天界への強制連行③
「神気を有していらっしゃる上に、記憶の保持者となれば間違いなく高位の覚醒者でいらっしゃいます。覚醒者審査も免除になりますので、このまま天界へご案内いたします」
「あ、あんまりだ……」
(調べもしてくれないだなんて……もしかしたら、違うかもしれないじゃないか……。冊子で見た覚醒者の定義とは、チョット違うような気がしてたのに……)
「あの……せめて測定だけでもやってみてはいかがでしょう?」
ガクッと肩を落としていたら、ランスが気遣うような声で話しかけてきた。
おずおずと話を切り出したランスのその手には、ハンドガンタイプのLv.測定器が握られている。
「すでに測定の必要はありませんが、ガッロル様に納得していただけるのであればよろしいかと思います」
モリーがそんな風に容赦なく、トドメの言葉をかけてくる。
くぅぅ、そんなに念を押さなくてもいいじゃないか……。
「ガッロルさん、どうします?」
「……お願いします」
もう天界行きは避けて通れそうもないけど、せめて最後に今までの成果は見ておきたい……
ボクが差し出した掌にランスが測定器を押し当てると、すぐに測定終了の電子音が鳴った。
「!?っ……す、凄い…………」
測定の結果を確かめたランスが一言、そう呟いて固まってしまった。
一向に動かないランスの横から測定器を覗き込むと、ディスプレイには現在のLv.と累計経験値、次のLv.までに必要な経験値が表示されていた。
「えーっと? 現在のLv.は99、…… ん? えっ!? 99!? MAXって確か100だったよね? の、残りの必要経験値は!? 735?」
その結果を見て、ボクは瞳に怪しい光を宿らせながら、ゆらり……とモリーを振り返った。
そんなボクと目が合ったモリーは、僅かに肩を震わせた。
次の瞬間、『ボンッ』という衝撃音を発しながら、ボクは残像を残すほどの素早さで、数mほど後ろに控えていたモリーに詰め寄った。
その際に生じた風圧は、モリーのハーフアップにしたコバルトブルーの髪を激しく掻き乱した。
驚きに目を見開き仰け反るモリー。
そんな彼女に構う事なく、ボクは次のモーションに入った!
モリーからは、ボクの姿が掻き消えたように見えたことだろう。
息を呑んでいるモリーの足元で……
「お願いですっっ!! あと一回、一回だけでいいから、転生させてください!! カンスト目前なんです! お願いします! 見逃して下さいぃぃぃ!!」
「ちょっ、ちょっと、ガーラっ、何してんのよ!」
アルに静止されながらも、ボクは片膝をついたお祈りのポーズで、往生際悪く必死にモリーに懇願した。
天界行きを覚悟したからこそ測定したけど、この結果を見たら黙っていられないじゃないか!
「ううっ、……ガ、ガッロル様、そんなに神気を放出しないでください。……お、落ち着いてくださいっ……」
「え? ……あっ、……」
苦しそうな表情のモリーを見て、ハッと気がついた。自分の中から、感情の高ぶりと共に何かが溢れていることに。
(こ、これが神気? あわわ、だとしたら、早く抑え込まないと大変だ!)
「スゥ〜、フゥゥゥ〜〜〜ッ」
ボクは深呼吸を繰り返し気持ちを落ち着けながら、その神気だと思われる何かを抑えることに集中する。
その甲斐あってその何かは徐々に落ち着いてゆき、最後にはボク自身の意思で自在にコントロールできるようになった。
(なるほど。なんだ、思ったよりも簡単だったな。一度コツを掴んだから、もう大丈夫そうだ。これなら……)
「……ふぅ、ガッロル様。転生は諦めてください」
もしかして、転生させてもらえる可能性が出てきたのでは?と思っていたら、先にモリーに釘を刺されてしまった。
「っ!そ、そんな!……も、もうコツを掴みましたので大丈夫です!」
「私たちには神気耐性がありますが、一般の者には今の状態でもキツイかと」
必死の食い下がるボクに対して、モリーは淡々と正論で答えを返す。
ぐぬぬ……
「で、でも、今まで転生してきましたが大丈夫でしたよ!?」
ボクはそんなモリーに、ちょっと子供っぽい言い訳で反論した。
『境界を統べる聖騎士』なんて恥ずかしい二つ名で呼ばれて、少しは人気があったことは認めるけど、その熱量は人が人に向ける常識的なものだった。
決して、神気の影響を受けたものではない。
「今まではガッロル様の器が大きく、辛うじて体から神気が溢れなかっただけでしょう。Lv.が上がって能力も強くなっていますので、今までのようにはいかないかと」
しかし、一縷の望みをかけたボクの言い分も、モリーにアッサリと否定されてしまった。
「そ、そんなぁ、……」
……Lv.の確認、……しなければよかったかもしれない……
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