第168話 論文のための綿密な検証

 腑に落ちない気持ちを持ちながら午後のエクス帝国軍のレベル上げを実施した。

 俺も偉いなぁ。頑張ってやらないとね。


 夕食を食べた後にポーラを俺の部屋に呼ぶ。

 部屋に入ってきたポーラは軽い化粧をしている。服装も変わり昨日とは別人だ。

 こりゃ綺麗な人だなぁ。これで39歳か。30歳くらいで通じるよ。


 ポーラは少し緊張しているみたいだ。

 俺とスミレに深々と頭を下げる。


「この度はジョージ伯爵様のご慈悲に感謝の心しかございません」


「あぁ、別に大したことじゃないよ。そちらに座って楽にしてね。昨晩は疲れていたようだけど、体調は大丈夫かな?」


「はい! 美味しい食事とフカフカのベッドに感動しました。お風呂も入りましたし、洋服も用意していただいて」


「それは良かった。それでは今後の事を話し合おうか」


 ポーラの顔に緊張の色が走る。


「そんなに構えなくて良いよ。ポーラはどうしたいのか聞くだけだから。取り敢えず経緯を聞こうか?」


「もうなにがなんだかわからなくて。急にバラス公爵家が私の日常に入ってきて……。オリビアはバラス公爵令嬢になったって。それがオリビアのためだから、オリビアを説得しろって」


 俺は口を挟まずにポーラの話を聞く事にした。


「バラス公爵家に逆らうわけにはいきませんし、私もオリビアが平民でいるよりも公爵令嬢になった方がオリビアの為かなって自分に言い聞かせていたのですが……」


 ポーラが少し涙ぐんでしまった。まぁゆっくり聞こう。


「オリビアが国境の任務から帰ってきた時に2人で話し合ったのですが、平行線になってしまって……」


「どんな話し合いだったの?」


「私はバラス公爵家に逆らうととんでもない事になる。オリビアが公爵令嬢になる事はこれからの人生を考えると良い事だし、私は1人で生きていけるから大丈夫って。だけどオリビアは私と一緒でなければ生きている意味が無いって。結局、オリビアは自分の好きにやると言って出ていきました」


 昨日、マリウスから聞いた話と齟齬はないな。


「それで昨日、急に働いている洋服店を首になったんです。社長に理由を聞いても教えてくれなくて。呆然としているところを数名の男性に囲まれまして。そのまま馬車に乗せられました。連れて行かれたところはバラス公爵邸で、タイル公爵とオリビアが言い争っていました。タイル公爵は私を見るなり、オリビアに『お前のせいでポーラは長年勤めていた洋服店を首になったんだぞ! これ以上意地を張ってどうする。大人しく私の言う事をきけ!』と怒鳴り付けました。私はそれを聞いて、私の存在がオリビアに取って重荷になると思いまして……」


 あぁ、泣き出しちゃった。確認のためとはいえ、辛い思い出を話させるのはキツいな。

 スミレがポーラの横に行き、背中をさすっている。


「ポーラさん、よくわかったよ。それでポーラさんはどうしたい? まずはバラス公爵家の事は考えなくて良いよ。オリビアと一緒に住みたいのかな?」


「それは望んでも叶えられない事ですから。バラス公爵家は目的のためなら何でもします」


「そうじゃないんだ。俺はポーラさんの希望を聞いているんだよ。バラス公爵家の事は忘れてくれないかな」


 目を見開くポーラさん。それでも半信半疑の顔をしている。


「娘のオリビアとこれからも一緒に人生を歩んでいけるのなら、それに勝るものはありません。でもバラス公爵家に逆らうのはジョージ伯爵様に不都合が生じませんか?」

 

「ハハハ、今更だよ。それにタイル・バラス公爵とは、この件が無くとも絶対敵対する人だと思っているからね」


 俺の言葉に青褪めるポーラ。


「あの人と敵対するのは止めた方が良いです。冷酷非道で権力も持っていますから」


「ポーラのご忠告は聞いておくよ。だけど、右の耳から左の耳に通り抜けたけどね」


 俺の物言いに唖然としているポーラの顔が印象に残った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 寝室のベッドでスミレに腕枕をしながら今後の事を話し合う。


「なぁ。あとはベルク宰相に任せちゃえば良いかな?」


「ジョージがオリビア先輩を側室にしちゃえば丸く収まるんじゃないの? バラス公爵家とも友誼が持てるし、ポーラさんとオリビア先輩だって離れ離れにはならないでしょ?」


「それ以上言ったら怒るよスミレ。それは認められないんだよ。例えスミレが認めても、俺は絶対認めない。なんどでも言うよ。俺の幸せはスミレが幸せになる事なんだ。スミレが悲しむ決定なんて、俺は断固として認めるわけにはいかない」


 スミレが俺の胸に顔をうずめて強く抱きついてきた。


「ごめんなさい。私が悪かったわ。でも私が我慢すれば周囲がうまくいくと思って」


 スミレはやっぱり優しいな。もっと我が儘になれば良いのに。

 俺も少し煮詰まっているか……。俺もスミレも少し気楽になったほうが良いかもね。


「いっぱいの困った事はベルク宰相やダンに考えてもらえば良いんだよ。俺はおっぱいの困った事を考えないといけないから忙しいんだ」


 キョトンとするスミレ。そして軽く微笑みながら魅惑的な口を開く。


「なあに? おっぱいの困った事って?」


「スミレのおっぱいを揉めば揉むほど、また揉みたくなるんだよ。これは麻薬だよね。今度論文にして学会に発表しようと思うんだ」


 「ふふふ」と笑うスミレ。


「私もおっぱいの困った事があるの。ジョージに私のおっぱいを揉まれると、また揉まれたくなって胸がキュンキュンするのよ。私も論文を書こうかしら?」


「2人しておっぱいの困った事で論文を書くならしっかりとした検証が必要だね」


「綿密にお願いね」


 俺はスミレの口を塞ぎ、スミレの胸元をまさぐり始めた。

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