第200話 痛い娘
1月13日【青の日】
今日はエクス城にて貴族会議が開催される。着ている服は結婚する前にスミレに買ってもらった紺色のスーツだ。
このスーツは俺の宝物になっている。これはグラコート伯爵家の家宝にするべきかな?
屋敷を出る時、玄関ホールに家臣団と使用人が勢揃いしていた。
「じゃ、行ってくるね。会議が終わったら一旦帰宅して、スミレと一緒に新年祝賀会に行くつもりだから」
ダンがにこやかに返事をする。
「承知いたしました。それではジョージ様いってらっしゃいませ。後ほどよろしくお願い致します」
後ほど? まぁ会議が終わったら帰宅するからね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エクス城の会議室に入ると以前と同じように侵略戦争推進派と反対派で分かれて座っている。サイファ魔導団長が俺に気が付き手を振った。
美人に手を振られるだけで心が浮き立つ。我ながら男って単純だよな。
「ジョージくん。魔導団長としてお礼を言わせてもらうわよ。ジョージくんの修練のダンジョンの引率のおかげで、魔導団の実力が鰻登りだわ。エクス帝国軍が大陸最強になるのも時間の問題ね。ただ強くなり過ぎて侵略戦争推進派が活気付いているわ。領土拡大路線を取りたいみたいね」
「そうなんですか。やっぱり修練のダンジョンでの実力の底上げはエクス帝国騎士団と魔導団に限定していたほうが良いですね」
「まぁ統治者が変われば政策も変わる可能性があるわ。アリス皇女は侵略戦争に否定的だから当分は大丈夫だと思うけどね」
サイファ魔導団長と雑談をしていたら、ちょうど真正面にタイル・バラス公爵が着席した。タイル公爵は俺の顔を見るなり侮蔑を感じさせる顔になる。
うわっ。こないだとは違って敵対的な雰囲気だ……。
確かにタイル公爵の頼みは、あの後ポーラに確認して、丁重にお断りさせてもらったからなぁ。
まぁ知らんぷりしておこう。
だいぶ席が埋まってきた。侵略戦争推進派の席にはタイル公爵とゾロン元騎士団長が大きな顔をして座っている。カイト元皇太子は欠席みたいだ。確か、喪が明けるまで謹慎だったよな。
奥の扉が開く。その扉からベルク宰相が現れた。貴族会議の始まりかと思って気を引き締めたが、ベルク宰相の後ろに人影が見える。
あ、アリス皇女だ。
少し青白い顔をしているが間違い無くアリス皇女。
俺がいなくても自室から外に出られるようになったのか。それはとても良かった。これで安心だね。
アリス皇女の登場に会議室は騒めきに包まれた。
アリス皇女はベルク宰相に誘導されて侵略戦争推進派と反対派の間の席に座る。その横にベルク宰相が座った。
アリス皇女は落ち着かないようで、目をキョロキョロさせている。
大丈夫かな? まるで保護者になった気分だ。
その時、アリス皇女と目があった。青白い顔をしていたアリス皇女の顔が一瞬にして変わる。笑みがこぼれるアリス皇女。
これでは誰でも気づくだろう。アリス皇女が俺に恋心を抱いていると……。
この場合はどうなるんだ? 何か不都合が生じないか?
俺が焦っているとアリス皇女がベルク宰相に耳打ちをした。
神妙に頷くベルク宰相。
「本日はアリス皇女にもこの貴族会議に参加していただいた。しかし皆も知っての通り、アリス皇女はまだ自室から出るのに大変緊張をしておられる。ただアリス皇女はジョージ伯爵が近くにいれば安心できるのだ。ジョージ伯爵、アリス皇女が慣れるまでアリス皇女の席の隣りに座ってください」
なぬ!? 公開でアリス皇女の好き好きビームを受けないといけないのか!
どんなプレイやねん……。
しかし公の場でベルク宰相が命令したんだ。拒否ができない……。
俺は渋々席を立ち、アリス皇女の隣りの席に移動を開始した。
満面の笑みを浮かべるアリス皇女。アリス皇女は俺が座る椅子をアリス皇女の座っている椅子にくっ付ける。
なにさらしとんねん!
今はデートじゃないよ。真面目な会議の前だよ。アリス皇女って痛い
俺はアリス皇女の行動に狼狽えてしまったが、ベルク宰相がゆっくりと俺に頷いた。
俺は諦めてアリス皇女の隣り?の席に座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます