第128話 マールは魔導団のエリート!?
早速ベルク宰相に連絡を取る。
ベルク宰相はすぐにエクス城で会ってくれた。
ベルク宰相の執務室に入るなり声をかけられる。
「もう大丈夫なんですか! 昨日倒れたと聞いて心配していたんです! 問題はありませんか!」
俺の肩や手や顔を触りまくるベルク宰相。
こんなに冷静じゃないベルク宰相は初めてだ。
「ご心配をおかけしてすいません。ちょっとショックな事がありまして、頭が考える事を放棄したみたいで……」
「大丈夫ならそれで良いですよ。ジョージさんの身体はもう一人の身体じゃないんですからね」
相当心配かけたみたいだな。これはありがたいと思おう。取り敢えず、昨日と今日の話をしよう。
俺は丁寧にベルク宰相に話した。
最初は怖い顔をしていたベルク宰相だが、話が進むと穏やかな顔になってきた。
「そうですか。子供ができない可能性があるのでエルフの里に行きたい。またエルフの里の近くで争っている国々が危ないから平定したいって事ですね」
ホッとした顔のベルク宰相。
「いやぁ、どんな無理難題を言われると思っていたら、ちょうど良いですな。喪が明けた来年の4月に東の国々を平定しましょう。ジョージさんにお任せしますよ」
あら、あっさりしている。どういう事かな?
「大義名分が無い侵略戦争は困りますが、今回はエルフの里の人に頼まれましたからね。それに新皇帝の箔付にちょうど良いですし。ジョージさんが行くのなら、こちらもあちらも死人が少なく済みますしね」
あら、謎の信頼感。
まぁ良いか。4月に向けてレベル上げでもするか。
「了解しました。喪が明けるまでは修練のダンジョンでドラゴン討伐と騎士団と魔導団の引率を頑張ります」
ベルク宰相の俺を見る顔はとても優しかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エクス城から真っ直ぐ魔導団本部に向かった。
そのまま団長室をノックする。
昨日、倒れたままだからね。
団長室に入るとサイファ団長が近寄ってきた。
「ジョージ君、大丈夫? ごめんね。無神経な兄のせいで……。本当にごめんなさい」
「もう大丈夫ですよ。それにサイファ団長は悪くないですから」
そう言って俺は今までの事をサイファ団長に話した。
「なるほど、4月に東の国々を平定に行くのね。それじゃそれまで騎士団と魔導団の実力の底上げをやってもらうわよ。すでに今日から用意できてる隊員もいるんだから」
「気が早いですね。了解しました。早速今日の午後から修練のダンジョンに連れていきますね」
「よろしくね。時間は13:00〜17:00よね。13:00には修練のダンジョン前に行かせるわ」
何となくニヤけているサイファ団長だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昼食を屋敷で食べて修練のダンジョンに向かった。
13時の少し前に行くと呆然としている女性がいた。
「よっ! 元気だったか!」
「元気よ! それよりこれは何なの! 入り口が埋まっているじゃないの!」
修練のダンジョンの前にいたのはマールだった。
リストはスミレが管理しているから俺は知らなかったよ。またマールと修練のダンジョンに潜るなんてな。感慨深いもんがある。
俺はロックウォールの呪文を唱える。
【堅固なる岩石、全ての災いを跳ね返す壁となれ、ロックウォール!】
入り口まで通路が開く岩山。
目が丸くなるマール。
「ほら、行くぞ! 時間が無いからな!」
「ちょっと待ってよ。ほら私のギルドカードを確認しなさいよ」
マールのギルドカードのレベルを見ると何と20だった。マールってやっぱりエリートなんだな。
「何よ! すぐにレベル上げてやるんだからね! さぁ行きましょう!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
オーガの魔石を納品しているとマールがギルドカードを見てニコニコしている。
レベルが上がって喜んでいるみたい。あんなに喜んでもらうと引率した甲斐があるってもんだ。
俺はマールに「頑張れよ!」と声をかけて帰宅した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
不思議と子供ができないんじゃないかと思うだけでスミレと肌を合わすのに違和感を感じてしまった。
やっぱり、基本は子供を作る行為なんだな。それができないかもと思うと虚しく感じるんだろう。
そんな事を考えていたが、揺れる胸にいつの間にか夢中になってしまっていた。
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