第31話 ドラゴンへの挑戦!!
ドラゴン討伐指令25日目。
起床すると快晴だった。
それだけでドラゴン討伐がうまくいきそうな感じがする。単純だよね。
用意をして修練のダンジョンに向かう。
修練のダンジョンの入り口にはいつも通りスミレさんが待っていた。
スミレさんは赤色のシャツに赤色のホットパンツ、膝まで革のブーツも赤である。
これで本当にドラゴンの注意を引ければ良いんだけどな。
腰には【雪花】を差している。
俺は魔導団の戦闘服だ。
ゆったりとした黒色のローブだ。
俺もスミレさんも2人の記念で購入したお揃いのブレスレットをしている。
スミレさんと目が合った。無言で頷き合い修練のダンジョンに入った。
今日、ドラゴンに挑戦するのはサイファ団長にも内緒だ。誰にも言っていない。
地下1〜3階まではスミレさんが魔物を倒していく。
さぁ! いよいよ地下4階だ。
前に一度来た時と同じように俺が先に階段を降りる。
長い階段がいやが上にも緊張感を増していく。4〜5階ぶんの階段を降り、地下4階に降り立った。
以前に見た光景だ。全く変わっていない。
地下4階は洞窟になっていて、30m先に光が差し込んでいる。
早速、魔力循環をしながら魔力ソナーを広げる。魔力循環で身体能力向上させておく事は逃走に必須だ。ドラゴン討伐が終わるまでは魔力循環は欠かせない。俺の魔力ソナーに特大の魔力を感じた。
以前感じた魔力と同じ質なので、これがドラゴンの魔力だろう。距離にして3kmはありそうだ。
以前ドラゴンの魔力反応を感じた時は膝がガクガク震えたが、今回はそんな事もない。
討伐の自信からなのか? まぁどうでも良いか。討伐する事は決まっている。
洞窟を出るとやはり地下なのに日が昇っているし、草原が広がっている。ダンジョンの果てが見えない。
ドラゴンはまだ動いていない。
まずは俺の陣地を作る。
【堅固なる岩石、全ての災いを跳ね返す壁となれ、ロックウォール!】
前方に魔法の発射孔があり、背後に逃走用の出口があるドーム状の岩のドームが出来た。以前試した時よりもレベルが上がったせいか耐久力が段違いだ。
俺はドームの中に入り待機する。
スミレさんにドラゴンがいる方向を教える。
このドラゴン討伐の作戦の序盤はスミレさんが危険になる。
スミレさんの役割りは俺のアイシクルアローの有効範囲までドラゴンを誘導する事だ。その為装備を赤色にした。
アイシクルアローの制御は1kmほど。精密さを求めるなら500mまで近づいた時に放ちたい。
スミレさんは真っ直ぐドラゴンに向かっていく。全く
魔力ソナーでドラゴンとスミレさんの魔力反応を感じる。
もう遭遇する。俺の背中に冷や汗が流れる。
【ドゴーン!】
地面に響く音。たぶんドラゴンの火の玉だ。
スミレさんの魔力反応に変わりはない。しっかりと対処ができているのだろう。
2つの魔力反応がこちらに近づいてくるのが分かる。スミレさんが右に左に回避しているのがわかる。
【ドゴーン!】
また地面に響く音。
先程の火の玉から時間の間隔が結構ある。
連射ができないのか?
ドンドン近づいてくる2つの魔力反応。
1kmほどになった。
目視でドラゴンが見えるようになった。
遠くからでもドラゴンは大きく見えた。ドラゴンは空を飛んでいる。
たまにスミレさんに牙や爪で攻撃するために地面に近づく。スミレさんは華麗に躱している。
作戦を決めるときにロックウォールで壁を作るかと提案したが、逆に邪魔になると断られた。
ドラゴンとの距離800m、700m近づいてくる。
心臓がバクバクだ。
しっかりとドラゴンの姿が見えるようになってきた。
全長は10mを超えている。
丸太のような巨大な尻尾と、全身が丈夫な鱗が纏われているのが見える。
頭には2本の角が生えている。
残り600m、550m、まだ我慢だ。
500m! 今だ!
【
一瞬ドラゴンがこちらを見た。
岩のドームの発射孔から20本の氷の矢が真っ直ぐとドラゴンの顔目掛けて発射された。
何とドラゴンはギリギリ氷の矢を避けた。
俺は動揺した。
こんな事は初めてだ。
どうする!?
ドラゴンがこちらに火の玉を吐いた。
俺は魔法の発射孔から離れる。
【ドゴーン!】
岩のドームに当たる火の玉。
衝撃が中にも伝わる。
岩のドームは火の玉の衝撃には耐えたようだ。
まだ頭がパニックだ!
どうすれば良い?
その時、リンリンリンと静かだが確かなる音が聞こえた。
【ゴァー!】
ドラゴンの咆哮の声だ。
スミレさんが【雪花】でドラゴンを攻撃したのか。
しかしドラゴンは空を飛べる。
スミレさんがドラゴンを倒すには厳しい。
魔力ソナーからはスミレさんの
気持ちが落ち着いていく。
俺は腹を決めた。
岩のドームの背後の出口から草原に出た。
ドラゴンは300m先にいた。
圧倒的な迫力がある。
ドラゴンは片腕が無くなっている。
スミレさんにやられたようだ。
ドラゴンはスミレさんを警戒している。
俺は全力で呪文を詠唱した。
【
また一瞬こちらを見たドラゴン。
200本を超える氷の矢がドラゴンに向けて発射された。
回避しようとしたドラゴンだが流石に無理があったようだ。
ドラゴンの全身を氷の矢が貫いていく。
空中から落ちるドラゴン。
終わったか。
いや残心が大事だ。
少し経つとドラゴンは特大の大きさの魔石を残して消えた。
直径1.5mはありそうだ。
「よし! やったーー!!」
感情が爆発してスミレさんと抱き合って喜んだ。
落ち着いたら2人共赤い顔をしてしまった。
急いで魔石を抱えてすぐに地下4階を脱出しなければ。
ドラゴンとの戦闘の反省は後回しだ。
地下3階への階段に着いた時に気が抜けた。
今回はスミレさんに助けてもらえたな。俺はまだまだだ。
最初のアイシクルアローが避けられてパニックになっちゃったからな。
岩のドームの発射孔からはアイシクルアローは20本の氷の矢しか放つ大きさしかなかったもんな。
たぶんドラゴンは魔力ソナーが使えるんだろう。有効範囲が500〜600mなんだと思う。
だから俺の初撃のアイシクルアローを避ける事ができたんだろうな。
俺はオープンスペースなら200本を超える氷の矢のアイシクルアローを放てる。
安全策を取ったつもりが、逆に危険になったかも知れない。
スミレさんの一撃で勇気をもらった。自分の身体をドラゴンの前に晒す覚悟ができた。
スミレさんがパートナーで本当に良かったよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔石の運搬は俺が担当した。
1.5mの魔石なんて抱えるだけで大変だ。まぁ魔物はスミレさんが瞬殺するから安全だけどね。
修練のダンジョンを出ると詰所にいた騎士が魔石を見て吃驚してしまった。
騎士に馬車を一台手配してもらう。
ドラゴンの魔石をもってスミレさんと馬車でエクス城に向かう。エクス城の入り口受付でも驚かれる。
名前を告げ、ドラゴン討伐指令の終了報告のために来たと伝える。大した時間もかけずに謁見室に通される。
玉座にはザラス・エクス陛下が座っている。カイト皇太子とベルク宰相もいる。その他にも時間が取れたらしい貴族が10名ほどいた。
俺とスミレさんがドラゴンの魔石を持って入ると
玉座に向かって歩いていくと、待ち切れないのかザラス陛下が玉座から降りてこちらに近づいてくる。
「これがドラゴンの魔石か! よくぞやった! 素晴らしい! お主達はエクス帝国の宝じゃ!」
「有難きお言葉です。こちらが修練のダンジョンの4階のドラゴンから得る事ができた魔石です。帝室に献上させていただきます」
「これでエクス帝国の武威を各国に示す事ができるな。褒美は後から考える。疲れたであろう。まずは休め」
「このような大役を任されたために、ずっと緊張しておりました。陛下の優しさに甘えさせていただき、少しばかり休ませてもらいます」
「それが良い。落ち着いたら、また城まで来い。この度は大儀であった」
俺とスミレさんは頭を下げて謁見室を出た。
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