第156話 交際期間3ヶ月は鬼門
12月7日【青の日】
昨晩は遅くまでダンと話し合ってしまった。
結構、悪ノリの企画がいろいろ出たよ。ダンって結構シャレがわかる奴なんだな。できる男は違うね。でもそれを本当に開催したらエクス帝国中で俺は変態伯爵と呼ばれてしまうわ。
そういえばダンが帰る時に明後日の【赤の日】の夜にちょっと付き合って欲しいと言ってたな。夕食を一緒に外で食べる約束したけどなんだろ?
ベッドメイキングをしながらメイドのサラが話しかけてくる。
「昨晩のダンさんってカッコ良かったですね。エクス帝国の文官さんなんですか?」
うん? なんかサラの目が恋する乙女になっているような……。
「そうだね。ダンは優秀なエクス帝国の文官だよ。ただ平民だから出世しにくいけど」
「そうなんですか? お付き合いしている人はいるんですか?」
「いや、どうなんだろう? 付き合っている人がいるとは聞いたことないな」
「よかったら今度、私を紹介してくれませんか?」
なぬ!? サラってザインと付き合っているじゃん!
それでいながらダンを紹介しろって……。
サラって奔放な性格をしているのか? もしかして俺にもチャンスがある?
あ、違うだろ。俺にはスミレがいるんだ。
「何言ってんのサラ? サラにはザインがいるでしょ」
俺の言葉にサラの顔が
あれよあれよと言う間にそれは号泣に変わってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
午前は急遽スミレとのドラゴン討伐を中止にした。
泣いているサラを置いていけないよね。
俺の部屋の二人掛けのソファでシクシク泣いているサラ。その横でスミレがサラを抱きしめている。
俺はサラの正面のソファに座り、泣き止むのを待つ事にした。
「すいません……。もう大丈夫です……」
赤い眼をしたサラが消え去りそうな声を発した。
こりゃ全然大丈夫じゃないな。どうするか。男性の俺がいないほうがサラも話しやすいかもしれない。
俺はスミレの目を見た。頷くスミレを見て席を立ちながらサラに声をかける。
「俺がいない方がサラも話しやすいだろ? 俺は席を外すな」
「いや、旦那様にも聞いて欲しいです。もう本当に大丈夫ですから」
お、今度の声はしっかりしているな。
サラにそう言われたら部屋を出るわけにもいかないか。
眼に力が戻ったサラはゆっくりと話し始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
話し終えたサラは仕事に戻っていく。
部屋には俺とスミレが残った。
「まさかザインとサラが3日前に別れていたとは驚きだな。スミレは気が付いていた?」
「全く気が付かなかったわ。ザインもサラも仕事をしっかりしていたし、いつもと変わらない感じだったけど」
スミレが気が付かないなら俺が気付くわけないな。これはしょうがない。
眉の間に皺を寄せてスミレが口を開く。
「それよりどうするの? ザインからも話を聞く? サラの話ではザインに新しい恋人ができたみたいだけど」
そうなのだ。証拠は無いと言っていたがザインに新しい恋人ができているとサラは確信していた。
たぶんそうなんだろうな。女性の直感を甘くみてはいけない。女性に隠し事ができる男性なんていないのだから。
「いやザインから話は聞かないつもりだよ。二人共独身だし、自由恋愛なんだから。付き合うのも自由だし、別れるのも自由。仕事さえしっかりやってくれるなら俺は問題ないかな」
俺の話を聞いて頬を膨らますスミレ。
おぉ!! これはスミレの妹のフレイヤと同じじゃないか!
まさかスミレも頬に向日葵の種を溜め込む習性があったとは!
血の繋がりって恐ろしいな。きっとノースコート侯爵家の先祖にはリスがいるに違いない。
「何ニヤニヤしているのよ! サラの話を信じるなら、ザインはサラと付き合っている時に違う女性に手を出したみたいじゃない! そんなのゆるせないわ!」
あ、これは逆鱗に触れてしまったのか? 馬鹿な事を考えたのが悪かったな。でもリス化したスミレがもっと悪いよな。当然、指摘できないけど……。
「でもそんな事を言っても、人の気持ちはどうにもならないんだ。今更ザインとサラの仲が元に戻るなんて無いだろ? サラにしてみればザインがそう言う男性だって早く気が付けて良かったじゃないか。付き合い始めて3ヵ月経ってなかったし。もし1年付き合っていたら、もっと傷ついただろ?」
「何か納得いかないわ。ジョージは男性の目線でしか考えていないように感じる……」
ジト目で俺を見るスミレ。
その視線は冷たい。
あぁ……。何か変な性癖に目覚めそうだ。
今度は是非ベッドでお願いします。
いかんいかん、冷静になれ。
ザインとサラのせいで、俺とスミレの仲が気まずくなってどうする。ここは何とかしないと。
俺は真顔になってスミレを見つめた。
「俺はスミレを運命の人だと思っている。その運命の人と結婚できて、人生を一緒に歩んでいけるのがとても幸せだ。きっとサラにとってザインは運命の人では無かったんだよ。サラは良い
俺の話を聞いていたスミレの顔が少しずつ柔らかくなる。
お、これは成功なのか?
「わかったわよ。何か上手いこと誤魔化された感じがするけど、今回はジョージに騙されてあげる。でもいつも騙されてあげるわけじゃないからね」
あら、これはスミレのほうが一枚も二枚も
さすが姉さん女房。
歳下の夫は歳下らしく甘えさせてもらおう。
「騙されてくれてありがとう。俺はスミレとはいつでも仲良くしたいんだ」
俺はスミレを抱きしめ、唇を合わせた。
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