間話 機長は千思万考の末……
「機長、今、よろしいですか?」
接客を担当している乗務員から内線連絡が入ったのは、空港到着40分前のことだった。
「どうした?」
余程のことがない限り、コックピットとは連絡は取らないことになっている。
何か良くない……重大な事態に陥っているのかと、その場に緊張が走った。
「お客様の中に、覚醒者と思われる方がいらっしゃいます」
「なっ!? それは、確かなのか?」
想定していた事態とは真逆の、良い意味での想定外な事態に、操縦桿を握る手が震えた。
事実なら、霊界政府に急いで連絡を入れなければならない。
「はい、薄っすらとですが神気を発していらっしゃいましたし、使徒さまも従えておりましたので。ただ、ご自分の状態をまだ理解されていらっしゃらないご様子でした」
と、いうことは覚醒したばかりなのかもしれない。しかし、本当に覚醒者なのかの判断はここでは難しい。
空港でしっかりと検査をしたほうがいいだろう。
「了解した。くれぐれも失礼のないように。空港には連絡を入れておく。 ……で?……どのようなお方だった?」
顧客のプライベートな部分は、聞くべきでないことは重々知っているが、どうしても好奇心を抑えることができなかった。
「機長も気になっちゃいますかぁ!? そうですよね!? 聞いてください! 若い成人男性なんですが、一見華奢に見えて、ものすごい筋肉美の細マッチョなんです! ボタンの外された襟元から垣間見える鍛え上げられた筋肉が、発狂しそうなほどセクシーでした! それに、涼しげな青い瞳が綺麗な超イケメンなんですぅ。中性的なところが神秘的な印象を一層際立たせていて、きっと生前はみんなを虜にしていたに違いないですよっ! 機長!!」
「お、……おぉぅ……」
生真面目で柔らかな口調が特徴として知られている彼女が、突如として豹変してしまった。
私情が入ってからの暴走具合に驚きを隠せない。
「分かったから、……君はちょっと落ち着きなさい」
興奮する客室乗務員を宥めてから内線を切った。
これから空港はちょっとした騒ぎになるんだろうな、と思いながら管制塔へと連絡を入れた。
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