第240話 冬の朝の温泉
帝都に戻ったらカフスに連絡でも取って飲みにでも行くか。オッ◯ブにはもう行かないけどな。
今日はたった一日で俺の事を一生忘れられない女性を二人も作ってしまった。俺は罪作りの男なのか? これは英雄気質という事で許してもらおう。
それにしてもここ最近の女性のアプローチが酷い事になっているよ。去年はロード王国第二王女のパトリシア・ロード。それにタイル前公爵からオリビアの側室提案。アリス皇女の件もある。あとは俺の専属侍女になったポーラ。そして今回。
ポーラのような純粋な愛情もあるが、【魅惑の蜜】のような不純なものもある。どちらかと言うと後者が多いよな……。
もしスミレと結婚して無くて独身だったら、女性不信になるような状態だよ。
そういえばこの間のオリビア先輩との夜の経験から、スミレ以外の女性の裸にも冷静になれるようになってきたな。スミレの笑顔がすぐに思い浮かぶようになったよ。スミレの笑顔を思い浮かべるとスミレの
つらつらと考え事をしていたら瞼が重くなってきた。久しぶりのベッドだからな。今日はもう寝るか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2月20日【緑の日】
「おはようございます! 今日はとても良い天気ですよ!」
カーテンを開く音がする。明るい日差しが部屋に差し込む。一瞬帝都のグラコート伯爵邸の寝室と勘違いしてしまう。
そうだ。昨晩エルフの里の砦に着いたんだ。
結構、熟睡していたな。俺が悪意を感じなかったとはいえ、寝ている状態でいきなりそれ程親密になっていない人に近くにいられると困惑するわ。
しかし元気な声を出した人物は俺の困惑を
「どうしますか? 朝食をお取りになりますか? それとも入浴なさいます? 朝のお風呂は気持ち良いですよ」
元気な声の主はプリちゃんだ。本当に俺が言っていたように一晩寝たらケロッと元気になっていた……。
嘘から出たまこと? いや冗談で言った事だから瓢箪から駒か。
「せっかくだから風呂に入ろうかな。リラックスしたいからね」
明るい顔になるプリちゃん。
「了解致しました! それではお供させていただきます。昨晩は消化不良でしたから」
この娘は何を言っておる? 昨晩の出来事を忘れたのか? もしかしてショックが凄すぎた?
「別にお供しなくて大丈夫だよ。無理しなくて良いから」
「無理なんか全然してませんよ。私がジョージ様と一緒に入りたいから入るんです。お話もしたいですし。それにジョージ様がエンヴァラにいる間は私がジョージ様のお世話をさせていただく事になりました。どうぞよろしくお願いします」
ば、馬鹿な……。秘技【嘗め回すような視線】を受けて心の傷になっていないのか。夜の女の子達を恐れさせた技なのに……。
これはプリちゃんは研究対象ではないのか? カフスに連絡して対策を練らねば。秘技の改良が必要かもしれないな。
俺は動揺を隠して素気なく返事をする。
「あぁそうなんだ。よろしくね。なら大浴場に行こうか」
「今回はせっかくなので砦内の南側に湧いている温泉に行きますよ」
プリちゃんと話していると、なんとなく主導権を握られる感じがあるよな。まぁ気にしないようにするか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
砦の南側は鬱蒼とした森になっている。その一角に開けた場所がいきなり現れた。
なかなか
冬の空気はまだ寒いが陽光がそれなりに温かく感じる。簡易脱衣所で裸になり身体が冷える前に温泉に入る。
あぁー! 生きてて良かったぁ!
耳を澄ますと鳥の
ザブーン!
視界の端でプリちゃんが全裸で走ってきたから、やるかもと思っていたが……。本当にやるかね?
「あぁ……。生き返る……。やっぱりまだ空気が寒いですね」
にっこりとするプリちゃん。寒くて温泉に飛び込んだせいで頭まで濡れているよ。女性の濡れた髪って妙な色気があるよな。
それになんか昨日よりプリちゃんの精神的距離が近く感じる。よく言えば親密に、悪く言えば馴れ馴れしい。今後どんな対応をするのが良いのかな?
昨晩のシルファさんの様子から考えるとプリちゃんは親衛隊の皆んなに愛されている。これ以上プリちゃんを虐めるのは不要な恨みを買うよな。あ、でも今更か。
「ジョージ様! 見てください! あれは
温泉を出て
これは狙ってやっているのか!? だとしたら
確かに濡れた髪は色気があるが、濡れた下の茂みはエロ過ぎるわ。当然俺の
いかん、スミレの笑顔を思い浮かべろ!
清涼な朝の空気がスミレの魔力を思わせる。おかげですぐに冷静になれたよ。
それにしてもまだ俺に【魅惑の蜜】を仕掛けているのか? 昨晩あれだけシルファさんに釘を刺したのにな。風呂から上がったらシルファさんに確認を取るか。
俺は楽しそうに笑うプリちゃんの声を聞きながらそう考えていた。
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