第3話 エピソード③

「ねぇこのマトリスク表で考えるの?」


「まぁね」



私は愛車をおおよその目的地の地域に向かわせながら、適当になま返事をする


彼はフワァ〜〜〜ッとのんびり長々とあくびをしながら、長くて美しい指先で端末のデータをスクロールしている


私は車載特殊バックミラー越しに観察、時々チラ見をした



なんだかんだで無言になった様子に、暫く集中させる為に話しかけないのが得策と私も口を閉じた



水上所長から預かった新しい資料はオンボロの古びた『支店』AI~


こんな地方ハンター協会のしょぼい碌でもない装置では無く、殆ど神様の厳かな神託といっていい、メチャ性能のいい高級マシンで作ったビッグデータの運用だ


トーキョー本部中央の、集積された最新データベース製


更にとっても賢い人達がヒーフー苦労して作成したものだから少なくとも相応の信憑性はあるンじゃ無いかなーと思う



そんな気持ちで続けてチラチラ、ベルギリウスの真剣な表情をミラー越しに盗み見た


ぱっと見でも頭がウワーッてなりそうな、すんごい細かーい頭痛くなるマトリスク表で様々な仮説がガチ盛りで立てられる訳だけど?


ベルギリウスは文句1つ言わず、ドンドン目で高速で追ってゆく



「どう?」


「うん、大体わかった

でもミオはもう見当をつけてるんでしょ?」


「まーね、あたーりー」


「凄いよね、ミオの『予知能力』」



クスッと綺麗な色気ダダ漏れの表情が甘やかにミラーに映り込む



ベルギリウスのいう『予知能力』


これは私の特技だ




***********




幼少時よりなんていうかー


『なんとなく?』



私には子どもの頃より『正解』がわかった





義務教育で受けたテストでも、ポコンと問われた答えが浮き上がって見える~


前後の意味などぶっ飛ばし、大人が求める回答だけが目の前に差し出されてきた


皆そうだと思ってたから、まさか自分だけだなんて考えも及ばなかった


特技が露見した際、残念ながら誰も褒めてくれたりはしなかった


それどころか?

「インチキだ」

〜クラスメイトには糾弾され教師からは容赦なくハブられた



だからカンのせいで「結果」の理由なんか私にも答えられない


ハテーーっと当人である自分だって知らんし??



でもそーいった訳で犯人の輪郭?


付け加えて職業的ヴァンパイアハンターの経験値?

遭遇値?


なんだかんだでかなり立体的具体的に、人となりが脳裏にシャープに浮かび上がる


特にターゲットの考え方とかが、「こんな風?」勝手に頭の中に流れ込んでくる



「ねぇ、どう思う?」


私が「犯人がいるとして、仮定で「存在する場合」


~MAP上、潜伏先だと睨んだ場所を告げるとベルギリウスは

「さっすがー♡」

切れ長の目尻をニコリと下げる


「じゃそこでいいのね?」


「うん、変死現場と最も導線が全部と重なるのがそこ

先ず間違いないよ」


彼の「お薦めの場所」

私の「ココ」



数年前に経営破綻、巨額の負債で後継者が現れず営業を停止した巨大ビル群





ーーーー廃病院跡地群だった






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