第155話 豪邸、ダンス、祭り

12月6日【無の日】


 よーし! 今日は休みだ! 全力で休むぞ!


 気合いを入れてもしょうがないな。

 やる事をやるか。なんだかんだで忙しいんだよね。今日は先日購入した土地の整地作業をやる予定だ。

 大豪邸を建ててやるのだ! まぁ建てるのは建築業者だけどね。


 建築業者は帝都で二番目に大きい業者に頼んだ。何で二番目かというと、一番大きい業者はあのタイル・バラス公爵の傘下に入っているんだよね。

 俺の屋敷にはタイル・バラス公爵の嫌がらせにあった人達しかいないから。できるだけタイル・バラス公爵とは距離を置きたいね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おぉ! ドラゴン伯爵! 実物のほうが姿絵より男前やなぁ!」


 俺の右手を強く握りしめる男性。屋敷の建設を頼んだガルボ建設のガルボ社長だ。

 日に焼けた顔に愛嬌が滲み出ている。


「どうぞよろしくお願いいたします。ガルボ社長、お金はいくらかかっても良いですから、帝都一の屋敷を建ててください」


 ニカっと破顔するガルボ社長。


「社長は止めてくれ。背中がむず痒くなる。親方で良いわ。それにしても豪勢だな。予算の枠が無い案件は初めてだ。任せておけ。帝都の観光地になるくらいの屋敷を建ててやるさ。この案件は俺が親方として陣頭指揮を取るからな」


 おぉ! 結構な自信だ。これは期待で胸が膨らむ。たまには股間以外も膨らませないとな。


「正門の脇にドラゴンの彫刻を配置したいのですが、問題無いですかね?」


「ドラゴンの彫刻? どの程度の大きさだ?」


「できれば実物大にしたいんですよね」


「ドラゴンの実物大!? ドラゴンってどのくらいの大きさなんだ?」


「えっと、高さが8mくらいですか。10m四方くらいのスペースが有れば配置できると思うんですけど」


「それはデカいな……。どうせなら2体作って正門の両脇に配置したらどうだ? その方がバランスが良くなるだろ?」


 なるほど、全体のバランスを考えたらそうなるのかな?

 所詮素人の俺にはわからん。【わからん事は専門家に丸投げ】を発動しよう。


「了解しました。親方の提案どおり二体配置します」


 その後俺はガルボ親方の指示に従い土地の基礎工事をロックウォールでおこなった。

 圧倒的な俺の魔力量と精微な魔力操作にガルボ親方は目を丸くしてたけど。

 それにしてもロックウォールって万能だよね。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その後自宅に戻りルードさんの奥さんのリースさんのダンス講習。

 ルードさんからマナーの免許皆伝をもらったが、リースさんからダンスの免許皆伝はもらっていない。

 超一流の紳士になるためにはマナーもダンスも免許皆伝をもらわないとな。

 エバンビーク公爵家の夜会でのスミレとのダンスは最高の思い出だ。これからはいろいろとダンスを披露する場にも参加するだろうから。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 午後になってダンが来訪した。

 ダンはベルク宰相の懐刀と言われている新進気鋭の文官だ。

 俺とはエクス帝国捜査団で一緒にロード王国に行っている。

 俺が団長でダンが副団長。なかなかの良いコンビだったと自負している。ダンは違うかもしれないけどさ。

 ダンは今日も長めの金髪を無造作に後ろに縛っていた。それがなんとも様になっている。カッコ良いんだよな。


「ジョージさん、グラコート伯爵家誕生祭の事をベルク宰相から聞きましたよ。面白そうな企画ですね。これはジョージ伝説の1ページに間違いなくなりますよ」


 おぉ! 案外グラコート伯爵家誕生祭は評判が良いなぁ。これは既に大成功の予感しかしない!


「あ、そういえばベルク宰相がグラコート伯爵祭の責任者をダンにするって言ってたな。今日はその話で来たのか?」


「ジョージさんの誕生日からスミレさんの誕生日までの6日間の祭りですからね。通常の祭りでも相当大規模になります。ましてやそれがエクス帝国の英雄をたたえる祭りなんですから。空前絶後、エクス帝国、いやエクス大陸最大級の祭りになると思います」


 エクス大陸一の祭りとな!? ちなみにエクス大陸とはこの大陸のエクス帝国での呼び名だ。一般的にはガウス大陸と呼ばれている。他の国に行ったらエクス大陸じゃ通じない。


 それにしても思い付きで提案したグラコート伯爵家誕生祭だったが、とんでもない事になっているような……。ちょっと怖くなってきた。

 坂道を転がし出した小さな石ころは、今や大岩に化けてきている。


 もう俺には止められない。

【困った時は運命に身を委ねろ】は昨日俺が読んだ小説に書いてあった言葉だ。これを早速座右の銘に昇格させる時か。

 秘技【川の流れは低きとこに流れる】!


「ダンが責任者なら大船に乗った感じだな。安心して任せられるよ」


「任せてくださいジョージさん! 私がやるからには100年後にも続く祭りに致します。来年は伝説になる第一回目の開催ですから、気合いが入りますね」


 エクス大陸一、伝説かぁ……。

 いや考えたら負けだ。川の水は決して山には登らない。大海に流れるだけ。


「それなら俺が主催する競技会について、ダンの意見を聞かせてよ」


「さすがジョージさん。既にいろいろ考えていましたか」


 その後、俺とダンは夕食を挟んで夜遅くまでグラコート伯爵誕生祭について話し合った。

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