第84話 屈折した優しさ
「なら、出し物って、なるべき演目とかの方がいいっすよね?ビンゴ大会とかそんなもんよりも」
「別にそれには拘らないよ。流石に僕のわがままとは言えど、この忘年会自体を僕の告白の演出装置だとは思ってないしね。みんなに楽しんでほしい、それも本心だ。それに、大勢のまえでお膳立てまでされてフラれたら、なんて考えたくもない」
やけに飄々とした口調で肩をすくめる二宮会長。
俺は、二宮会長の意思を聞いたのちに、直近で俺たち演出班が抱えている問題について相談をして今に至る。どうやら最悪俺が思いついたビンゴ大会の案でもいいようではあるが・・・
俺は会長のことを考え、できれば盛り上がるような演目をしたい
他人の幸せのために、なんて俺らしくないが、すっかり俺は会長のあの真剣な顔、気持ちに、心を打たれたのかもしれない。それがなんでなのかはわからない。ただの俺の気まぐれだ。俺に好きな人がいて、その上での共感、同情ではないのは明らかだが。
「あくまでも今回のは僕の中での逃げ道をなくすためだ。まぁ無茶を言ってるのは承知だよ。だから当てがないなら無理に代案を立てろとは言わない。むしろ僕の方が謝りたいくらいだ」
「別にいいっすよ。それに、無理だって決まった訳じゃない」
「・・・・」
「なんすか」
会長は俺を見て目を丸くしているので、何か変な虫でも止まっているのかとぶっきらぼうに俺は尋ねると、会長はその顔をくしゃりと破顔させ
「いや、君は意外と優しいんだなって思っただけだよ」
と言った。
「ただこだわりが強くて頑固なだけですよ」
「そうか。僕も一緒だ。意外に君は生徒会に向いてるかもしれない」
「やめてください縁起でもない。俺のモットーは平々凡々です目立ちたくなんてないですよ」
「そうか、そりゃ残念だ」
会長は高笑いをして歩き出す。片手を上げて別れを告げられた俺も、そろそろ仕事に戻ろうと、会長に背を向けきた道を戻った。
空き教室に戻ると、俺はやはり落ち込み気味だった二人に告げる。
「おい、やるぞ。まだ終わった訳じゃない」
二人は不思議なものを見るような目で俺を見ている
なんだ、そこまで面倒後に積極的な俺が奇異に映るかこの野郎!?
せっかく人が人助けをしようと思い立ってるってのに
「えーと、これまで散々断られてきたわけで・・・。今更どうするんですか?」
「もう一回頼みに行く」
「正気?」
「あぁ。いいか?最悪な、相手が頷くまで部活動の妨害すればいいんだよ。頼んだぞ朝日」
「そっか、それだとやりますって言うかしかないよね、朝日さん」
「なんで二人とも私を見るの!?やらないからね!?」
まぁ流石にこれは冗談にしても、だ。俺の案自体の本筋は変わらない。朝日にもう一度色々な部活動をあたってもらう。ただそこで大事なのは、部を相手にする事じゃない。
「ただ今回は、部長だとか、特定の誰かに絞ってお願いして参加を交渉する。そしたら部単位でお願いするよりは可能性は出るだろ。それと出演時間を短くしよう。それなら参加してくれやすくなるだろ」
「それはそうかもだけど・・・そんなうまく行くかな」
「知らん。こればっかりは運と朝日のこれまでの行い次第だろ」
「さっきから私の役割重いよね!?」
しょうがない。こればっかりは俺や茉白では無理な問題なんだから。
俺には友達どころか知り合いもいないし、茉白は平々凡々。つまり迷惑ごとを請け負ってくれるほどに信頼度や友好値のある友達はいないのだ。
「善は急げだ。行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ〜!」
俺は聞き飽きた朝日の情けない声を背に、一足先に教室を後にした。不思議ともう、嫌な気持ちは一切なくなっていた。
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