天界の王女の行方③
「ガーレリア、ガーレリア、ガーレリアーーッ!」
「まままま、待って下さいぃぃぃ!」
ボクは今、『ガーレリア』なる謎人物の名を連呼しているレファスにガッツリと拘束、……
『絶対、離さない!』と、言わんばかりのその拘束、……いや、抱きしめから抜け出そうと、さっきから必死に
そんな具合で、ボクとしてはどうにもならないお手上げな状態が続いている。
レファスがこんな風になってしまった理由を、さっきからずっと考えているんだけど、本当に何が何だか……
一方、ギラファスはといえば、ボクたちのその様子を落ち着き払った態度で静かに眺めているだけで、すっかり傍観者のポジションをキープしている。ず、ずるい……
ただ、その落ち着き切った様子から察するに、レファスがこうなってしまった理由をギラファスは知っているみたいだ。
ということは、何も知らないのはボクだけってことで……
まず、その辺の事情を教えてもらわないと!
大きく深呼吸して気持ちを落ち着けると、ボクはレファスを刺激しないよう、静かに話しかけてみた。
「あのっ、レファス様……? これってどぅ、ブフゥッ!!」
ボクの発言は、『ボクの頭を抱き込んで胸に押し付ける』という、レファスの行動によって、
「ガーレリア、すまない……すまない……」
ボクがレファスの胸元でモガモガとくぐもった声を上げていると、感情を
「今まで見つけてあげられなくて悪かった。苦労をかけたね。全て僕の責任だ。……でも、もう大丈夫だよ。今まで、一人でよく頑張ったね。生きていてくれてありがとう。これからは、……これからは『
「モ、モガガッ!?(な、何ですと!?)」
レファスが感極まった声で告げたその内容に、ボクはピタリと動きを止めた。
ここまで言われると、さすがのボクにも察しがつく。
レファスが、ボクのことを “娘” だと、…… “王女の魂” だと思っているということに!
たしかに
だけど、ボクはアルの分身体だ。(まあ、実感はないけど……) だからボクは『王女の魂』……つまり、レファスの娘じゃあない……はっ!!
そこまで考えて、ボクは顔を青くした。
そ、そうだ!……『娘が生きていた!』って、こんなに歓喜しているレファスに、『違います、人違いです。残念ですが王女様は……』なんて、とても言えないよ! どっ、どうしよう……
ボクの頭を抱き込んでいたレファスが、優しい手つきでボクの頭を撫で始めてしまった。
(ひえぇぇ!)
レファスの、我が子に対するこの愛情が絶望に変わる様を想像してしまい、思わず身震いしてしまった。
(と、とにかく、今は無心だ無心、……天界に帰るまでは、とりあえず ”反応薄め“ でやり過ごして、後はフィオナさんに頼むって形に持っていけば……)
何だか、面倒ごとをフィオナに丸投げするみたいで気が引けるが、今はそうするしかない。
(フィオナさん、ゴメンなさい……)
ボクは心の中で謝ってから、悟りを開こうとする修行僧のように半眼になると……
(無心……無心……『無我の境地』発動!)
……と、『無我の境地』を発動させた。
あ、ちなみに、この『無我の境地』は、経験値を稼ぐための補助スキルだ。
主な効果は精神の集中で、滝行や坐禅などの修行、各種スキルと合わせて使用すると、その経験値が二倍になる!という優れものなのだ!
レファスのなすがままに身を任せ、ひたすらに合掌ポーズでジッとしている半眼のボク……
自分で言うのも何だけど、視覚的にはちょっと怖いかもしれない。
「その様子では、どうやら突拍子もない発想に
今まで観客と化していたギラファスが、呆れたように呟いた。
横目に見ると、眉間に寄った皺を揉みほぐしながら深いため息を吐いている。
いつものボクならムッとするところだけど、今のボクは『無我の境地』発動中……
そう! 無心状態の今のボクはそんな小さなことで、心を乱したりはしないのだ!
「レファス様、もっと直接的な言葉でハッキリと告げてやらねば、ガーレリア様には伝わらないと思うのだが?」
ギラファスが、ガーレリアの名を口にしながらチラリとボクの方を見た。
「そうかもしれないな……」
レファスが自身の腕の中……半眼で合掌するボクのことを、ジッと見つめながら困ったように呟いた。
『無我の境地』発動中のボクは、そんなことで心を乱したり……は……
……あ、あれ? 何だろう……凄く気になるんだけど……
「ガーレリア、君は『王者の洗礼』を発動させて、ギラファスを信者にしたんだよね?」
アレ?……おかしいな?
戸惑いながらも、無言で
レファスはボクの両肩を掴むと、ボクの顔をまっすぐに覗き込みながら、真剣な顔で言い聞かせるように話し出した。
「まず、初めに言っておかなければいけないことがある。気が付いているかもしれないが、実は僕は元・王様でね……『王者の洗礼』については誰よりも詳しいんだよ。いいかい? あのスキルは、誰にでも使えるものじゃない。『王者の洗礼』のスキル名からも分かるように、王家の……それこそ直系にしか発現しないスキルなんだ。これがどういう意味か分かるかい?」
レファスは、王家と『王者の洗礼』の関係性について、自身が王族であったことと絡めて一息に告げた。
レファスの言葉が頭に染み込むのに、少し時間がかかってしまった。
ジワジワとその意味を理解していくにつれて、発動中の『無我の境地』が徐々に解除されていく……
そして、全ての事情を理解したボクのこめかみから、タイミングよく一筋の汗が頬を伝って流れ落ちた。
「つまり……君は、僕の娘なんだ。君こそが、僕がずっとさがしていた王女の魂なんだ。分かってくれたかい?」
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