第13話 フランス3(フォンテーヌブロー)

 昼食時、昨日好印象を持った日本レストラン『京子』を再度訪問したが、今日は一転して不愉快だった。中に入りテーブルに着いたが一向に注文を取りに来ない。日本人客がすぐ側に居るにも拘わらずにだ。あまりに不愛想なのでオーダーはやめて、カルチェラタンの日本レストランで済ませたが、こちらはまともでかなり良い味だった。

 『ロメオとジュリエット』を観ようと地図を頼りに劇場に行ってみると、別の映画が上映されていた。何故だろう? 役に立たない週刊情報誌だ。

 夕食は適当に入ったレストランで短剣焼きを食してみた。高い割に味は今一つだった。


 パリを一時離れて、フォンテーヌブローへやって来た。途中の列車内での一コマ。乗務員が何か言ってきたが、フランス語なのでさっぱり分らない。でも、前席に居た女性が英語で説明してくれた。列車に乗る前に乗車券を器械にかけてスタンプを押すようだ。知らなかった。本来ならペナルティーを取られるそうだ。


 先ずは宿の確保が必要なので観光案内所を訪ねたが日曜日でクローズだった。旅先ではどうも曜日の感覚が麻痺してしまう。土、日だけは憶えておかないといけないなと改めて思う。それでは自分の脚で探してやろうと、荷物を駅のコイン・ロッカーに預けようとしたが鍵が掛からない。私の悪戦苦闘を見かねた、近くに居た男性が駅員を呼んでくれた。

 結局、ロッカーは使えず、駅で預かってもらう事になった。ところが、その駅員さんに駅近くの良いホテルを紹介してもらう事ができた。『失敗は成功の基』。ちょっと、違うか! バス付きツインルームで一泊6フランとは安い。


 宿に落ち着いた後、フォンテーヌブロー城を探しながらフォンテーヌブローの森をのんびりと歩いてみる。静かな森歩きは気持ちが良い。

 

 翌日、フランス最後の日。フランスでは予想以上に英語が通じにくい。パリの中心街から少し離れるだけでかなり通じにくくなる。街中をフォンテーヌブロー城を意識しながらブラブラ歩いてみる。案内板を何度か見つけたが載っていない。

 午後からは公園に行ってみる。公園を一部囲むように横長の建物が建っていたが、これは城ではない。諦めての帰り道で迷子になった上、突然土砂降りに遭い踏んだり蹴ったりになったが、やがて雨は上がり道も分った。


 結局、何しにフォンテーヌブローに来たのか…? まあ、これも旅。通じない英語で、フランス語しか話さないフランス人に話しかけた。これも旅のうちだ。


 パリに戻り、リヨン駅で今夜発のオーストリア・サンアントン迄のティケットを買おうとして窓口でもたついていたら、中年のご婦人が援助してくれ、無事コンパートメントが確保できた。他人の暖かい心に触れるのは、実に気持ちが良いものだ。

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