第三章 アルプス・スキー

第14話 サンアントンスキー場1

 今回の旅の最大のハイライトであるヨーロッパ・アルプスについに到着した。2月中旬までの2か月間は、ここヨーロッパ・アルプスで本場のスキーに専念する事になる。2年前のカナダ・バンフでのカナディアン・ロッキーとの比較が楽しみでワクワクする。


 昨夜は6人用のコンパートメントに乗客3人で利用できた。思ったよりも安価だったが、その分寝心地はイマイチ良くない。今朝7時には寝台をたたんで座席に戻した。同室のかなり美しいパリジェンヌはチューリヒで下車したので、今朝はほとんど言葉を交わせず少し残念。昨夜話したときは親しい友達何人かに逢いに行くと言っていた。


 午前10時半過ぎにサンアントン駅に到着した。駅から見るアルプスはごく普通の山々であり少し期待外れ、さほど美しいとは思えなかった。

 観光案内所で紹介されたペンションに1週間連泊する事にした。良心的な宿泊費のB&B(朝食付き)で、女将さんが優しく部屋も清潔である。


 旅荷を解いた後早速、銀行で両替をしてスキーショップに向かう。スキー靴はサイズが合わないといけないので日本から持参している。スキー板は安いが深雪用のがあったのでビンディングと共に購入した。スキーパンツは手作りで有名な店があったので、記念にそこで仕立てて貰う事にしてそれまでは持参の古いので滑る事にした。アノラックはちょうど良いのがあった。


 アルプススキーの第1日目。

 起床時は雲が多かったがすぐに晴れた。その後一日中好天に恵まれ幸先が良い。6日券を購入するつもりだったが、途中からオン・シーズンになり割高になるそうなので取り敢えず3日券を購入する事にした。

 今シーズンの初滑りでもあるので最初はリフトでゆっくり滑る。思ったより雪質はハードでやや滑りにくい。午後から同じ斜面の反対側へ移動してみる。そこではTバーリフトとゴンドラが稼働している。こちらの雪質の方がソフトで深雪用スキー板には滑り易い。Tバーリフトは日本のと比較すると明らかにスピードがあり快適であるが、初心者だと苦労しそうだ。

 最後にゴンドラで最高点に上ってみた。深雪が残っており楽しく滑れた。夕方近かったので雪質は多少重くなっているが、朝一番だと最高であろう。

 適当に滑っていたら変な所に着いた。そこのTバーリフトの時刻表を見ると最終便まであまり時間がない。この辺に設置されているリフトは早めにクローズするようだ。そうしないと明るいうちに下山できなくなるスキーヤーが出るのであろう。

 Tバーリフトで上に行ったら見晴らしの良い所へ出た。そろそろ下山の時刻である。帰路コースがよく分らず若干の不安があったが、他にも何人かのスキーヤーを見かけたので彼らを意識しながら滑っていたら、すぐに案内板が見つかり問題なく下山できた。それにしても、下山中に見た東の空の青かった事。初めてのヨーロッパ・アルプススキーはこうして終わった。

 印象としては、恐ろしく広い。カナダのウィスラースキー場もかなり広いと思ったがその比ではなかった。


 2日目は一転して雪である。理想的には夜のうちにしっかり降雪があり、朝には止んで太陽が顔を出す。そうして素晴らしい大自然の中、深々とした新雪に自己満足のシュプールを描きながら滑走する。


 最初からゴンドラで最高点まで上ったが視界が悪くコースがさっぱり分らない。他のスキーヤーの後をそーっとついて行くしかなく折角の深雪ながら楽しむどころではなかった。マイペースで滑ってると、どこでどのようにコースアウトするやら。何しろ、自他ともに認める超方向音痴なんだから。


 コースを外していたら、雪女に遇えていたかも…。

 

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