まさかの展開!?③
よし! これ以上、面倒な事になる前に、この件を軽く流してしまおう!
そう思ったボクはサッと腕を振って『 “亜空間” 収納庫』を開くと、素早く腕を突っ込んで、そこから『番号札』を取り出した。
「レファス様、番号札です。既に転生データが入っていますから、一度初期化した方がいいと思います」
そう言って、何食わぬ顔でレファスに『番号札』を手渡すと、手首のスナップを効かせながらサッと背後の『収納庫』を閉じた。
ふう、これで『番号札』の件も片付いたことだし一安心だ!
しかし、安堵のため息を漏らすボクの目の前には、驚いたように目を見開いているレファスの顔が……
ん? どうしたんだろう? 滑らかな動きで『番号札』を手渡されたからビックリしちゃったのかな?
しばらくの間、レファスは呆気に取られたような顔でフリーズしていたが……
「ガ、ガッロル君! ちょっと待った!! 君のナチュラルな行動で何気にスルーしそうだったよ! さっきのは『空間収納』だよね? 『分身』のスキルといい、君は一体いくつのスキルを習得しているんだい!?」
……と、夢から覚めたような顔でボクに詰め寄ってきた。
おぉう……
すごい勢いだったから、一体何を聞かれるのかと身構えてしまったけど、何の事はない。習得スキル数についての質問だった。
厳密にいうと、ボクの『収納庫』は『空間収納』のスキルとは、ちょっと違うんだけど……
まあ、用途は同じだからその説明は省略してもいっか。
それより、習得スキル数かぁ……隠すようなことでもないからいいんだけど……えぇっと、いくつだったっけ?
「うぅ〜ん、いちいち数えたりしていませんから正確な数はちょっと……でも、下界のスキルは全部持ってるはずです。後は、ボクが考えたオリジナルのスキルがいくつかですね」
ボクがそう答えると、レファスが急に真顔になってしまった。そして……
「下界……オリジナルスキル……」
……と、抑揚のない声で呟くと、ボクのことをジッと見つめ出した。
ん??……あっ、そうか。
きっと『オリジナルスキル』って単語に反応したんだ。
うわっ、『オリジナルスキル』なんて言っても大した事ないものばかりなのに……
変に期待されちゃったら大変だ。早く説明しておかないと……
「あっ、いや、オリジナルって言っても、下界のスキルを応用した程度の大したことないものがほとんどですよ? 壊れた食器を
説明しながら、ふと、思い出した。
ボクにも唯一、自慢できるスキルがあったということを。
ふっふっふっ……似たようなスキルはいくつもあるけど、これだけの性能のものは無いと自負しているっ!
「君が言うくらいだから、相当なスキルなんだろうね。一体……どんなスキルなんだい?」
レファスがやけに真剣な、それでいて妙に落ち着いた口調で聞いてきた。
途端にその場に漂い始めたピリッとした空気感……
そんなレファスの様子も、空気感も、感じていないわけではなかったが、ボクはそれを軽く受け流してしまった。
何故なら、この時のボクは『嬉しい!』って気持ちの方が上回ってしまっていていたから……
そう、ボクは完全に舞い上がってしまっていたんだ。
だって、自身が開発したスキルについて誰かに聞いてもらえる機会なんて、今まで全く無かったんだもん……
「
「……えっ?」
ふんすっ!とボクが鼻息も荒く発表したスキル名に対して、レファスの反応は今ひとつだった。
そりゃあ、ボクに名付けのセンスが無いってことは知ってるけど、その名から、どんなスキルかくらいは分かるだろうに……
そう! ボクが下界で姫さまにかけた、この『
コレこそ、ボクの一押し『オリジナルスキル』だ!
その効果は10年継続! 高い防御力を保ちつつ、日常生活に違和感を感じさせない絶妙なバランスで、あらゆる攻撃を
「だから、『
何だか深夜の通販番組みたいな言い回しになってしまったけど、ここまで説明すればさすがに分かってくれるだろう。
言いたいことを言い尽くしたボクは、再びレファスに、ふんすっ!と、ドヤ顔を向けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
——(レファス視点)——
自身の『オリジナルスキル』について語り終わったガッロルが、まるで人懐っこい仔犬のようなキラキラとした瞳で僕を見つめている。
その瞳が、『褒めて?』と言っているようで……
この子は、自分の能力がいかに優れているか分かっていないらしい。
始めは、天界版の『分身』スキルを習得したことで覚醒者になったとばかり思っていたが、どうやら違うようだ。
先程、ガッロルが使っていた『空間収納』だが、このような収納系のスキルは全て下界のスキルだ。
しかし、下界のスキルは肉体に付随するものばかりなので、天界で使うことはできないはずなのだ。
そんな、肉体に付随するはずのスキルを、この子は魂だけの状態で使いこなしている。
しかも、聞けば下界のスキルを全て習得しているという。
それだけでも規格外なのに、それを応用してオリジナルスキルまで創造してしまうとは……
天界人の中ですら、これほどの能力を持った者は数えるほどだ。
「…………君、そのスキルは常識を覆すほど凄いものだってこと、分かっているかい?」
ガッロルのその軽い認識を改めさせるために、十分な間を開けて、真剣な声音で問いかけてみた。
しかし……
「ありがとうございます!!」
ガッロルは『これ以上ない!』というほどに、嬉しそうな笑顔を僕に向けた。
「………………」
ダメだ、通じない……
今のガッロル君の心には、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます