第150話 特別な日にいつものように

11月29日【白の日】


 昨晩のレースの黒の下着はスミレの透き通ったような白い肌をより強調していた。全裸も良いが下着姿も素晴らしい。

 あれが美の極地なんだろうな。俺が絵を描けるなら間違い無く形として残しておくのに……。

 他の男性に下着姿のスミレを見せたくないから諦めるしかないか。


 うん!?

 あ、女性の画家を探せば良いんじゃない!

 そうじゃん! 簡単じゃん!

 そうだ! 昨日話していたグラコート伯爵家誕生祭で女性限定の画家の競技会を開催すりゃ良いじゃん。

 優勝者にはスミレの絵を描いてもらおう。それを俺が買い取る感じで!

 飾る場所は俺しか入れない部屋にする必要があるな。新しく作る邸宅にスミレの絵の部屋を作らないと。


 スミレの煽情的な絵に囲まれて1人部屋にいる俺。

 俺の永遠の恋人の右手の出番だ。

 結婚していても俺の恋人は右手だからね。


 朝から自分の天才っぷりを感じてしまった。

 あぁ俺って本当に罪深い……。

 生まれてきて、すいません。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 自室でお茶を飲んでいるとスミレが部屋にやってきた。


「本当にグラコート伯爵家誕生祭を開催するの?」


「もちろんさ。ベルク宰相のお墨付きをもらったからね。それに主催は皇室だから、何もしなくて良いから楽だよ。俺がやる事はどんな競技会を開くか考えるだけだね」


「どんな競技会を考えているのかしら?」


「そうだな。まずは武術大会は外せないよね。剣術と魔法、素手かな? あとは画家や料理人の競技会もいいね。良い人がいればウチで雇いたいし。スミレも何か案があったら教えてね」


「そうね。何か考えておくわね。それより新しい屋敷の設計を考えようかと思って。私に任せるって言ってたけど、ジョージも一緒に考えましょう。2人の家なんだから」


 おぉ! そうだな。2人の愛の巣だもんね。

 やっぱり外せないのは専用自家発電の部屋と専用のスミレとの合体部屋だな。合体部屋には外でもヤレるように庭を併設したい。晴れた日に太陽の下、開放的に愛し合うのも乙なもんだ。


 専用自家発電の部屋は「俺がスミレの絵を1人楽しむ部屋」と言って要求が通った。

 合体部屋については「修練のダンジョンの地下4階でのプレイを自宅でも可能にする画期的な部屋だ」と熱弁を振るい、認めさせた。

 これでスミレの許可を得た。

 奥さんはスミレ、恋人は右手。この部屋ができれば間違いなく俺の下半身ライフは充実するな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 白は清純の証……。白は永遠の白……。

 純白のその下に透き通る白い肌。

 あぁ……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


11月30日【無の日】


 昨日、新しい屋敷の構想をスミレと考えた。そして今日俺は思いついた。

 屋敷の正門前にシンボルを置こうと。


 この間買い物に行った洋服店で俺は帝都でドラゴン伯爵と言われているようだ。

 ならばシンボルはドラゴン以外考えられない。

 実物大のドラゴンの彫刻を正門の入り口の脇にに設置したらどうだろうか?

 帝都の名物になる可能性もあるな。

 一眼で俺の屋敷と認識もできるはず。

 よし! 競技会で彫刻部門も実施しよう。優勝者にドラゴンの彫刻を作成してもらえば良いな。

 でも一年待つのはやだな。あ、グラコート伯爵家誕生祭の開催を発表した時に、記念して彫刻部門の競技会だけ先に開催しちゃおうか。


 グラコート伯爵家誕生祭の開催なんて、ほんの思い付きだったけど、いろいろ派生して面白くなってきた。

 いろいろ悩み事があるけど、これは全力で楽しみたいな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 透けとはなんなんだろう?

 きっとそれは魔法の言葉なんだ。


 透け透けの寝間着を見せつけるスミレ。

 ある意味裸より興奮してしまう。

 あぁ透け透け凄ぇ! 凄ぇは透け透け!

 ビバ! 透け透け!

 俺は透け透けに間違いなく命をかけられる!


 この寝間着を作った職人には勲章をあげたいものだ。

 俺はエロスの極地、桃源郷を見つけてしまった……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


12月1日【青の日】


 今日はスミレの22歳の誕生日だ。今日1日は全てスミレの希望を叶えよう。


「スミレ、何かしたい事ある? 今日はスミレの誕生日だからスミレのやりたい事をやろうよ」


「いきなり言われると困っちゃうな。私はジョージがいればそれで幸せだから。そうね、良い天気だから帝都でもぶらつきましょうか?」


 帝都デートか。それも良いな。


 俺とスミレは昼食を食べた後に外出した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 帝都の商業街の大通りをスミレと歩いていたら、周囲の人達がこちらを見て何か喋っている。

 こちらを伺っている雰囲気だ。背中が何かむず痒くなる。

 そんな時、10歳くらいの女の子が近寄ってきた。


「ドラゴン伯爵ですよね? 私大好きなんです! 握手してください」


 例え子供であろうとも女性に可愛い笑顔を向けられたらそれに応えるのがおとこの役割り。

 俺は右手を差し出した。


 しかし、今考えるとこれは握手、いや悪手だった。

 周りで様子を見ていた人たちが我先にと押し寄せてくる。


「私も握手をお願いします!」「俺が先だぞ!」「何よ! ちゃんと並びなさいよ!」「どけろ! 俺が先に頼んだんだ!」「私はサインをお願いします!」


 どんどん増える人の群れ。

 あ、ヤバい!


 俺は慌ててスミレの手を引っ張って、人垣を脱出した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 逃げた先は帝国中央公園。ここなら人もそんなにはいない。

 ベンチに座って落ち着くと目の前に噴水が見える。


 そう、ここは俺がスミレに告白した場所だ。

 俺とスミレの関係が始まったところと言っても過言ではない。

 告白した時の情景が頭に浮かぶ。


 秋風が吹く。

 上を見れば空が透き通るほど青い。

 もうあの告白から5ヶ月か。

 俺はスミレに幸せを与える事ができているのかな?

 横を見るとスミレと目が合った。

 微笑むスミレ。

 あぁ……。俺は幸せだ。

 そして俺は確信した。スミレも幸せを感じてくれていると。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 スミレと手を繋いでいつもの飲食店に行った。

 いつものように個室に案内され、そしていつものようにシャンパンで乾杯をする。

 いつものように食事をしながら談笑し、ほろ酔いで家路に着く。


 特別な日に特別な事をするのも良いけど、特別な日にいつもと同じ事をするのもホッとする。

 特別な日でもいつもと同じ事をすると、このままいつまでもこの普通の幸せな事が続きそうな感じがするからかな。

 来年も再来年も今日のようないつもと同じ事ができますように。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 今日で俺の誕生日からスミレの誕生日までの1週間の休みは終わりだ。

 ヤリ・・残しはいけない。

 今晩の敵は青。

 青を見ると冷静になるって言うけど、そんな事はなかったなぁ。

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