◇11
聖女召喚でこの世界に来て、聖女ではないと言われてしまい、このカディオ公爵家に引き取られてしまった。今の所何も不自由な事はないし、むしろ充実している。だから大人しく静かにここで過ごそうと思っていた。
けど……
「あの、これ、は……?」
「首輪に決まってるだろ」
「……」
「ペットに首輪をつけるのは当たり前だろ」
目の前に出されたのは……青い宝石の付いた、首飾り。これが、首輪、ですか……?
何も言わせてもらえず、そのまま首に付けられてしまったのだ。
ずっと、私は公爵様にペット扱いにされてしまってる。最初はからかってるだけですぐにその冗談は終わると思っていたのに、まだ続いてる。
もしかして、公爵様って前からペットが欲しかったとか……?
「――これ、絶対に外すなよ」
「ハヒッ……」
すごく、怖かった。頭をコクコク何度も頷くと、怖い公爵様はいなくなっていて、今度は頭を撫でてきた。本当に、よく分からない。
そして、次は大きなプレゼントボックス。中には……
「よ、洋服……?」
「ペットに服を買ってやるのは飼い主の役目だろ。違うか?」
「え、えぇと……」
こ、こんなにいっぱい……も、もらってしまっても、いいのかな。
毎日毎日、そんな公爵様に困ってしまう。一体公爵様は何を考えているんだろう。これ、いつまで続くんだろう。
そして今日も、抱っこされて執務室に連れてかれてしまった。降ろされると思っていたのに、そのままソファーに座ってしまったのだ。靴を脱がされ、そのまま横で公爵様の膝に乗せられて。グリフィスさんに資料を持ってくるよう言ってそのまま仕事を始めてしまったのだ。
どうしたらいいのか分からず、そのまま黙って近くにいたグリフィスさんに助け舟の視線を送ったけれど……無理ですとでも言いたそうな視線を帰されてしまった。これは、大人しくしていろという事なのだろうか。
「あの……」
「何だ」
「邪魔、じゃ、ないですか……?」
「ペットを放ったらかしにして腹を曲げられたら大変だろ」
「……」
……らしい。そのまま、用意させていた焼き菓子を口に突っ込まれ、もぐもぐして大人しくしていた。忙しそうだなぁ、と思いつつ。でも、話している内容とかは聞いても全然分からない。今まで平民だった私に理解できるもののはずがないのは分かっているけれど。
でも、こんなに色々とプレゼントしてくれるし、ペットだって言っても優しくしてくれる。だから、公爵様って怖い人じゃ、ないのかな。
そう、思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます