拾陸 二歳の結界
初日、空気中の
自身の魔力と溶かし合わせ掌握した魔力で層のようなものを形作る。難儀したが根気よく取り組むことで何とか様になった。
なお、ただの魔力の層であり、光は通るし空気も通る。物理的な遮蔽力は皆無のようだった。
この実践について特に誰からも追及は無し。
二日目、層を私室を囲む形で成型する練習。
とりあえずは調度や細部を無視して真四角で成型。ぼんやりと成功。
規模が大きくほどほどに消耗もあり、単純に魔力操作の訓練の一環として丁度いい感触。
この実践について特に誰からも追及は無し。
三日目、層を圧縮する練習。
部屋を正確に
より入念に、複数の層を圧縮して隠蔽力を増せるかどうか。また、圧縮した魔力層が異常として検知されるかどうか。
成型も維持もさほど困難ではないが、工程が増えたことで負荷は激増。感覚的にはこなしている内に慣れそうではある。
この実践について特に誰からも追及は無し。
四日目、結界の効力を確認。
遮蔽結界を展開した中で、隠匿せずに魔力を練ってみた。
もし感知網に引っかかっていれば、最初に発現したあの日から音沙汰がなかったので父から何かしらのアクションがあるだろう。
翌日さりげなく父に接触してみたが何ら言及なし。
確信を得るため、その後書庫で無防備に魔力を練り発散。直後、父が書庫にやってきて事情を聞かれた。私の魔力は感知網にしっかりキャッチされたらしい。
これで結界が意図した通りに働いていることが分かった。
ちなみに魔力の発現は以前と同様「考え事をしていて偶然」の
ところで、隠匿について考える中で同時に疑問も生じた。
魔力を完全に隠すのは
魔力を感知するシステムがある。感知されるのが当然と人々は思っている。
そんな中で魔力を発しない者がいれば完全なる異物である。
つまり、魔力があることを偽らずかつ面倒を避けるための何かしらが五歳までに必要となる。
「二歳で魔力を発現はしたが、実際は並みである」と建前で通せば行けそうではあるが、建前のために行動が著しく制限されるので好ましくない。
より好ましいのは影武者やダミーである。影武者は高度な訓練と意思疎通できる環境が必要となり、前世基準でも難易度が高かった。現況ではあらゆる点でより難しい。
となればダミー……例えば自分の姿形を模し、適度に魔力を内包する素体を魔法で作り、それを人間として不自然でないレベルで動作させ、かつ感覚を共有することができれば万々歳である。
どうも魔法に関する知見を深めれば深めるほど、何となくそれができそうなのだ。
圧倒的に学びと実践が足りない今、課題として身の丈に合っていないのは確かだ。
まぁ、だからと言ってやってみない手はないけどね。
その三ヶ月後、寸分違わずミストを模した水人形がブレール家の屋敷内を闊歩することになる。
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