第187話 男性だけの忘年会の裏で……【スミレ視点】

12月19日【青の日】


 グラコート伯爵家とバラス公爵家の上級貴族間裁定が終わった。

 決定したことはジョージがオリビアを側室にする話は白紙、オリビアが皇室侮辱罪で司法の判断、ポーラの件は保留、こんなところか。


 別室でのベルク宰相との話の最後に、これまで以上にタイル公爵に警戒するように言われたが、どうなんだろうか? タイル公爵はこの辺で矛を収めるのでは無いだろうか? それが貴族の常識だが。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 夜更けに悲鳴が聞こえて飛び起きる。

 隣りで寝ていたジョージの姿が見えない。慌てて魔力ソナーを展開する。

 ジョージの魔力を裏庭だ。急いで裏庭に行ったが、既に賊はジョージによって無力化されていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 後処理が終わった時には朝になっていた。ジョージにどうやって気が付いたのか確認したら、寝ている時も魔力ソナーを無意識に展開していると説明される。

 無意識に魔力ソナーの展開!? 本当にやっているのか? 呼吸をするように魔力ソナーを展開しているとは……。


 この日から私は常時魔力ソナーを展開する訓練を始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


12月26日【緑の日】


 今日、ジョージは男性だけの忘年会に参加する。私はグラコート伯爵邸で義妹のエルと食事会を開くことにした。

 エルはジョージの血が繋がった妹だ。ジョージのためにもできるならば仲良くしていきたい。

 ただ私とエルの出会いはあまり良い思い出ではない。ロード王国のサライドール子爵家の屋敷で激昂したエルが魔法をジョージに放とうとしたため、私がエルの右肩を【雪花】で貫いた。

 ジョージがいない状態でエルに会うのは今日が初めてだ。わだかまりが無ければ良いのだけど……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 夕方にエルがグラコート伯爵邸に来訪した。

 エルとはカタスさんと婚約の報告をしに来た以来だ。

 その時、私とジョージとカタスさんとエルで楽しく歓談した。

 夕食後、私の部屋に場所を移す。メイドのサラにも仕事を上がってもらって参加してもらう。若い女性だけで楽しく話したい。

 エルは18歳になっているためエクス帝国ではお酒が飲める年齢だ。お酒を飲みながらエルとより親密になりたいな。

 ちなみにグラコート伯爵邸にあるお酒はエクス帝国内で最高級品ばかり。貯まり過ぎるお金を消費するために購入した逸品だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「もう、2人は良いじゃない、素敵な男性がいるんだから。私なんかまた探さないといけないのに」


 ワインをバカバカ飲みながらサラが愚痴を言い出した。


「もう、何で男は浮気ばっかりするのかしら! 浮気ならまだ良いけど、乗り替えるってどういうことよ!」


 ワインのボトルが空になったみたいで、すぐに次のボトルを開けるサラ。

 相当溜まっているみたい。


「ま、良いわ。それより奥様とエルさんの話を聞かせてください。それを参考にして男性を探しますから。まずはエルさんとカタスさんの仲について聞きたいですね」


 基本的に前向きな性格をしているサラ。酔いの勢いに任せてエルに迫る。

 エルは躊躇した顔をしたがワインを一口飲んで話し始めた。


「私とカタスの仲ですか。私にとって最愛の人ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません」


「良いわね、熱々で。でもその最愛の人のカタスさんが浮気したらどうする?」


「あり得ない話をしても意味が無いですね。カタスが私以外の女性に気が向く事などありませんから」


 断言するエル。その言葉には微塵も疑いを持っていないのを感じる。


「私もそう思っていたんだけどね。でも幻想だったわ。今は少し男性不信になっちゃった。でも立ち止まるわけにはいかないし。女性の若さは武器ですから。無駄な時間を過ごす行為は、自分の首を絞める事になりますからね」


 サラはやっぱり逞しい女性だわ。生命力に溢れている。


「奥様! この間屋敷に来たダンさんってカッコよかったです。まだ独身なんですよね? 付き合っている人はいるんですか? どんな性格なんです?」


 相変わらずワインをバカバカ飲むサラ。

 そのワイン1本でサラの年収くらいなのにね。


 サラが酔い潰れたところでお開きになった。

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