転生課パニック②
職員はフロアに出てくると、接客スペースに積み上げられた書類をダンボールの中へと慌ただしく片付け始めた。
「今、新型の測定器を準備していますから、ちょっとだけ待って下さい」
熱い眼差しをこちらに向けながら、卓上のダンボールを片付ける職員が告げた“新型”という言葉に、ボクはピクリと頬を引き攣らせた。
そんな事されたら困るんだけど……
「……旧式で構いませんから、今すぐ検査してもらえませんか?」
「すみません。上からの通達で、ガッロル様の測定は特にしっかりやるよう言われてるんです。測定結果によっては上の者との面会がありますので、よろしくお願いします」
ものすごい速さでテーブル周りを片付けた職員が、椅子を勧めながらこちらの申し出を一刀両断にした。
(っ!? ピッ……ピンポイントで目を付けられている!?)
その事実に得体が知れないものを感じて足が震えたが、なんとか勧められた椅子に腰掛けた。
「機材の準備ができるまで、ここで待っていてください。準備が整ったら声を掛けさせてもらいます!」
職員は頭を下げるとカウンターの奥へ戻っていったが、すぐさまヘッドセットを装着すると、どこかへ連絡を入れているのが見えた。
やはり、機内で客室乗務員から感じた違和感は気のせいではなかったみたいだ。
でも、何故……?
機内で騒ぐ客なんて珍しくもないし、アルのような妖精が霊界に居ないわけでもない……
それじゃあ、あの客室乗務員に目をつけられてしまった、とか?
いや、仮にそうでも、ここまでの事態にはならないはずだ。
ダメだ、思い当たることが無い!
でも、これだけは分かる。
今回は、すんなりと転生させてもらえない可能性が高い。
「あ〜ぁ、次は女の子になれると思ったのに残念だわ」
「!? お……覚えてたの?」
有耶無耶にできたと思っていた性別変更だけど、誤魔化せていなかったみたいだ……
ん? でもそうなると、この状況はある意味、助かったと言えるのかもしれない。
そんな考えが顔に出ていたからか、笑顔だったアルが急に真顔になって聞いてきた。
「ねえ、ガーラ。そんなに女の子になるの、イヤ?」
いつもの軽い口調ではない、真剣な声だ。そんな風に問いかけられて驚いてしまった。
どう答えていいのか分からず、言葉に詰まってしまう。
「っ、………………」
「そっか、分かったわ……」
ボクの無言をどう捉えたのか、アルは珍しく考え込んでしまった。
「えーっと、アル……?」
「そうよ! そうだわ! いいこと思いついちゃった! 私って天才かも!」
心配になって話しかけた瞬間、弾けるような元気な声でアルがはしゃぎ始めた。
何となく嫌な予感がする。
アルの言う“いいこと”……これが、あまり良かった試しがない。
「……な、何を思い付いたの?」
「ンフフ〜」
教えてくれるつもりはないらしく、アルはフワリと天井近くまで飛び上がると、呼び止める間もなくカウンターの向こう側に飛んで行ってしまった。
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