第43話 一人でできるもん!
7月7日【青の日】
今日も朝からドラゴン討伐。
朝日を浴びたスミレの銀髪が輝いている。軽く見惚れてしまう。
「今日は俺1人でドラゴンを討伐させて欲しいんだ」
怪訝そうな顔をするスミレ。
「スミレが妊娠したら、俺1人でドラゴン討伐するかもしれないじゃん。スミレがサポートしてくれるうちに試しておかないと」
「それならしょうがないわね。ジョージの回避力なら問題無くドラゴン討伐を1人でできるわ。あとは実戦経験の慣れだけかな」
「じゃ、今日も頑張っていきますか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
地下4階に続く階段を降りる時に俺はスミレに深緑のマントを渡した。
「これはなあに?」
「今日はドラゴン討伐というより狩りだな。ドラゴンに気付かれずに550mまで近づく。その後300mの距離までダッシュするよ。それはドラゴンに気付かれないようにするカモフラージュのマント」
これで赤系統のスミレの装備も草原の色に隠れるだろう。
魔力ソナーからドラゴンまでの距離は1.5km。どこまで気付かれずに近寄れるかな。
草原に出て軽く走り出す。
残り700m。既にドラゴンは目視できている。優雅に空を飛んでやがる。
ゆっくりと歩いて近づく。
残り600m。まだ気付かれていない。スミレはここで待機だ。
ここからは気付かれたら速攻で距離を縮める予定だ。
残り550m。ここだ!
俺はドラゴンを凝視しながら走り出す。
残り400m。ドラゴンが俺の魔力に気が付いたようだ。首をこちらに向ける。
ドラゴンは俺目掛けて突っ込んでくる。
おぉ!!
【
慌てて呪文を詠唱した。
200本の氷の矢がドラゴンに向かっていく。
驚いたのはドラゴンも同じだったようだ。真正面から氷の矢の束に当たってしまう。
ボロボロのドラゴンが地に落ちる。
いやぁ! あの巨体に飛んで向かって来られるとビビるね。ドラゴンの攻撃は体当たりで大ダメージだから。
これはいつでもアイシクルアローを撃てる心構えが必要だ。
俺はドラゴンの魔石を拾ってダンジョンから帰還した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この日、あと3回のドラゴン討伐も俺1人で討伐した。
2回はドラゴンがこちらに気がつくと体当たりをしてきたのでアイシクルアローをカウンターでぶち込んだ。
1回は火の玉を吐いてきたので回避し、近づいてアイシクルアローを放った。
ドラゴンを危なげなく倒す事ができて、取り敢えずホッとした。このまま続けて行けば慣れてくる。これで俺のドラゴンボッチ討伐も問題無くなるだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
7月8日〜10日。
午前中はドラゴン討伐。
この3日間は全て俺1人で倒している。ドラゴンの攻撃の回避も慣れてきた。
暇を持て余しているスミレは地下3階オーガのモンスターハウスで憂さ晴らしをしている。
午後はスミレがずっと騎士団と魔導団の引率だ。
スミレのレベルが俺に追いつくまでは、まだまだかかるだろう。
俺はこの3日間、修練部の部屋に籠り、魔法体系概論と魔法史と呪文解析概論の教科書を復習している。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔法の勉強をして思った事は、軍人として範囲が広い攻撃魔法が必要だ。
ちょうどこの間覚えたストームブレードで事足りそうだ。あれを人に使うかもしれないなんて、戦争って怖いね。
あと俺にはファイアアローとアイシクルアローがあるので汎用性が高い。
守りはロックウォールで陣地構築ができるから大丈夫か。
あ、戦闘中に味方の守備を高める魔法が必要か。
守備なら地属性か岩属性だけど土が無いと大量の魔力が必要だ。覚えるなら水属性が良いのかな? 俺は本棚に備え付けられている【魔法大全】を取り出した。
どれどれ、水属性、水属性。
これが良いかな。
魔法をかけられた人への害意を防ぐ魔法、ウォーターカーテン。そんなに難しくないかな。あとで試してみよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
7月11日【白の日】
そう! 明日は休みなのだ! 今日という日を乗り越えれば魅惑の休日だ!
サクッとドラゴンを倒してやるか。
ドラゴンって案外知能が低いのかな?
最近は討伐がパターン化している。いや奇襲をかけているからか。魔力ソナー様々だ。
ドラゴンなんかと真っ向勝負なんてしたくないもんな。
まぁ真っ向勝負しても【黒月】があるから何とかなりそうだけどね。やらないけど。
今日のドラゴン討伐はスミレと2人で実施した。
休みの前の日くらいは揺れる胸に癒されたい。スミレも鬱憤が溜まっていたから丁度良いよね。
それにしてもドラゴンを1体倒すとまだレベルが1は上がるんだよな。今にレベルが200とかになるんじゃないだろうな。
俺はいったい何者になるのだろうか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
午後はいつも通りサイファ団長への報告会だ。
「1日4体のドラゴンを倒せるのね。毎日だから凄いわ。怪我はしてない?」
「ご心配ありがとうございます。大丈夫です。ドラゴンの討伐のやり方が安定しております。これからもこのペースを保てると思います」
「素晴らしいわね。このまま頑張って続けて欲しいわ。これだけの高エネルギーの魔石が定期的に入手できるとすれば、エネルギー問題が無くなっていくわね。国民の生活が豊かになるのは間違いないわ。新しい魔道具の開発も活発になっているみたい」
エネルギー問題か。何か壮大な話だな。
「ジョージ君はあまりピンと来てないみたいね。今まで膨大なエネルギーが必要で実用化されていない魔道具が使えるようになれば社会生活が一変する可能性があるのよ。例えば明かりの魔道具が大量に使えるようになれば街灯を沢山設置できるわ。明るい街は犯罪率が低下して住み良い街になる」
そこでサイファ団長が俺とスミレを見て意味ありげに微笑む。
「その他の例では、
あれ? スミレの家のノースコート侯爵家って、鉱山採掘のために鉱山に奴隷が欲しいんだよな。それをロード王国に戦争を仕掛けて戦争奴隷を得ようとしてたはずだ。ドラゴンの魔石を取り続けていけば、無理して戦争しなくて良くなる可能性があるのか?
俺の思考を止めるようにサイファ団長が釘を刺す。
「まぁそんなに上手くいかないと思うし、すぐにそうなるわけではないからね」
そりゃそうだよな。でもわざわざそんな話をするサイファ団長の意図はなんだろう?
「エクス帝国とロード王国との国境付近は今はどうなっているんですか?」
「ジョージ君も興味があるわよね。治安維持部隊の名目でエクス帝国がロード王国領土に入ったみたい。なかなか止められない状況よ」
まずは小競り合いから始まるのかな? 大規模な戦争に発展しなければ良いけど。
「今のところは問題になっている国境の領地を支配しているドットバン伯爵家の領軍が出ていく事になるわ。国軍の騎士団や魔導団は全面戦争にならないと出番はないかしら。でもいろんな情報は収集しておかないとね」
その後、サイファ団長とスミレさんと雑談をしていたところ、3日前に治安維持目的でロード王国に入ったドットバン伯爵家の領軍が、ロード王国の小規模の部隊により壊滅されたと伝令が来た。
その伝令を受けて、サイファ団長はゾロン騎士団長と共にエクス城へと向かった。
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