第26話 アイシクルアローの実戦投入とスミレさんの成長
魔導団第一隊修練部19日目。
今日の午前中は魔導団第一隊の人を修練のダンジョンに連れていく。
今日はファイアアローでは無く、アイシクルアローを使う予定だ。たぶんアイシクルアローの貫通力ならば、オーガが身体能力向上で防御力を上げていても致命傷を与えることができるような気がする。一応眼球は狙うけどね。
ダンジョンの摩訶不思議でダンジョンの壁や天井は破壊不可能だ。安心してアイシクルアローを撃つ事ができる。
問題は魔力が持つかどうかだ。
火属性は基本属性だ。ファイアアローは中級魔法の下位。氷属性は水魔法の上位魔法に当たる。そのためアイシクルアローは上級魔法に位置している。
たぶん大丈夫だと思うけど、無理は止めておこう。
結果としては酷いものだった。
オーガから見てだけど……。
アイシクルアローがオーガの眼球に当たると頭蓋骨を貫通してしまう。オーガのモンスターハウスでは、30本のアイシクルアローを放ったが、オーガの強靭な身体を全て貫いてた。殺戮感が半端ない。
午前中いっぱい、オーガを倒すのにアイシクルアローを使ったが魔力にはまだまだ余裕があった。
修練のダンジョンに入るようになって魔力欠乏に陥った事がないなぁ。底が見えなくなっている。
問題はドラゴンの風属性(颯属性?)の壁を破れるかどうかだ。アイシクルアローをより一層速さと威力を上げていかないと……。
ドラゴン討伐に油断は絶対にしない。
午後からの近接戦闘訓練はアイシクルアローは封印だ。貫通力が半端なくて模擬戦では対人戦には使えない。
アイシクルアローを戦争で大軍相手に使ったら凄い有り様になりそうだ。城攻めでも城門を簡単に壊せそうだしな。
俺は本当に殺戮マシーンになっている気がする。今度の休みの日にはオーガの慰霊でもしようかな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔導団第一隊修練部20日目。
今日の午前中はスミレさんと修練のダンジョンだ。
「今日はまずオーガのモンスターハウス以外は私に任せてくれ。オーガとの連戦に挑戦したいんだよ」
「分かりました。極力手を出さないようにします。気をつけてくださいね」
「任せてくれ。自信はあるんだ。以前と比べて身体のキレが段違いだし、【雪花】に込められる魔力の量と質も上がっているんだ」
「その刀って魔力が込められるんですか?」
「【雪花】に魔力を込めると白く光って音を奏でる。切れ味が増すんだよ」
あのりんりんと鳴る音か。そういえば刀身が白く光っていたな。
地下3階に降りてオーガと遭遇する。
スミレさんはオーガまで駆け寄り上段から【雪花】を振り下ろす。綺麗に真っ二つだ。【雪花】は白く光り、りんりんと鳴いている。
全く危なげない戦闘だった。これならオーガのモンスターハウスも問題無く倒せるんじゃないのか?
「どうしますスミレさん? モンスターハウスもスミレさんが討伐してみますか?」
「そうだな。午前中に3回モンスターハウスに入るんだろ。最後の3回目に挑戦させてもらおうか。ジョージ君の新しい魔法も見たいからな」
おぉ! 俺のアイシクルアローを見たいのか。これは気合いが入るな。
早速モンスターハウスに向かう。
モンスターハウスの扉を開けて呪文の詠唱を行う。
【
60本の50㎝程の氷の矢がモンスターハウスのオーガに向かっていく。昨日の戦闘で分かっている。アイシクルアローはオーガの身体能力向上の防御力を完全に上回っている。
串刺しになる20体前後のオーガ。60本の氷の矢がダンジョンの光りを浴びてキラキラ光っている。生き残りはいないみたいだ。オーガが魔石になるまでは気を抜かない。
魔石を拾いながらスミレさんが口を開く。
「思っていた以上にアイシクルアローの貫通力は凄いな。今でもドラゴンに通じるんじゃないか?」
「どうでしょうね。ドラゴンと戦った事がないから何とも言えないです。できる限り自分の能力を上げてから挑戦したいですけど」
「そうだな。命は一つしかないもんな。私も石橋を叩いて渡るのが良い判断だと思う」
スミレさんがオーガと近接戦闘をするため、オーガの魔石を持つのは俺の仕事だ。
モンスターハウスのオーガが復活する前に一度ダンジョン入り口脇の詰所に預けに行く。
モンスターハウス討伐1回で預けに行かないといけないので少し面倒だが、スミレさんを身軽にさせるためにはしょうがない。1回に付き10分程度の時間のロスしかないから問題ではない。
順調にオーガ討伐を進めていく。スミレさんの身体のキレがドンドン増していく。
次は今日最後のモンスターハウスだ。
スミレさんの集中力が増しているのを感じる。
りんりんりんりん。
鳴り止まない【雪花】。
白い刀身が光り輝いている。
オーガを次々と斬り伏せていくスミレさん。
その時【雪花】の刀身が伸びた!?
良く見ると伸びているところは魔力の刃だ。1.5倍くらいの刀身になっている。切れ味も半端ない。
スミレさんの討伐速度が一段上がった。
圧勝だった。
スミレさんは近接戦闘だけでオーガのモンスターハウスを全滅させてしまった。
確かに【雪花】の刀身が伸びてから戦闘が楽になったようだが、それが無くとも間違いなく殲滅できただろう。
スミレさんは満足気に俺の顔を見た。
俺はこのスミレさんの顔を一生忘れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます