第177話 別室にて感想戦
部屋に残されたのはベルク宰相と俺とスミレと書紀官。
この裁定ってどうなんの?
「ジョージさん。お時間があるようなら場所を変えて話しませんか?」
ベルク宰相からのお誘いだ。
これは当然受けるよね。疑問がいっぱいだからな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ベルク宰相の執務室に移動してソファに座った。
「まずはジョージさん、スミレさん、お疲れ様でした。話をする前にジョージさんにはお説教をさせてもらいます。貴方はエクス帝国民の希望という事を忘れないでください。英雄とはそういうものなんです。エクス帝国から簡単にいなくなるなんて言葉は言わないでください」
えぇ……。俺は英雄になりたくてなったわけじゃないのにな……。
あ、それなら、
「じゃ、英雄をやめます。それなら関係ないですよね」
「そんな笑顔で言っても駄目ですよ。人間は一人で生きていけません。他人と関わっていく必要があります。そしてそれが社会を形成していきます。ジョージさんも社会を形成している一人です。当然ながら社会には能力がある人と無い人がいます。能力がある人は社会において責任が生じるんです。これは避けては通れません。諦めてください」
うーん。言ってる事は理解できるが、感情が拒否しているな。能力が高いベルク宰相やサイファ魔導団長の激務を見ているからかも。
ま、ここは納得した顔を見せておくか。それが処世術ってもんだ。
「ベルク宰相の言葉は肝に銘じておきます。それよりタイル公爵が相当怒ってしまいましたが大丈夫ですか? エクス帝国政府としてはバラス公爵家はとても重要と言っていたじゃないですか。今日の裁定は随分とグラコート伯爵家寄りだったと思うのですが」
「実は今日の裁定はアリス皇女殿下の意向です。アリス皇女殿下はタイル公爵がポーラにしてきた仕打ちをメイドから耳にして激怒しておりまして。宥めるのに苦労しております。アリス皇女殿下はバラス公爵家に甘い裁定をするのなら、皇帝陛下にはならないと言っているのです。それでも今日の裁定はだいぶバラス公爵家に配慮している形なんですよ」
あ、なるほど。確かにタイル公爵がポーラにしてきた事は女性が聞いたらドン引きするな……。
「実は今回の件でエクス帝国政府内でバラス公爵家とグラコート伯爵家の重要度を数値的に測る事になりまして。先日、経済面での分析の予備報告がありました」
へぇー。そんな事もやるんだね。
「グラコート伯爵家がエクス帝国からいなくなった状況とバラス公爵家がエクス帝国からいなくなった状況を比べているデータなんですが、1、2年はバラス公爵家がいなくなった状況のほうが厳しいのですが、3年目から逆転するのです。結局はバラス公爵家が誇る経済力は代替可能なんです。バラス公爵家がエクス帝国に反旗を翻しても、それに追随する貴族もそれ程多くないとの試算も出ました。この事も今日の裁定に影響を与えていますね」
なるほど。裁定の内容がグラコート伯爵家寄りだったのを理解したよ。
それでは疑問を解消していくか。
「今日の裁定はどうなるのですか? 終了する前にタイル公爵が出て行ってしまったので」
「タイル公爵が出て行く前までは有効ですね。オリビアがジョージさんの側室になる話は白紙です。またオリビアの今後は法に則って進めていきます。ポーラの件だけが確定しておりません」
「オリビアはどうなるんですか?」
「普通ならバラス公爵家がオリビアを離籍します。家に籍がある人物が皇室侮辱罪の犯罪者になるのは相当な汚点になりますから。オリビアがバラス公爵家を離籍されれば、あとはどのようにも対応可能です。ただ皇室侮辱罪を犯した人間を騎士団に在籍させておく事は無理ですね。今はジョージさんにオリビアを任せるつもりです。騎士団長のライバーの了解も得ています」
オリビアを任される!? どうすりゃいいの? 肉●器しか用途がわからん?
「裁定で確定していないポーラについては、このままジョージさんが保護していてくれれば安心です。さすがにタイル公爵も直接的にグラコート伯爵家に敵対する行為はしないと思いますから」
これでやっとあのタイル公爵の顔を見なくて済むかな。
「それじゃこれで終了ですね。この度はありがとうございました」
うん? ベルク宰相が少し難しい顔をしている。
「少し嫌な予感がします。私の予想ではタイル公爵は淡々と裁定内容を受け入れると思っていたのです。それくらいの分別は貴族としては当たり前ですから。しかし結果は違っていました。ジョージさんは今まで以上にタイル公爵に警戒してください」
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