元同僚から思わぬ猛攻を受けました④

 ヴァリターとは車内で会話を重ねるうちに、なんとか(表面上は)普段通りに接することができるようになった。


 (ま、まあ、突然プ……プロポーズされて驚いたけど……だけど、それには王家の企みの阻止っていう理由があった訳だし?)


 とか……


 (ヴァリター自身の気持ちだって、ボクが甦って(?) 気持ちが昂っているだけっていう可能性もあるし?)


 ……などと必死に自分に言い聞かせ、『今は、そんなに深く考えなくてもいいかな』ってことにして、ボクは現実逃避を決め込むことにした。


 逆に『ヴァリターが来てくれてよかったんじゃないかな?』って思うことにした。

 だって、ボク一人だとヴァリターの言う通り、なすすべもなく王妃に担ぎ上げられていた可能性が高いからね。


 今頃、シューハウザー家に王家の使者が来ているんじゃないかと思うとゾッとするよ……


 ということで、王家の動きが気になるから、ボクがここにいることがバレる前に、サッサと探知機をセットして帰ろう!


 ちなみに、車内でアルのことをヴァリターに紹介しようとしたら、まさかのアルの方から断わりが入ってしまった。


 アルいわく『私がいるって分かったら、彼が積極的に来られないじゃない!』と、変なことを言われてしまった。何だよ、それ……


 城内の片隅に位置する第三騎士団の宿舎に到着すると、車寄せのある正面玄関で、ボクはヴァリターと共に馬車を降りた。


 早速、宿舎の玄関扉を開けてロビーに入る。


 飾り気のないロビーはガランとしていて、数人の下働きの者が『今のうちに!』とばかりに掃除に精を出している他は、とても静かなものだった。

 

「皆、日常訓練に行ってるようだな……ガッロル様、そちらの方へは?」

「ん〜、時間があれば顔を出そうかな? ボクはちょっと自室の様子を見てくるよ」


 ボクは『それじゃ!』って感じで軽く手を上げると、ヴァリターをその場に残して、宿舎最上階にある団長室(自室)へ向かい、ダッシュで階段を駆け上がった。


 ……いや、別に、ボクは早く団長室へ行こうとしただけなんだ……

 決して、ヴァリターの近くにいたら『ソワソワと落ち着かない気分になるから』とか、『まともに顔が見られないから』とか、そんな理由じゃなくて……ゴホッ……


 と、とにかく! 聞けば、まだ新しい団長は任命されていないから、団長室は今もボクの部屋ってことらしい。


 なので、違和感なく別行動を執れる元・自室に向かうことにしたってだけなんだ。


 何せ、これは天界のお仕事で、しかも誓約書の対象にあたる神気探知機の設置業務。


 その仕事内容も存在も、ヴァリターに知られるわけにはいかないからね。

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