第41話 魔力の質
「魔法の無詠唱!? ジョージ君はそれを目指しているのか?」
俺の言葉に驚愕の顔を見せるサイファ団長。
「それができれば迅速な魔法発動ができて近距離戦闘に弱い魔導団の助けになると思ったもので」
「なるほどねぇ。確かに理論的には無茶ではないと言われているわ。あくまでも理論的にだけどね」
「理論的に可能なんですか!? なら試してみる価値があると思います」
「だからあくまでよ。実際の無詠唱魔法は実戦に使えないと思うわ」
「そうなんですか?」
「魔法の三要素って知っている?」
俺は胸を張って答える。
「知りません」
「何で自信満々に知りませんって答える事ができるのよ」
「知らない事は恥ではない。これが俺の座右の銘ですから」
呆れた顔で苦笑いを浮かべるサイファ団長。
「高等学校の勉強範囲よ。魔導団が知らないと恥だわ。魔法の三要素とは魔法が現象を起こすのに必要な要素ね。1つ目が魔力。これは魔法のエネルギーね。2つ目が魔力制御。これは魔法のコントロール。3つ目がイメージ。これは現象を起こす必須事項ね」
ふ〜ん。何か難しいな。魔法は呪文を詠唱すれば良いだけじゃないのか?
「呪文には【起動の句】と【主文の句】と【魔法名】で成り立っているのは知ってるかしら?」
おぉ! 10分前に見たところだ。
「知っています。先程勉強しました」
「それでは説明してあげようか。【起動の句】では属性の何の特徴を使うかを明確にする事。魔法の三要素で言うと魔力を属性のイメージ通りにする事ね。魔力制御も関わってくるわ。次に【主文の句】よ。【起動の句】で属性を持った魔力を魔力制御でもってどのような働きをさせるのかイメージする事ね。最後に【魔法名】。魔法の三要素の魔力と魔法制御とイメージをまとめ上げるの」
ここで一度言葉を止めるサイファ団長。俺の理解を待っていてくれているのだろうな。
「詠唱には魔法の三要素を無意識のまま行う事ができるのよ。無詠唱だとその全ての段階で魔法の三要素が段違いのレベルが求められるの。起動の句で魔力に属性を持たせるんだけど、無詠唱だと魔力のロスが大き過ぎるわ。つまり無詠唱だと呪文が失敗しやすいし、莫大な魔力が必要になるわね。そして上手くいっても弱い魔法になってしまうわ。実用レベルの魔法じゃなくなっちゃう。だから現実的じゃないの」
少し考えているサイファ団長。
「通常、レベルが50になれば伝説レベルなの。レベル50なんて有り得ないのよ。だけど貴方のレベルは100を超えているわね。貴方は規格外の魔力量がある。魔力制御はエルフを超えているわ。たぶん世界一。あとはイメージ力が高まれば実用レベルの無詠唱魔法も可能かもね」
俺なら無詠唱の可能性がある!? ちょっとカッコいいかも。
あ、疑問が生じたぞ。聞いてみよう。
「疑問なんですが、呪文の文言を変えても魔法は発動されるのですか?」
「それは可能よ。魔法発動の基本になっていればね。ただし今使われている呪文は長い間魔法研究者が実験を繰り返して作り上げたものよ。呪文を変えると魔力効率は下がる事がほとんどね」
なるほど、先人達の遺産は偉大ってことか。
「そういえば新たな魔法って作れるのですか?」
「それは可能だわ。それをやっているのが魔法研究者ね。趣味でやっている魔法研究者もいるくらいよ。貴方も頑張ってみる?」
なかなかハードルが高そうだ。まずは少しだけ無詠唱に挑戦してみるか。
「出来る事からやってみます。勉強になりました。ありがとうございました」
こうして魔法研究の第一歩を俺は歩み始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おれは早速修練場のグラウンドに来た。
魔法射撃場は出禁だから空に魔法を撃つ事にした。
まずは使い慣れている魔法で基本属性の魔法が良いな。ファイアアローだな。
ファイアアローの呪文は、
【火の変化、千変万化たる身を矢にして
起動の句が【火の変化】か。これはイメージが湧きやすい。自分の魔力を変化出来る火にするんだ。
主文の句が【千変万化たる身を矢にして
魔法名は【ファイアアロー!】。これは何度も発動していて穿つ火の矢を見てきている。イメージも簡単だろう。
よし! やってみよう。
自分の魔力を変化できる火の属性にイメージする。
火の属性にイメージする。
火の属性に……。
どうやってするんだぁーー!
全く分からん。
何だよ、自分の魔力を火にイメージって。
わけ分からんわ。
ダメだこりゃ。
俺は諦めて魔導団本部の修練部の部屋に戻った。
【魔法体系概論】と【魔法史】と【呪文解析概論】は勉強し直さないとダメだな。午後は勉強の時間に当てようっと
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
午後の5時30分にスミレが修練のダンジョンから帰還した。
今日のサイファ団長との魔法談義の話をする。
「それで自分の魔力を変化できる火の属性にするのをイメージ出来なくてやめたんだ」
何か考えているスミレ。
なんじゃらホイ?
「ねぇジョージ。魔力ソナーの有効範囲が100mを超え出すと相手の魔力の質が分かるようにならない?」
えっ! スミレの魔力ソナーってそこまで伸びてるの?
「有効範囲がどのくらいの魔力ソナーかわからないけど、相手の魔力の質は分かるようになるね」
顔が赤くなる。スミレ。
「ジョージは私の魔力の質を感じているの?」
あらバレた。
「ずっと前から感じています。スミレの魔力が大好きなんだ。告白した後でスミレの
赤い顔のままこちらを睨むスミレ。
あらもしかして怒ってらっしゃる!?
「ジョージはずっと前から私の魔力の質を感じていたんだ。何か恥ずかしいよ」
「え、でもしょうがなくない? 勝手に感じるんだもの」
「そうだけどね。でも恥ずかしいわ」
あ、でもこんな事スミレが聞くって事は……。
「もしかしてスミレさん……。俺の魔力の質を感じてますか?」
頷くスミレ。
ゲッ! マジか! 俺はどんな魔力なんだ!
「あの〜、ちなみに俺はどんな魔力?」
より一層顔が赤くなるスミレ。
「それは秘密です。私だけの宝物にします」
「え、この話題ってスミレから振ってきたよね。どうしてそうなる?」
「えっと、そうね。じゃ少しだけ。ジョージの魔力はどんな困難も排除してくれる意志を感じさせる魔力よ。だからジョージの告白を受け入れる事ができたの」
おぉ! 何かカッコ良いからいいか。
「ジョージの魔力は火だと思うの。全てを焼き尽くす炎ね。まぁ私の感覚だから何とも言えないけど」
それならば火属性やその上位属性の炎属性が向いているのかな?
やっぱりわからないなぁ。炎属性の魔法でも覚えてみるかな。
あんまり魔法を覚えると肝心な時に詠唱を間違えるから。なるべく吟味はしていきたいな。
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