権力継承編
第122話 エルフの里の研究者
12話前の【ジョージ・グラコートの意志表明】からの続きとなります。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
屋敷に帰り、スミレに貴族会議の報告をする。
「まぁ俺たちは修練のダンジョンで騎士団と魔導団の引率と、ドラゴンの魔石納品だね。少しゆっくりしたいよ。今日の午後にサイファ団長と契約を交わす予定だからスミレも同伴してね」
「そうね。少しゆっくりしたいわ。何も考えずに修練のダンジョンで活動しましょう」
俺はスミレの同意が取れて、少しホッとした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昼食を屋敷で食べてから魔導団本部に向かった。
団長室に行くと来客中だった。邪魔しては悪いと思い、出直そうとしたところサイファ団長に入室するように言われる。
入室するとソファには男性が座っていた。
男性には失礼ながら、とても綺麗な男性だ。細身の身体に白い肌、知性を感じさせる切れ長な目。緑色の長めの髪をしている。薄い唇が酷薄な印象を少し与えるが、それよりも顔の造形のバランスが良い。
男性は俺を見るといきなり立ち上がり抱きついてきた。
「おぉ! 君がジョージ君か! 会いたかったぞ! 早く実験をしようじゃないか! 何から始めれば良いんだ! 興奮してわからなくなってしまうな!」
「ライド、ジョージ君がビックリしているから落ち着いてくれるかしら?それとも殴ったほうが大人しくなるの?」
「いやぁすまん。ついにジョージ君に会えたんだ。さすがに興奮してしまったよ。私はライド、サイファの兄だ。よろしく頼む」
えっと、この綺麗な男性がライドさんでサイファ団長のお兄さん。そうすると、この男性はエルフなのか? 耳が髪で隠れて見えないや。
「驚かせてごめんなさいね。このライドがエルフの里の研究者なの。まぁ私の兄なんだけどね」
「何だ、その紹介は。まるで私がお前の恥のようではないか。私は立派なお前の兄だ!」
「ライドは少し黙っててくれるかしら。後からいっぱいお話しさせるからね。それより今日は修練のダンジョンの契約についてかしら?」
「あ、はい! スミレと話し合った結果、一人の引率を200万バルトで契約いたします。以前提出した提案書を契約書に変えてきました。確認してください」
俺はサイファ団長に書類を渡した。
無言で確かめるサイファ団長。
「そうね。取り敢えずはこれでやってみましょうか。まずは3月末までやってみて、そこで問題があったら修正しましょう。その後は一年契約にして、その都度修正していけば問題ないわね。そちらは大丈夫かしら?」
まずは半年間か。それなら問題ないね。駄目なら来年の3月末に契約しなければ良いんだから。
スミレを見ると頷いてくれた。
「問題ありません。まずは半年間やってみましょう。それから手直ししても良いですから」
「それじゃちょっと待ってね。今、文官にきちんとした契約書を作成させるわ。その間にライドをしっかりと紹介するわね」
サイファ団長は隣の大部屋に契約書を作成するように指示して戻ってきた。
「それでは改めて紹介するわね。こちらがエルフの里の研究者のライド。私の兄でもあるわ。ちょっと研究に熱中するところがあるけど、基本的には良い人だから安心してね」
「基本的とはなんだ。私は応用的でも良い人だ。ジョージ君、スミレさん、よろしく頼むよ」
応用的ってなんなんだろう? 笑うところだったのかな?
取り敢えず握手をした。
悪い人ではなさそうだ。
「それでね、ライドが帝都に居る間預かって欲しいのよ。国の施設の独身寮に入れるわけにはいかないし、私はここで寝る事が多いから」
客間があるから問題ないな。
スミレにも拒否の印象は受けなかった。
「分かりました。早速今日からウチの屋敷に泊まってください」
「おぉ! 助かるよ! 宿に泊まるほどお金を持ってないんだよ。慌ててエルフの里を出てきたからね。それよりジョージさんの魔力制御がどの程度が見てみたいな。魔法を使える場所はないかい?」
「すいません。俺は修練場の魔法射撃場は出入り禁止になっているんです。この後、良かったら修練のダンジョンに行きましょうか?そこでオーガのモンスターハウスで魔法を撃ちますよ」
「オーガのモンスターハウス!? そんなものがあるのかい? それは大発見じゃないか! 聞いた事がないよ! 何なんだい、その修練のダンジョンって!」
研究者のライドさんの琴線に触れたようだ。
確かにダンジョンの深層に出没するオーガのモンスターハウスなんて聞いた事がないか。
「帝都の東に新ダンジョンが見つかったんです。そこは地下3階からオーガが出没しまして。オーガのモンスターハウスもあるんですよ」
「マジか! 信じられない! そんな破壊の権化の巣窟に入って大丈夫なのか!」
麻痺しちゃっているけど、オーガってヤバい魔物だったな。ドラゴン討伐のやり過ぎで、すっかり雑魚扱いしていた。
「俺の指示に従ってくれれば問題ありません。せっかくですから今から行きますか。その間に契約書も出来上がるでしょうから」
「そうね。よろしく頼むわ。ライドもジョージ君に迷惑かけないでね」
サイファ団長の言葉にしっかり頷くライドさんだった。
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