第218話 コールド・バラス
まずは伯爵として対外的に
今のところ俺の専任侍女になれる絶対的な忠誠心があるのがポーラしかいない事も理解した。
ポーラが俺の専任侍女になる事は受け入れよう。
しかし俺が専任侍女になったポーラで性的処理する事は、スミレや貴族に取って浮気で無くとも、俺に取っては明確に浮気だ。
年末に浮気の定義を考えた。あの時は
今回の件は、周囲が浮気じゃ無いと考えているが、俺は浮気と捉えている。それならばそれは浮気なんだろう。
例えスミレが悲しまなくてもポーラで性的処理はしないと俺は俺に誓おう。
「あ、あの……、それで結局どうなるのでしょう?」
ポーラが不安そうな顔で聞いてきた。
俺とダンの会話を聞いていたらそうなるよな。
「俺からもお願いするよ。ポーラが良かったら俺の専任侍女になってくれるかな?」
「はい!
食い気味に返事がされたよ……。
これって大丈夫かなぁ。先程の俺の誓いは……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「上級貴族の専任侍女ってそんなもんなの?」
俺はジャイル公爵のお披露目のパーティに参加するために着替えているスミレに話しかけた。
「そうね。ダンが言っている事に誤りはないわね。それに上級貴族同士は専任侍女の容姿を張り合うのよ。上級貴族になると結婚は政治的な話でしょ。つまりは容姿はほとんど関係なく選択されるわ。その反動で専任侍女の容姿にはこだわる上級貴族が多いの。とことんこだわっている人だと、専任侍女の容姿を磨くために、侍女としての仕事をさせないばかりか、専任侍女の世話をする侍女を付けたりしてるみたいね」
専任侍女の侍女!? 阿保なのか……。
貴族の常識、俺の非常識だな。
「それよりスミレは専任侍女が性的処理をする事をどう思っている?」
「上級貴族の当主には御家騒動を起こさせない義務があるわ。それが家を存続させる事に重要だから。貴族に取って、性欲の管理は必須スキルね。ましてや上級貴族の当主なら厳格に性欲は管理しないと」
「一般論の話をしているんじゃないんだ。俺はスミレの気持ちを聞いているんだよ。俺がポーラで性的処理をする事に忌避感は無いの?」
キョトンとした顔をするスミレ。
そしてクスクス笑い出す。
「専任侍女が与えられた仕事をしているだけだから。ジョージが専任侍女で性的処理する事は、ジョージが自分の手で性的処理する事と同じ感じかしら」
何それ? もしかして俺がおかしいの?
「上級貴族の当主なら厳格に性欲は管理しないとならないって話したでしょ。私だって気分が乗らない時もあるだろうし、女の子の日もあるわ。将来妊娠した時なんかは性的に満足させられない事も考えられる。そんな時に専任侍女は役に立つわね」
なるほど。上級貴族に取って、専任侍女ってそういう認識なのか。これは育ってきた環境が違い過ぎるわ。
現在、俺は上級貴族にあたる伯爵家当主だ。当然、貴族の常識に変化させたほうが生きやすいんだろうな。
だけど、俺は俺の常識を大切にしたい。専任侍女になったポーラを性的処理に使用するなんて、道具扱いに感じるよ。
「ありがとう。スミレの考えを聞かせてもらえて参考になった。でも俺は俺の常識で物事を判断する事にするよ」
またキョトンとした顔をするスミレ。
今度は微笑を浮かべて優しく俺に語りかけた。
「ジョージが何を考え、何をするのかはわからないけど、一つだけハッキリしている事があるわ。ジョージが何をしようとも私のジョージへの愛情は変わらない。世界中の人がジョージの敵になろうと……」
いつの間にか、スミレが近寄ってきていた。そして俺の耳元で囁く。
「私は永遠に貴方の味方」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
新年にも来たがやはり圧倒される。
帝都の人は白亜の屋敷と云えば誰もがバラス公爵邸を思い浮かべるだろう。
ジャイル・バラス公爵の御披露目パーティは白亜の屋敷の馬鹿広いホールで開催される。
そのホールに入った瞬間声をかけられた。
「ようこそいらっしゃいましたジョージ伯爵。これからはバラス公爵家と是非仲良くしていただけるとありがたいですね」
コールド・バラスだ……。何か上から目線の雰囲気がビンビン感じる。タイル前公爵がアリス皇女の王配にあてがう為に養子にした男。タイル前公爵が失脚した為に今はジャイル公爵の補佐に収まっている。
さて、今後のバラス公爵家とグラコート伯爵家はどのような関係になっていくのか? その意味でコールド・バラスは重要人物だな。
それにしてもやはり俺はコールド・バラスが生理的に受け付けない。話しているだけで何かイライラしてくるわ。
「仲良くですか? それはバラス公爵家次第ですね。もともとグラコート伯爵家としてはバラス公爵家に敵対するつもりがありません。この度の事はバラス公爵家がグラコート伯爵家に攻撃を仕掛けてきたわけですから」
俺の返答にコールド・バラスが眉を顰める。
「ジョージ伯爵は英雄と称えられていますが、貴族の常識が
あ、やっぱり
お、おい! まだ話すのか……。
「だいたいですね。歴史あるバラス公爵家と新興貴族のグラコート伯爵家を同列に考えてはいけません。貴族家の序列を蔑ろにする行為は自分の首を絞める事に……」「スミレ、コイツやっちゃって良い?」
イライラが頂点に達しそうだわ。プチっとやっちゃってしまえばスッキリしそうだ。
「あら、ジョージ駄目よ。今日バラス公爵家と友好を確認したばかりじゃない。せめてバラス公爵家からちょっかいを出されてからにした方が良いわ」
俺の睨みに慌て出すコールド・バラス。
「な、何を言っているんだ! グラコート伯爵家はバラス公爵家に敵対するつもりか! そちらがそのつもりならこちらにも考えがあるぞ!」
あ、コイツ本当に駄目なやつだ。ついこの間までは地方の伯爵の三男坊だったからな。それが今やエクス帝国一のバラス公爵家の養子、そして当主の補佐になってしまった。有頂天なんだろうなぁ。
まぁ知った事じゃないけどね。
あ、そうだ。良い考えを思い付いた!
「なるほど。どのような考えかはわかりませんが、どうやら貴方には私達は歓迎されていないようですね。これ以上ここに居てもお互い不愉快になりそうです。誠に申し訳ございませんが、これで失礼させていただきます」
よし、これでコールド・バラスは何かしらの罰を受けるだろう。ついでに苦手なお子様にも会わなくて済むわ。
俺はコールド・バラスの返事を聞かずにホールを後にした。
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