転生課パニック①
旧式の転移ゲートを抜けると、雑多に荷物の積み上げられた古めかしいフロアへ出た。
「うわぁっ、また荷物が増えてるー!? カウンターが見えないじゃない」
「ヴ〜ン、次は無くなっているかもしれないな。ここ……」
そんな事になったら困っちゃうなぁ。転生課を無くさないでって嘆願書でも書こうかな?
もちろん匿名で……
そんな事を思いながら倉庫と化した転生課のフロアを、アルと2人で奥に進む。
積み上げられた荷物をすり抜けると、カウンターの向こうの事務机で一人の職員が、ぼんやりと窓の外の景色を眺めながら座っているのが見えた。
ボクはカウンターに番号札を置きながら、こちらに背中を向けて座る職員に声をかけた。
「お願いします、転生したいのですが……」
「うわっ!」
ボクの声に驚いた職員が、宙に浮いてしまいそうなほどに体を跳ねさせた。
びっくりさせるつもりはなかったのだが、リラックスしきっていたのだろう。
まあ、
呑気にそんな事を考えていたら、その職員は風切音が聞こえてきそうなほどの勢いで肩越しに振り返った。
ちょっと怖い……
職員はボクの姿を確認すると、驚いたように目を大きく見開いた。
「えっ、本当に来た……」
本当に来た? ……何だろう、すごく嫌な予感がする。
その言動に妙な違和感を感じたボクは、じっくりとその職員を観察した。
霊界航空のイメージカラーの赤や黄、紫を使った極彩色の制服。
その胸には、『入国審査官』の証であるバッジが輝いている。
……えっ、入国審査官!? ど、どうしてそんな人が転生課に!?
『入国審査官』とは天界への入国をジャッジする優れた鑑識眼の持ち主で、審査のプロだ。
そんなエリートが、なぜこんな所にいるのか分からない。
けれど、ボクが高レベルだということを見極められたりしたら面倒なことになりそうだ。
うん、ここは一旦体制を立て直そう!
『アル……少し時間を空けて出直そう』
『うん』
アルにだけ聞こえるよう小声で囁いたボクは、番号札を取り下げようとカウンターの上に手を伸ばした。
しかしその気配に気づいたのか、職員は猛然とカウンターまで走り寄ると——
「はっ、はいぃ! 確かにっ! 確かに承りますっ!!」
「っ!?」
バンッ!と物凄い音を立てながら『強豪競技かるた部員』さながら、気迫溢れる勢いでボクの番号札を掠め取ってしまった。
っ!!き、気合いがっ、職員の気合いが怖いんだけど!?
そんな気迫に満ちた職員に気圧されて、ボクは思わず半歩ほど後退った。
奪い取った番号札を『絶対返さない』とばかりに両手でしっかりと握り締めている職員が、どうしたことか今度は
男性職員から向けられるその視線は、ボクが生まれて初めて体験する類のモノで……
なっ!? ななな、何なんだ一体!?
『……ねえ、ガーラ。あなた、あの人に『虹色に
「ぶっふぉっ!?」
アルが独特の世界観から発想した、とんでもなく変な言語をボクの耳元で囁いた。
意味はよく分からないけれど『禁断の〜』なんて言葉から、碌でも無いことであるのは間違いなしだ。
『なっ、なに訳のわからないこと言ってるんだよ!』
大声で叫びそうになったけど、そこはなんとか堪えることができた。
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