第133話 エルバト共和国から……。

11月2日【緑の日】

 昨晩はアリスさんの挑発(?)に溜まりに溜まった欲望をスミレにぶつけてしまった。

 やっぱり、スミレは最高だなぁ。あぁ結婚して本当に良かった。

 明け方に微睡んでいるとスミレの匂いに包まれている自分がいる。

 むくむくと元気になる下半身。

 寝ているところに悪いが、今日は朝から愛し合う事になりそうだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 朝の情事があろうともスミレは8:00からドラゴン討伐を開始する。

 全く頭が下がるよ。姉さん女房は大切にしないとね。


 昼食を食べに屋敷に帰ると来客があった。

 午後からのダンジョン引率はスミレに任せて俺は客人と会う事にする。客人はエルバド共和国の商人と聞いている。


 応接室に行くと高級そうな服を着た35歳くらいの男性がお茶を飲んでいた。

 鋭い目付きをしている細身の男性だ。茶色の髪を後ろに撫でつけている。

 隙の無い印象を受けた。


「初めまして、ジョージ・グラコートです」


「初めまして、私はエルバド共和国の外交官のラバル・スウィットと申します」


 エルバド共和国の外交官!? なんじゃそりゃ! 商人じゃなかったのか!

 マナー講座で習っている内面を隠す方法が役に立った。顔には動揺が出ていないはず。


「エルバド共和国の外交官のラバルさんが私に何か用でしょうか? 商人と聞いていたのですが?」


「外交官と言うと会ってもらえない可能性があるのと、商人と言ったほうがどちらにも利益があると思ってそうしました」


「利益ですか?」


「率直に言いましょう。ドラゴンの魔石をエルバド共和国に売るつもりはありませんか? 今の数倍の価格を提示できると思います」


 う〜ん。

 これは以前お父さん(ベルク宰相)に言われたやっちゃいけない事に触れるな。確か内密にエルバド共和国が俺に接触してくるって言ってた。その時は安易な返事はしない事と、スミレを必ず同伴させる事って言われたな。

 スミレは今はいないから、安易な返事をしない事だ。


「ドラゴンの魔石の販売は難しいと思いますよ。現在、エクス帝国をあげてドラゴンの魔石でエネルギー革命を起こそうとしてますからね。エルバド共和国に輸出するだけの量は用意できないと思います」


「失礼ですがジョージさんはエクス帝国の伯爵でしたね。エルバド共和国に居を移せば国民に選ばれて国家元首になる事も可能です。ドラゴン討伐者スレイヤーのジョージさんなら共和国のトップになる可能性が高いですよ」


 ラバルさんは何が目的なんだ?

 ドラゴンの魔石?

 俺の戦闘力?

 それとも両方?


「誠に申し訳ございませんが、そんな事に興味は無いんです」


「何を用意すればエルバド共和国に居を移してもらえますか? できる限りの事はさせていただくつもりです」


「何を用意してもらってもエルバド共和国に居は移しません。エクス帝国が我が故郷ですから」


「そうですか。今日のところは顔合わせと言う事で納得致します。今後も引き続きお話しはさせていただきます」


「現在、エルバド共和国とエクス帝国は国交がありません。できれば正式な形でお願いしたいのですが」


「エルバド共和国が交渉したいのはエクス帝国ではなく、ジョージさん個人なんです。それは難しいと思います」


「わかりました。私はエクス帝国の伯爵です。このままエルバド共和国の外交官と交渉して良いか許可を取る必要があります。その許可が降りれば今後もお話しを聞かせていただきます」


 少し焦る顔をするラバルさん。


「できれば内密でお願いしたいのですが」


「誠に申し訳ございませんが、私はエクス帝国に忠誠を誓っております。敵国ではないと言っても国交の無い国の外交官が接触したのならば報告義務があります。今日の事もしっかり報告する予定です」


 諦めた顔をするラバルさん。


「わかりました。ジョージ・グラコート伯爵がどのような方か、しっかり調べてから接触するべきでしたね。私の勇み足でした。国に戻り、正式なルートで接触する事にします。本日はありがとうございました」


 俺、ちゃんとできたかな?

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