転生課パニック③
アルの行動は何だか心配だが、今は他に考えないといけないことがある。
資材だらけのフロアに1人残された形になり、ボクは改めて自分の置かれた状況を整理してみることにした。
まず、どういう訳か霊界政府は
そして、その結果によっては、上の職員と面会しないといけないらしい。
ボクは間違いなく面会コースだろうな……
正確なLv.数は、自分自身でもよく分かっていないが、転生周回を始めたばかりの頃、サイノカ街で購入した簡易測定機で計測した時には既にLv.57に達していた。
数回使用しただけで壊れてしまうような粗悪品ではあったが、計測能力に関しては正確だった。
そして現在は、あの頃より間違いなくLv.は上がっているはずだ。
ということは、下手をするとその場で、即、天界送りの手続きが行われる可能性が高い。
で、天界は一度入国すると、よほどのことがない限り下界には降りられない。
ってことは……はっ!? それってつまり、転生を続けられないってことじゃないか!? そ、そんな!!
何とか転生を続けられる方法はないかと頭を悩ませていると、転移ゲートから何者かが現れた気配を感じた。
ここからでは、壁のように積み上げられた資材に遮られて確認できないが、ゲート稼動時の淡い輝きがボンヤリと天井を照らしている。
「ぬぉっ! なんだ、この有様はっ!……ったく……」
山積みにされた資料の向こうから、倉庫のようなフロアに驚いた謎の人物の声がここにまで響いてきた。
もう、測定器の準備ができちゃったの!? ボクはまだ、何の対策案も出せていないっていうのにっ……ていうか、情報が少なすぎてどう対応したら良いのか分からないよっ。
「誰か! 誰かいないのか!?」
謎の人物が、フロアの乱雑具合に文句を言いながら職員を呼ぶ声がドンドンと近づいてくる。
そのせいでますます焦ってしまって、考えがまとまらずソワソワしていると、一人の職員がブツブツと文句を言いながら資材の影から現れた。
管制官の制服を纏ったその職員は、ボクの存在に気がつくと、ビクッと体を揺らした。
だけど、これにはボクの方がビックリした。何せ、空港の中でも中核的な人物の登場だ。
この、サンズリバー空港の頭脳と言っても良いような管制官が、リストラ職員の漂着先である、この転生課に現れるなんて誰が想像すると思う?
一体、ここには何の用で……
「こ、これは失礼……ガッロル様。もう、おいででしたか」
驚きの表情を急いで元に戻した初老の男性が、軽く頭を下げた。
(ど、どうしてボクの名前を!? もしかして、この人が入国審査官の言っていた“上の者”!?……い、いや、ボクはまだLv.測定していないから、それだと辻褄が合わない。それに、この人はボクがここにいたことは知らなかったみたいだし……)
どうやら、空港内で情報が
とりあえず相手の出方を見てから対応を考えようと結論を出して、ボクは曖昧な返事をしながら軽く会釈を返した。
「どうも……」
そう……ボクにとっては何気ない会釈のつもりだった……
なのに、軽く微笑んだボクの顔を見た管制官が、突然ピタリと動きを止めた。
そして、直立不動のまま、放心したように固まってしまった。
(!? こ、これは……!?)
この感じは、客室乗務員や入国審査官が見せた反応と全く同じものだ。
いったい何が起こっているんだ?
なんだか得体の知れないものを感じて……ちょっと怖いよ。
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