まさかの展開!?②
「さあ、そろそろ下界に降臨するための準備に取り掛かろうか。今、霊界政府に、君の番号札を送るよう、連絡を入れてあるから間も無く届くはずだよ」
レファスは、そう言いながらソファーから立ち上がると、『付いてくるように』といった感じに、促すような視線をボクに向けた。
ああっ! そうだっ。番号札のことをすっかり忘れていた!
着実に『性別固定』に向かって追い詰められている、という焦りで忘れていたが、レファスから『番号札』という単語が出てきてギクリとしてしまった。
「あっ、その、……番号札なのですが、実はアルが霊界の職員から受け取っていまして……で、今はボクが持っているんです」
ボクは、しどろもどろと、番号札についての事情をレファスに語った。
もちろん、悪い事をして手に入れたものではないけれど、天界政府が探している番号札を、今、自分が持っている、という事実に不安を感じてしまって、どうしても恐る恐る、といった態度になってしまう。
すると、レファスの態度が、急にギクシャクとしたものに変わった。
ハッと目を見張ったかと思うと、「そ、そうなんだね。うん……」と狼狽え気味に返事をした後、落ち着きなく視線を彷徨わせ出した。
レファスのその様子を見て、『これは、自分が思っている以上に重大なことなのでは……』と、不安が広がった。
ボクにとって、番号札は『転生周回のための道具』としか思っていなかったけど、考えてみたら、コレ、ものすごく貴重なモノだったりして?
(一人に一つずつ、全ての魂に割り当てられた替えの利かない代物って考えたら……うあっ! きっとそうだ! どうしよう……知らなかったとはいえ、このことで転生課に迷惑をかけてしまったら……)
そう思い至ったボクは、自分の顔からサッと血の気が引いていくのが分かった。
「も、もしかして……持ち出してはいけない物だったのですか? この事で、その、……転生課の職員が罰せられたりはしませんよね?」
ボクは、チラチラと上目遣いにレファスの顔色を窺いながら、ビクビクと質問を投げかけた。
「うっ……ま、まあ、ね……でも、多少のお咎めは、あるかも知れないね……」
レファスは、落ち着きなく視線を彷徨わせながら、『お咎め』という言葉を口にした。
ボクは、その言葉を聞いて冷や汗をかいた。
だって、転生課はリストラ対象者の流れ着く部署だ。ただでさえ立場が悪いのに、そんな事になってしまったらきっとただでは済まないだろう。
ダ、ダメだ! ランスに迷惑はかけられないっ。
「お願いします! どうかそこは、不問にしてもらえないでしょうか! ボクの『転生したい!』という気持ちが、知らず知らずのうちに、職員に対して圧力となっていたのかも知れませんから!」
(ボクの真剣な思いを伝えるためにも、ここは『強めの眼力』で!)
そう思ったボクは、真摯な思いを目力に込めて、ジッとレファスを見つめ続けた。
するとレファスが、何故か急にあたふたとし始めて、そして……
「わっ、分かったよ。その様に連絡を入れておくから。だから、ほら、そんな顔しないで?」
……と、気遣う様な優しい言葉と共に、ボクにハンカチを差し出してきた。
訳が分からなくて、しばらくの間、目をパチクリさせながらそのハンカチを見つめていたが……(もしかして、これで涙を拭けってこと?)……と、いう結論に思い至った。
確かに、目力を込めすぎて少し目が潤んだような気はする。だけど涙を流すほどではなかったはずだ。
にしても、アルならともかく、まさかボクが泣き出すと思ったの?
そう思うと、この状況が次第に可笑しくなってきた。
「ふ、ふふ、あははっ、あ、ありがとうございますっ。でも、大丈夫ですよ?」
そう言って、ボクはレファスに笑顔を向けた。
「……君は、……アルちゃん……ではない……よね?」
「ん? はい、違いまっ……「ッ、パパ! 間違えちゃイヤよっ? 私はここよ!」(ぐはぁっ!)」
番号札の話題が出てから、ずっとダンマリを決め込んでいたアルが、唐突に表に現れると、プクッとほっぺを膨らませながらレファスに詰め寄った。
もちろん、プン!って感じに、可愛く腰に手を当てることも忘れていない。
すっかり油断していたところに現れたアルに、ボクは会心の一撃をお見舞いされてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おまけ・『その時フィオナは』
(フィオナの脳内)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
——壁際で静かに控え、事の一部始終を静観していた不死鳥フィオナは、先のやり取りを真剣な表情で思い返していた——
初撃の『庇護欲をそそる不安げな眼差し』……
第二撃の『ちょっと青ざめた顔で子ウサギの様にビクついて送る上目遣い』……
それに続く、第三撃の『純真な、潤んだ瞳で懇願』する様は、それだけでもKO級なのに『キョトン顔』からの『無邪気なエンジェルスマイル!』は反則よっ!
アルちゃんは『小悪魔系女子』だけど、ガッロル君は『清純派、天然無自覚タラシ』ね!
さすが主人格……胸キュン破壊力が半端ないわ。
男の子でこれほどの破壊力なら、女の子になったら、とんでもない事になるんじゃないの? やだっ、見てみたいわっ!
——クールビューティーとして知られる彼女は、その印象とは打って変わって『熱狂的恋愛脳』の持ち主だった——
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