第241話 集まる視線は期待の塊

「滅相もございません! またジョージ様に【魅惑の蜜】を仕掛けるなんてありえません! 現在、親衛隊に出しているジョージ様に関する命令は【ジョージ様を怒らせるような事は一切するな!】だけです! 本当です! どうか信じてください!」


 小刻みに震えているシルファさん。

 おぉ! これで嘘をついているのだとしたらシルファさんは歴史に名残す大女優になれるだろう。


「それなら何でプリちゃんが俺のお世話係なの? 大浴場の一件を考えたら普通はプリちゃんを外すんじゃない? プリちゃんのお尻は国宝物でしょ。あのお尻なら普通の男性は靡くよね? わざわざプリちゃんを俺のお世話係にしたのは、何か画策しているんじゃないかと邪推しちゃうよ」


「本当に信じてください! プリアがジョージ様のお世話係になった経緯を説明させていただきますから!」


 凄い必死や。そんなに朝から大声出していたら血圧が上がっちゃうよ。


「昨晩、私はジョージ様の部屋を出てからすぐに会議を開きました。今日からの行動の班分けと今後の方針の確認です。最後にジョージ様がエンヴァラにおられる間のお世話係を決めるだけでした」


 あの精神状況で会議をやるなんて立派だね。さすが責任ある立場のお方。心の中でお漏らしの黒乳首って呼ぼうと思っていたけど自重じちょうしよう。


「昨日の大浴場の一件、そして昨晩のジョージ様の部屋から帰ってきた私を親衛隊の隊員は見ております。その為、誰もジョージ様のお世話係に立候補しませんでした」


 まぁわかるけど、微妙に傷つくなぁ。

 結局、舐められないようにするのって、怖がられる事に繋がるよな。


「ジョージ様を怖がっている隊員をお世話係にすれば、ジョージ様の不興を買いやすくなります。結局、朝になっても決まりませんでした。どうしたものかと困り果てていたこところ、ベッドに引き篭もりっていたプリアが会議に現れました。そして是非ジョージ様のお世話係をやらせて欲しいと。全員が反対し、考え直すように説得致しましたが、プリアは頑として受け付けません。しまいには直接ジョージ様にお願いしに行くと申しまして……。そんな事をすればジョージ様のお怒りに触れる可能性があると思い、プリアがジョージ様のお世話係になる事を認めました。いや認めざるを得なかったのです……」


 成る程……。お漏ら、いやシルファさんが何か画策しているわけじゃ無さそうだ。それなら何を考えてプリちゃんが俺のお世話係に名乗り出たのか。本人に聞いてみるしかないか。


「あの……。やはりプリアが何かジョージ様に粗相を致しましたでしょうか? それならば早速対処致します。ただ、プリアは昨日の大浴場の一件で精神的に動揺があったと思いますので、どうかご容赦お願い致します」


 粗相? おっさんの股間がこんにちは!したのなら粗相だけど若い女性、それも美人で可愛いエルフが秘所をこんにちは!しても粗相ではないよな。

 これは世界の常識、いや世界の真理か。


「いや別に問題は無いかな。ありがとうね」


 俺のお礼の言葉に、あからさまにホッとする顔をするシルファさん。どうやら昨晩のが効きすぎたようだな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 シルファさんの執務室を出るとプリちゃんが俺を待っていた。

 ご主人様を待ち受ける犬のような眼をしているよ……。


「ジョージ様! よろしかったら昨日のお約束の魔法を見せていただけませんか? 今ならエンヴァラに戻る部隊と周辺を確認する部隊の人も見れますから」


 そういえば約束していたな。皆んなに見られるのか。まぁ構わないか。


「いいよ、早速見せようか。どこに行けば良い?」


 俺の返答にあふれんばかりの笑顔を見せるプリちゃん。ここまで素直に喜ばれるとこちらも嬉しくなるわ。


「この砦には訓練のための魔法射撃場があります。そこに行きましょう。ちょっと待っててください。シルファ副隊長にも知らせてきます!」


 魔法射撃場……。帝都の魔法射撃場では的を壊したり、壁を壊して出入り禁止になってしまったよな。

 これはダンが言ってた苦手が克服できる機会だよな。

 まぁあの時から比べたら威力もコントロールできるようになっているよな? 大丈夫だよな? たぶん……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 プリちゃんのお尻に誘導されて歩いていたら、魔法射撃場に着いていた。砦の至るところからエルフがワラワラ集まってくる。


「整列!! これよりエクス帝国ジョージ・グラコート伯爵様が我々に至高の魔法を見せてくださる! ジョージ様の魔法を昨日見た諸君らは理解していると思うが、それは間違い無く最高峰の魔法であろう! この経験を今後の自分の鍛錬に活かすように! このような貴重な機会を与えていただけたジョージ様に感謝の念を持って拝見するように!」


 先程まで怯えていたシルファさんが恐ろしいまでに生き生きしている。案外、立ち直りが早いのか?


 シルファさんの整列の指示に従い、綺麗に並んでいるエンヴァラ親衛隊。いつの間にかプリちゃんも一緒に整列しているよ。うわっ、めちゃくちゃニコニコ顔だわ……。


「それではジョージ様、よろしくお願いします!」


 シルファさんの合図に親衛隊の視線が俺に集まった。

 集まった視線からは期待感しか感じない。この状態で適当にやるわけにはいけないよな。期待に応えるおとこ、それがジョージ!

 よし、それでは一発かましてやるか!

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