拗らせた純愛編

第188話 浮気の定義

12月27日【赤の日】


 昨晩の忘年会で決意を新たにした。

 まずは自分の浮気ラインを決めようと思う。


 大事な事はスミレが悲しまない事。

 それならば他の女性に目移りさせなければ良いだけなのだが、俺は俺自身を信用していない。


 スミレを幸せにしたい。スミレと温かい家庭を作りたい。

 どちらも偽りの無い本心だ。

 しかし俺は自分の性欲を過小評価していない。

 性欲が高まった状態の俺の行動は、後から考えるとおかしい。気がつくと女性の胸とお尻ばかり見てしまう。頭の中は裸の女性で埋め尽くされる。

 魔導団に所属していた頃は、仕事中に慌ててトイレに駆け込んでいた。


 告白は一瞬だが、結婚生活は長い。

 告白した時の昂った気持ちを、同じ水準で持ち続けるのは不可能だ。

 長い結婚生活ではスミレと上手くいかない時期もあるだろう。そんな時、性欲が高まった状態でアルコール等で思考が低下し、素敵な女性に誘われたら……。

 きっと俺のジョージ君・・・・・が黙っていない。


 だから脳にスイッチを作ろうと思う。ここまでは良いが、それ以上はアウト。これを設定できれば、そのような状況になった時に留まれる可能性が上がるはず。


 昨晩の忘年会でカタスさんの浮気の定義は【女性と2人だけで食事に行く】。

 これが浮気になるのなら、俺はアリス皇女と浮気している事になってしまう。さすがにこのラインは潔癖すぎる。通常の人間関係に支障をきたすわ。【水清ければ魚棲まず】。昔の人のことわざは重要だな。


 ライバーさんエロエロさんは【浮気は浮気と思った時から浮気。浮気じゃないと思ったら、どこまでも浮気じゃない。奥さんに後ろめたい気持ちを持つ行為が浮気】。

 ある意味間違ってはいないけど、当たってもいないよね。完全に精神論だもんな。参考にならないや。


 ダンは【肉体関係を結ぶ】、【側室がいない男爵以上の貴族には浮気にならない】。

 完全に法律の定義だよな……。大事な事は俺とスミレの関係がギクシャクしない事だ。法律は関係無いよね。


 さて3人の意見も参考にして【グラコート伯爵家の浮気の定義】を作っていこう。

 まずは女性と2人で食事だな。

 どうしても仕事とかの付き合いでそうなる場合もあるよな。事前にスミレに了解を得るようにしよう。

 肉体関係は当然アウト。お触り、キスもアウトだよな。

 ここまでは問題無いな。

 問題はここからだ。


 いわゆる夜のお店についてだ。

 帝都の繁華街には女性の性を売り物にしているお店が乱立している。

 夜のお店の出来事は浮気に当たらないという考えもある。

 実際、初めてハイドンを訪れた時に、スミレから夜の繁華街の付き合いに対してはお許しが出た。(第58話 漢の浪漫)

 でもその後にハイドンで歓楽街に繰り出そうとしたらスミレが怒っていたよな……。(第86話 別腹論議)

 もう一度ゆっくりとスミレと話し合わないといけないか。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「浮気の定義? こんどは何を考えているの?」


俺の言葉に怪訝そうな顔をするスミレ。


「どこからが浮気かはっきりさせたいんだよね。そのラインを超えたらダメだと認識している事で、歯止めが効きそうだからさ」


「私はジョージの行動を止める気はないわ。ジョージに全て任せるつもりよ」


 真剣な眼差しを俺に向けるスミレ。これは浮気の線引きは俺が判断しろって事か……。

 なんのかせも無い状態で、俺がどのような行為をするか。その行為をただスミレは判断するだけ。

 これってある意味放任しているようだが、責任が全て俺にかかってくる……。

 でもそうだな。それが正しいか。俺がスミレが嫌がると思う行為をしなければ良いだけだな。

 やっぱりエロエロさんとの年明け約束は止めだな。おさわりの無いお店でもスミレが悲しむ可能性があるもんな。

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