第243話 調教? いや報復です!!

 俺は魔法射撃場で口論を続けている集団からシルファさんを連れ出し、シルファさんの執務室に移動した。


「俺のお世話係の変更を求める! 早急に手配してくれ! プリちゃんだけはダメだ!」


「どうなさいました? やはり何かプリアが粗相を致しましたか? お世話係の変更は当然致しますが、できれば理由を教えていただけるとありがたいです。内容によってはプリアに罰を与える必要がありますから」


「粗相といえばそうなるのか? あんな変態が近くにいたら駄目に決まっているだろ! 俺の言葉だけで性的絶頂してしまったぞ!」


 何故か左胸を抑えるシルファさん。


「言葉だけで性的絶頂……。ジョージ様……。貴方は午前中から何をなされているのです……。ジョージ様の性的嗜好については何も言いませんが、せめて日が落ちてからお願いできますか?」


「何もしとらん! それに俺の性的嗜好は至って普通だ!」


 あれ? 何で俺は大声で自分の性的嗜好を宣言しているんだ? どんな羞恥プレイ?


「あの……。御言葉を返すようですが、決して普通ではないかと……。私はそれを身をもって経験致しましたから……。それでプリアにどんな言葉をかけたのです?」


 う、なるほど……。シルファさんには全裸正座猫耳謝罪をさせたからなぁ。でもあれは芸術だもん。


「ちょっと問題が生じる可能性を感じたから、軽く脅したくらいかな? 俺の最悪の人に危害を加えようと考えているのなら八つ裂きにするぞって」


「あぁ……。それは……。駄目です……。それはジョージ様がいけません。私にはプリアの気持ちが痛い程わかります。共にジョージ様に屈服させられた女性ですから」


 どういう事だ? よくわからん?

 あれ? シルファさん、それは何しているの?


「誠にすいません。昨晩の件で私はジョージ様に対して恐怖を抱きました。その象徴としての刻印は痛みと共に左胸に刻まれています。ジョージ様の部屋を出てからずっと刻印が疼いています。その痛みを感じるたびに恐怖が思い出されるのです。しかし先程のジョージ様の魔法を拝見した時に、私の中で恐怖の感情が畏怖に変わるのを感じました。それに連れ、左胸の痛みに甘美な感覚を感じるようになっています」


 刻印って……。ちょっと胸の先端を捻り上げただけなのに。いやちょっとじゃないか。

 シルファさんがずっと左胸を抑えているのは、そのせいか。先端が疼いているのか。


「ジョージ様がおこなった私への調教・・は性的快楽を与える目的ではありませんでした。それでもこの有り様です。そしてプリアにおこなったジョージ様の調教・・は推測ですが性的快楽を伴うものだったと思います」


 いや調教って人聞きが悪いなぁ。攻撃された事への報復だよね。調教だとスミレにご褒美もらえなくなっちゃうじゃん。

 それにしてもヤバい状況なのか?


「あの……。もしかして何ですけど、シルファさんとプリちゃんは、変な扉を開いちゃったって事かな?」


「変な扉とは酷いですね。ジョージ様が無理矢理こじ開けたものですよ。私自身、どうにもならなくなった時はジョージ様に責任を取ってもらうしか無いと思っていました。プリアは私より重症だと思いますので、できればジョージ様に責任を取って欲しいと思います」


 せ、責任って何の責任だよ! 童貞なのに、妊娠したから責任取ってと言われるようなもんだよ! 俺は指も入れて無いんだぞ! いくら俺でも視線だけで妊娠しないぞ!


「ちょっと意味がわからないんだけど。結局、俺のお世話係はどうなるの?」


「たぶんジョージ様のお世話係をしたいものをつのれば、今度は全員が立候補するでしょう」


「あれ? 皆んな俺を怖がっていたんじゃない?」


「先程のジョージ様の魔法を拝見した事により、親衛隊の意識が劇的に変化しました。あれだけの類い稀なアイシクルアローを見せられたら、ジョージ様が伝説の魔導師の再来と誰もが皆確信しております。また我々エルフの誘惑に全くなびかない強い精神力。そこからわかるジョージ様の一途なスミレ様への愛情に皆やられています。底の見えない強さ、一人の女性を想う誠実さ、魅力的な外見、大国エクス帝国の伯爵。これでかれない女性がいるわけがありません」


「いや女性は間に合っています! それに言いましたよね。【魅惑の蜜】を仕掛けるのはグラコート伯爵家に対する攻撃と見做すって」


「理解しております。安心してください。この左胸にしっかりと刻まれています。しかしこれは【魅惑の蜜】ではないのです。普通の自由恋愛ですから。これはエンヴァラとしては止められないです」


「エンヴァラ親衛隊の隊員なんでしょ? だったら命令すれば良いじゃん」


「そんな個人の恋愛感情について命令をすれば、除隊されてしまいます。親衛隊が瓦解しますからさすがに無理です」


「じゃ、どうすれば良い?」


「プリアを外して他の隊員に変更しますと、納得がいかないプリアは親衛隊を辞めてジョージ様に纏わりつくと推測します。その場合はプリアの他にもう一人増えるだけです」


 もしかして、詰んでるの?


「プリアを物理的にジョージ様から離す方法は一つだけです」


 おぉ! なんだ、あるんじゃん! さすが責任ある立場のお方!


 一度眼を閉じ、ゆっくりと眼を開いたシルファさん。

 うん? 心なしか目が潤んでいる?


「それは私がジョージ様のお世話係になる事です」


 気がつくと、シルファさんは服の上から左胸の先端を摘んでいた。

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