第125話 種を繋ぐ
気がつくとお腹が空いてきた。
部屋を出て食堂に向かう。
深夜なのに食堂に行くと使用人が皆んな起きている。
「旦那様! 大丈夫ですか!」
「それよりお腹は空いていませんか? 今、夕飯を温め直します!」
「すぐに湯浴みの用意をするわよ!」
何か皆んなを見ていると、また涙が出てきた。
「旦那様! 大丈夫ですか! どこか痛みます!」
メイドのサラが問いかける。
俺は頷いて口を開いた。
「皆んなの優しさが嬉しくて胸がキューって痛むんだ」
俺は泣きながら笑った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「するてぇとなにかい、あのエルフの客人のせいってことか」
料理人のバキが怒り口調で話す。
「そうじゃないよ。俺が現実を受け入れる余裕が無かったんだ。あのエルフの男性は俺の恩人のお兄さんだから大切な客人として扱ってね」
「旦那様がそういうならそうするよ。だけどあんな顔した旦那様はもう見たくないからな。奥様だって困っちゃうだろ」
「あ、俺ってどうやって帰ってきたの? 記憶が無いんだよね」
「あんな眼をして記憶があったら凄いわな。奥様に背負われて帰ってきましたよ。なかなかの醜態ですな」
そっか、スミレに背負われて帰ってきたか……。
情けないなぁ。
まぁそれも含めて俺だから受け入れるか。
「まぁ旦那様が普通に戻って安心しました。今日は食事の後は湯浴みをして、就寝してください」
執事長のマリウスが意見を言う。
ここは素直に言うことを聞こう。
「そうだね。そうするよ。客人のライドさんとは明日、ゆっくり話してみるよ」
その後、湯浴みをしてスミレに包まれながら就寝した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
10月14日【緑の日】
朝は早く目が覚めた。
既にスミレは瞑想している。魔力ソナーの訓練か。辛い訓練なのに、よく続くな。
俺が動き出すとスミレが目を開いた。
「おはようジョージ。調子はどう?」
「おはようスミレ。まあまあかな。食事をしたらライドさんと話してみようか」
「そうね。魔力制御が優れていると本当に不老に近づくのか確認もしないといけないもんね」
そういえばそれが目的だった。一つ一つ確認していくことが大切だな。
食堂に行くと既にライドさんが食事をしていた。
「おはようジョージ君とスミレさん。気分はどうだい?」
「おはようございます。どうですかね。まぁ昨日みたいな醜態は晒しませんので安心してください」
「いや、私はあれ程ショックを受けたジョージ君に感銘を受けたんだ。それ程子供というのは重要なんだ」
「まぁまずは食事を楽しみましょう。ウチの料理人のバキの腕前はどうですか?」
「最高だね〜。ここの食事を食べていると、もう他の食事が食べられなくなりそうだよ」
朝食はライドさんと楽しく食べる事ができた。
その後、応接室にてライドさんと話をする事にした。
お茶を飲みながらライドさんが口を開く。
「さて、どこから話せば良いかな?」
「そうですね。魔力制御が優れていると長生きになる記録とかはあるんですか?」
「魔力制御が優れていると魔力ソナーの距離が伸びるんだよ。だから魔力ソナーの距離と亡くなった年齢の相関性をまとめた記録はあるね。エルフの里にだけど。それにしてもジョージ君の魔力ソナーは今までの人間の域を超えているんだよ。いったい魔力ソナーの有効範囲は何mくらいなんだ?」
「わからないです」
「は?」
「だからわからないんですよ。既に帝都全ては有効範囲です。それ以上は調べてないです」
「帝都って!? メートルじゃなく、キロメートルって事かい?」
「はい、そうですね。自分でもどこまで行けるか調べてないですから」
「これは予想以上だよ。今までの記録だと人間だと65mだよ。これじゃ私のデータが役に立たないね」
「エルフはどうなんですか?」
「エルフでも100mくらいが平均だよ。長老クラスで200m行くか行かないか。そんなもんだよ。ただ、魔力制御が優れている人が長生きなのは間違いない。確実な相関性があるんだよ。仮説だが、壊れた身体を魔力を使って修復しているんじゃないかと思っているんだ。無意識にやっている事だ。それで魔力制御に優れていると老いが遅いと思うんだ」
なるほど。一応はしっかりとした考えを持っている。
魔力制御と長生きの相関性がある事はある程度信憑性があるようだ。
「不老になると子供ができにくくなるというのは?」
「それは自然の摂理だね。死にやすい
そういうものなのかな?
これはなんとも信憑性に欠けるのか? それとも高いのか。
俺は既に子供ができにくい身体になっているのか?
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