからずの禁忌に触れた


若い夫婦の無意識の行為が、狂気のスイッチを入れたとでもいうのだろうか?






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