第234話 踊り子に触れるのはご遠慮ください
エクス帝国高等学校を卒業し、エクス帝国魔導団に入団して配属された第三隊。
隊に配属されてすぐに俺の歓迎会を開いてくれた。そして三次会はストリップ劇場だった。そこで流れたアナウンス。
【踊り子に触れるのはご遠慮ください】
シルファさんに湯船で抱きつかれながら、何故か頭に浮かんだ。
「すいません、シルファさん。過度な接触は控えていただくと嬉しいのですが。一応俺は妻帯者ですので……」
「えっーー! そんなの嫌です! 嘘と言ってください!」
シルファさんとは反対隣りにいたプリちゃんが大きな声をあげて立ち上がる。
振り向いた俺の目と鼻の先にプリちゃんの股間があった……。
俺の視線に気付いたプリちゃんが慌ててしゃがみ込む。プリちゃんは手で胸を隠し、顔が真っ赤になっている。
あれ? 急に羞恥心が出たのか?
俺に抱きついていたシルファさんが慌てて立ち上がり、プリちゃんを湯船の外に連れ出した。
「ジョージ様、気にしないでくださいね。プリアはちょっと驚いただけですから。それよりもっとジョージ様のお話を聞かせてください。素敵な男性には興味が湧きますから」
次から次と俺を囲む全裸のエルフ達。俺は笑顔を浮かべながら、体内循環させている魔力の制御に集中していた。
視界の端で涙目になっているプリちゃんにシルファさんが声をかけている。
「プリア隊員、任務中だぞ。無理なら自室で待機していろ。どうする? 続行できるか?」
笑っちゃうほど丸聞こえだよ。普通の人ならこれくらいの距離があれば聞こえないもんな。油断したな黒乳首。
茜師匠の龍闘流剣術を学ぶためにしている地道な特訓が俺に副産物を産んでいた。
去年1年間で爆上がりしたレベル。それに伴った規格外の身体能力向上。その能力に振り回されないように身体操作の訓練を毎日おこなってきた。また体内魔法の身体能力向上の制御もコツコツとやっている。
体内魔法の身体能力向上は魔力を体内で循環させる必要がある。循環させる魔力量が多ければ、それだけ身体能力向上も増加していく。俺はアイシクルアロー等の体外魔法の制御はピカイチだが、体内魔法の制御は慣れてなかった。体内魔法を使い始めて1年未満だからしょうがないけどね。一応今まで、時間がある時に魔力の体内循環の訓練はしていたけど、最近サボり気味だった……。
茜師匠に指摘されてから、体内魔法の魔力制御は四六時中おこなってきた。訓練を始めて1ヶ月。既に精微な魔力循環ができるようになっている。繊細な魔力循環は身体能力の向上だけでなく、五感の能力を飛躍的に伸ばす事に繋がった。ちょうどヒャッハー!領域で野生化した時に会得できたよ。それが役に立つなんてね。
それにしても任務かぁ。何かおかしいと思ったよね。エルフの文化に混浴があるなんて聞いた事が無いよ。そんな桃源郷があるのならエクス帝国の
どちらかと云えばエルフは性に閉鎖的な印象だもんな。これは開放的過ぎるわ。
俺を案内してくれたプリちゃんも妙に色気を撒き散らかしていたし。賢者になってもすぐに性欲が湧くのも変だよ。
【魅惑の蜜】かぁ。間違い無いよね。黒乳首も「どのような選択をすれば1番良い形になるのか? 最後の最後まで諦めずに最適解を求める」って言ってたもんな。
きっと黒乳首の最適解は俺を籠絡させる事になったのだろう。
黒乳首に抱きつかれた時に、俺の頭にストリップ劇場のアナウンスが思い浮かんだのは、ここにいるエルフ全員が俺を性的に籠絡しようとしていたからだ。
横で笑顔を浮かべている全裸のエルフ達を見渡す。しかしその笑顔の裏は、俺を性的に狙う肉食獣だわ。俺は自分自身を無意識にあのストリップ劇場の踊り子に重ねていたのか。
さてどうするか?
俺はエルフの里のエンヴァラに来た目的は世界樹の実だ。その為に世界樹を甦らせる必要がある。だからライドさんの頼みに応えてここまで来た。別にエルフの民に対して、何の感情も持っていない。
ほっといてくれたらほっとくだけ。それなのにこちらを攻撃してくるなら話は別だ。【魅惑の蜜】を仕掛けるのは完全に敵対行為に当たる。スミレに嫌われたらどうしてくれる! グラコート伯爵家を舐めるなよ。
【舐める奴等には万死を与えよ!】
アリス皇女の部屋でオリビアから罵倒を受けた俺。それに憤慨してオリビアの腕を切り落とすと言ったスミレ。その後、スミレと一緒に考えたグラコート伯爵家の家訓。そしてスミレから提案された家訓の一つがこれだ。
スミレからは「ジョージは優しいから難しいと思うけど、この意気込みだけは忘れないでね」と言われている。
さすがに万死を与えないし、腕は叩き切らないけどね……。
それにしてもプリちゃんの反応を見たら皆んな羞恥心を隠して任務をこなしているところなんだろうな。それはそれで興奮するけどね。
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