第121話 心の平穏は何処だ?【ベルク宰相視点】
臨時貴族会議が始まった。
今回は荒れる会議にならないようにしないとな。
まずは黙祷の後に次々と発表していく。
・カイト皇太子の処遇は今回の事件の関与を重く受け止め、皇位継承権のない侯爵にする。ザラス陛下の喪が明けるまで謹慎処分とする。
・スイフト皇子はまだ幼い上に、父親が祖父殺しで処罰を受ける事を考えて、皇帝には不適格。
・ダマス皇子は、これまで公にできなかったが、多くの犯罪に関わっている証拠がある。近々、犯罪者として裁かれるだろう。
・アリス皇女は聡明で慈悲深い。心の傷で自室より出れないが、その原因のダマス皇子が捕縛されて変わるかもしれない。変わらない場合でも自室で政務を行ってもらう。優秀な人と結婚して皇配に表の仕事をしてもらう事も考えている。
ここまで私は一気呵成に話した。
どよめく会議室。
しかしタイル・バラス公爵が賛成の意を示した。これにより反対意見は出なくなった。
タイル・バラス公爵は皇配に近親者を送り込もうとしているのだろう。それはそれとして、ここで賛成に回ってもらって助かったのは確かだ。
次にもう一つの議題に移る。これについても説明をしていく。
・ジョージ・グラコート伯爵はロード王国のパトリシア王女との婚姻をしない。
・ジョージ・グラコート伯爵はエクス帝国とロード王国の守護者となる。
・ロード王国は今まで敵国扱いだったが、今後は友好国として扱う。
特に反対意見もなく、この議題は終了した。
まぁジョージさんに逆らう奴がいるとは思えないが。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
貴族会議の後に私はジョージさんを執務室に呼んだ。
部屋のソファに座り、早速話し始める。
「取り敢えずはアリス皇女に皇帝になっていただく。皇配を早く決めないといけません。アリス皇女と相性が良ければよいのですが……。ジョージさんにはアリス皇女への支援をお願いします」
ジョージさんの支援が無いとどうにもならないからな。
「任せてください。できる限り支えます」
「ジョージさんにそう言っていただければ、アリス皇女が皇帝に即位しても盤石になります。後はカイト皇太子、いやカイト侯爵を中心とした侵略戦争推進派の動きですか。エクス帝国の運営に失敗すれば不満が噴出しそうです」
いろいろとやらなければならない事がありますね。まずは経済ですか。
「ジョージさんにお願いしたい事があるのです。景気を上げるためにも、どんどんドラゴンの魔石を納入して欲しいですね。ドラゴンの魔石でエネルギー革命を起こして欲しいのです。ドラゴンの魔石のおかげで魔道具の開発にも投資が増えて来ています。ついでにドラゴンの魔石で外貨を稼いで欲しいですね。まぁ微々たるものでしょうが。それと並行して騎士団と魔導団の実力の底上げもよろしくお願いします」
ジョージさんにおんぶに抱っこですが、これはしょうがない。
「私はロード王国と話し合って、今後の方針を固めたいと思います。ジョージさんのロード王国の立場を決めたりしますので一任してもらって大丈夫ですか? それに外交の方向性を完全に変える事になりますから、軽い軋轢はあるかもしれませんね」
「ベルク宰相にお任せいたします。変化には得する人と損する人が出るので、軋轢はしょうがないですね」
「それにしてもタイル・バラス公爵は凄いですな。情勢が変わる事で生じる金儲けの機会を既に考えていますからね」
タイル・バラス公爵を上手く使って、景気を上げていきたいですね。ロード王国との交易が増えれば、帝国民も得する人が増えるでしょう。
頭の痛い問題はタイル・バラス公爵が皇配の地位を狙ってくる事でしょうか。
「あと、アリス皇女の皇配の候補を推薦してくるでしょうね」
「バラス公爵家には年齢が釣り合う男性がいるのですか?」
「いやいませんね。たぶん他の家から養子を取る事を考えていると思います。いったいどうなるやら……」
まだまだ私のこころが休まる日は来ないようです。
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