第151話 ダメ! ダメ? だ、ダメ……。ら、らめぇーー!!

 カーテンの隙間から月明かりが差し込む。

 俺の横をみるとスミレが寝息を立てている。


 青の衝撃を堪能させていただきました。

 12月に入ったし、心機一転頑張るか。


 俺は仰向けになって天井を眺めながら現状の再確認を始めた。


 まずは皇位継承か。

 来年の3月末にザラス皇帝陛下の喪が明ける。それに合わせてアリス皇女が即位だ。

 アリス皇女が執務に耐えられるかどうか。

 そして誰が皇配になるのか?

 最右翼のエバンビーク公爵の次男のバラフィー・エバンビークさん。それにバラス公爵が高い確率で自分の息がかかった人物を推薦してくると思われる。

 果たしてどうなるのやら。


 俺がロード王国の守護者になる話はベルク宰相に任せているから大丈夫。

 ロード王国の西側の辺境の地の反乱か。俺が守護者になれば落ち着くのかな?

 時期を見てロード王国にも行く必要があるだろう。


 他の国の事だとエルバト共和国についても考えないと。

 エルバト共和国は俺を取り込もうとしている。

 目的が俺の戦闘力。これは確実だろう。

 後はドラゴンの魔石と軍隊の実力の底上げを考えているのか?

 それによっては帝都が必要になる。最悪戦争か……。

 エルバド共和国の外交官のラバル・スウィットの顔が思い出される。

 俺が会ったのが11月2日だ。エルバト共和国に一度持ち帰って対応を取るだろうから動きがあるのは年明けの1月以降になるか?

 まぁ相手の考え次第だな。


 西のロード王国、南のエルバト共和国。

 あとは北と東の小国と中規模の国家群かぁ。

 エルフの里の依頼という形をとっての東の国々の平定。

 これも喪が明けた来年の4月から始まる事になる。

 ベルク宰相からは俺に任せるって言われたからなぁ。どうやれば良いのやら……。

 東の国々を平定すると聞いたら、カイト皇太子が首を突っ込んでくる可能性があるな。いや今はカイト・ハイドース侯爵か。

 東の国々の平定はするけど、北の方はどうなるのかな? 一緒に平定したほうが後々問題がないかも。


 東の国々を平定したらエルフの里に行かなくっちゃ。

 スミレとの子供を授かる為には世界樹の実が必要っぽいもんな。

 世界樹が枯れかけているってサイファ団長の兄であるライドさんが言ってたから……。


 あの時はエクス帝国が落ち着いてからエルフの里に行くと言ったけど、そんな悠長な事で間に合うのか?

 ライドさんは数年は世界樹は大丈夫と言っていたけど、本当なのか? 何の保証も無いよな。

 なんとなくで考えて、取り返しのつかない状況になるのはごめんだ。

 別に東の国々の平定前にエルフの里に行っても良いよな?

 東方面だったら冬でも積雪がそんなに無いから馬車で行けるだろ?

 馬車で片道一ヵ月。往復で二ヶ月か。いつだったら行ける?

 4月頭のアリス皇女の即位式には俺がいないとダメだよな。

 エルバト共和国との外交の為にも早急なエクス帝国軍の底上げが必要。エルバト共和国との交渉は1月末あたりかな。それまではエクス帝国軍のドラゴン討伐に引率しないと。それは俺がいないとダメだ。

 でもその後のエルバト共和国との交渉はベルク宰相がやってくれるから俺いらなくない?

 2月、3月に行けるか? 


 後は帝都の東に購入した土地か。

 立派な屋敷作らないとな。

 ドラゴンの像とスミレがモデルの絵画。

 グラコート伯爵家の誕生祭。


 うーん。何かやる事がいっぱいだな。

 まぁ考えてもしょうがない。

 取り敢えずヤルか。


 俺は寝ているスミレの胸をまさぐり始めた。

 

 これぞまさにヤル事がオッパイだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


12月2日【緑の日】


 長期休暇明けって身体が重いなぁ。

 弛んだ精神に身体が引っ張られるんだろうな。

 今日の午前中のスミレとのドラゴン討伐は軽くにしようかな。

 気分が乗らないと危ないしね。

 早速、スミレに提案してみよう!


 スミレは日課の魔力ソナーの鍛錬をやっていた。どんなに夜の営みが激しくなっても欠かさず実施している。

 本当に真面目だな。完全に優等生タイプ。俺は劣等生。

 俺ってよくスミレと結婚できたな。一生分の運を使ってしまった感じもするわ。


「スミレ、今日は長期休暇明けだから、午前中のドラゴン討伐は軽くにしない?」


 スミレは軽く溜め息を吐いて俺を睨んだ。


「ジョージ、ダメよ。長期休暇明けだからしっかり頑張るの。弛んだ気持ちを引き締める必要があるわ」


 な、何と! この娘は何を喋っているんだ! もしかしたら俺の知ってる言語じゃないのかも?


「のぉ、スミレさんや。俺達はもう軍人じゃないんじゃよ。任務じゃないんだから、そこはナァナァで良くないかのぉ」


「そんな口調で言ってもダメよ。軍人じゃないから自分達で引き締めてやらないとダメなの。それにベルク宰相からもエクス帝国の経済のためにドラゴンの魔石の納品を頑張って欲しいと言われているでしょ。ダメな考えは早く捨てなさい」


 朝からダメって四回も言われてしまった。ダメのバーゲンセールでもやっているのか……。

 俺はこんな否定のダメは聞きたくない。俺が聞きたいスミレのダメは、夜伽での甘いダメなのに……。

 あ、昨晩のスミレの甘い言葉が甦る。「あ、ジョージ……。だ、ダメ……。あ、あ、……」


 スミレがキツい視線を俺に向ける。


「何、鼻の穴を膨らませているの? 早く用意して修練のダンジョンに行くわよ」


 し、失礼な! 膨らませているのは鼻の穴だけじゃないぞ! しっかり股間も膨らませているわ!

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