第5話 エピソード⑤
「すっごくいい!!」
「でしょー♡」
ベルギリウスの二振りの刀は剣とも、さりとて通常の日本刀の概念とも少しずれる特殊な形状だ
しいていえば
刀身とグリップ部分が別々の武器で、この辺りが西洋の
「本当は全部一体化した方が強度的にいいんじゃ無いの?」
本音を聞いた所クスッと美麗に笑われた
彼曰く馬上で振り下ろす戦い方をした太刀のデザインに近く、成る程、言われてみればぱっと見ただけでもソリがかなり激しい
ニッポンの武家時代に突入した頃の早期の型で、馬上にて鞘ごとグルッと左側面に回し
真上〜
直上に振り上げる形で勢い良く刃を抜けば、刃物が決して馬のボディに当たる事無く「コロシ」がし易い
加えて剣先がまるでデザインナイフのように小さく、しかも立体的に菱形に造作が作られているからそのままズブーッと差し込んでもイイという~
いってはなんだが鬼畜仕様だ
所長に好奇心で成分を聞いた所
~より強靱で切れの良い物を作る為の秘策が盛り込まれているとかで
オリジナルは芯鉄はもとより刀鉄、皮鉄錬鉄、炭素量の含有率の違う鉄鋼を錬鉄した古代の最先端技術の粋らしく
だからこそまぁいわば勝手に、熱膨張率、部位各各の厚さ、伸縮の違いでソリが入るらしいのだ
へーっって感じ?
片方はしゃきーんと長く、もう一振りは若干短い
器用なベルギリウスはこの2つの異様な夜目にも底光りする日本刀を、軽々両手で青竜刀のように扱い活動する
金の象嵌の
刀身、握りの部分も繊細で美しく、鮫皮と真田紐?での丁寧な装飾が煌びやかだ
スラッと長身に専用の防刀用の特殊素材で出来たロングコートをまとい、その上から鞘を下げられるベルトを装着する
慣れた手つきでキュッと設置で完成♡
「じゃねー♪」
チュッ♡とベルギリウスは頬に軽いキス
「信頼してるから」
「ありがとう僕の天使ちゃん」
気障な〆の投げキッスと共に、流れるようなウインクを夜風にさらり振りまく
「約束守ってね」
「当然」
ベルギリウスはニコッと微笑むと一瞬でうっそうと暗い建物内に煙のように消えた
さーーーてと……
今度は私の準備に入る
「出ておいで」
愛車パッセンジャーシート(助手席)側の扉を開けると、待ち構えていたようにモフモフのシルバーの塊がスタッっと軽やかに地面に降り立つ
「狭くてゴメンね」
ぐるるる……
鈍く甘えたように喉を鳴らしたのは、サイズが子牛程もありそうな巨大銀狼だ
雄狼の名前をイカロスという
この命名理由は、彼がまだ小さな子狼の頃、やたらピョンピョン跳ねて跳ねて、まるでボディに見えない翼を生やしていたようだったからだ
「きつかったね」
我慢強いイカロスに、優しく声がけすると
「そんな事無いですぜ?」
そんな感じにぺろんとタップリ手の甲を舐められる
この彼も、立派な戦術的重要メンバーだ
私はトランクから対ヴァンパイアの肩掛け式特殊銃をゴロンと引っ張り出す
「よっこいしょ」
う〜〜〜〜〜相変わらずクッソ重い
「熱反応・生体反応共に無し」
〜唯一無二のヴァンパイアハンターの武器、この装置が「射撃対象物がヒューマンで無い」
搭載AIが判断して初めて発射が可能となる
しかしこの際大きな反動が、後ろの方に向かって起きる
私だけでは軽々後方に弾き飛ばされるのを、賢いイカロスが補助になってくれる
つまり柔らかなモッフモフの壁、素速く背後に移動し怪我がないよう体を支えてくれるのだ
ベルギリウスといい銀狼のイカロスといい、デッカイ肉体に関わらず甘えたがりだ
対ヴァンパイア用、肩掛け式特殊銃の生命線であるバッテリーチェックと装弾確認を終える
すると期を見て「お約束」とばかりに、バフンと飛びつかれる
こういうところはチッコイ頃から見事に1ミリグラムも変わっていない
横長の大きさがもうただ事じゃ無いから、ぶっとい両腕がドッシリ肩に乗る
もぅっっっ!!
「よっーこらしょ!」
〜正直な所、毎度自分でもおじさんくさい掛け声でアスファルト地面に置き
ふ~これで準備O.K.と意思表示した途端、これだ……
で遠慮なくペロリ
「親愛の情」を、たーーーぷり注がれるのだ
リアル赤ずきんちゃんになった気分
まだ小さい時は硬め肉球付きのモフモフ前足が
「丁度良い置き場所♡」
というか?
「自分だけの特権♪」~と言わんばかりに私の聖なるバストトップの上に両腕が乗っかったっけ
私はある程度、イカロスの親愛ぺろぺろ攻撃が満足するまで待ち、ごっきげんなやる気満々な彼と共に現場入りした
今夜の戦闘の、おそらく本拠地となる本丸は既にホログラムマップで目星がつけてある
先ずココで間違いがない筈だ
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